宿泊施設や温浴施設、コインシャワー、コインランドリーなどを備えた高速道路のSAやPAが増えています。その背景には何があるのでしょうか。そもそも、高速道路から降りずに宿泊するなど、長時間滞在してもよいものなのでしょうか。

SAから徒歩で行ける隣接地のホテルも

 宿泊施設を備えた高速道路のSAが増えています。東名高速の足柄SA上り(静岡県御殿場市)と名神高速の多賀SA下り(滋賀県多賀町)には2005(平成17)年のNEXCO発足以前からありましたが、その後は東北道の佐野SA上り(栃木県佐野市)、山陽道の宮島SA上り(広島県廿日市市)、関門橋の壇之浦PA下り(山口県下関市)にも新設されました。加えて、SAに隣接した「ハイウェイオアシス」と呼ばれるエリアなど、高速道路を降りることなくSAから徒歩で利用できる宿泊施設も、全国に多数あります。


東名高速上り、足柄SA手前の標識では、宿泊施設「レストイン」の案内がある(画像:NEXCO中日本)。

 NEXCO中日本が2018年3月7日(水)に開設したプロドライバー向けのウェブサイトでは、宿泊施設のほか、入浴施設やコインシャワー、コインランドリーを備えている同社管内のSA/PAなどを紹介しています。これによると、たとえばコインシャワーは東名高速のSA/PAで3か所、名神高速、北陸道でそれぞれ1か所ずつ、近年開通した新東名高速では9か所設けられているなど、こちらも数が増えているようです。NEXCO中日本に話を聞きました。

――宿泊施設やコインシャワーの設置を強化しているのでしょうか?

 はい。各SA/PAでは、その場のニーズやシーンに合わせて必要とされるエリア作りを行っていますが、特に新東名では長距離ドライバーの利用が見込まれることから、そのニーズに合わせて軽食コーナーやリフレッシュブース、シャワー、コインランドリーなどをご用意しています。

 2016年に開業した新東名の岡崎SAも、これらプロドライバー向け施設を強化しました。また、東名の足柄SA上り線と名神の多賀SA下り線にある「レストイン」(宿泊施設)についても、お仕事やレジャーなどで長距離を運転される方がより快適にご休憩いただけるよう、SA全体の大規模リニューアルと合わせて再整備しています。

――これら施設を強化する背景には何があるのでしょうか?

 物流業界全体が人材不足に陥っているという事情があります。プロドライバー向けウェブサイトを開設したのも、そうした方からの声を受けつつ、より有益となる情報を探しやすいようにするためです。休憩施設を活用いただいて、高速道路をより安全、快適にご利用いただきたいという思いがあります。

SA/PA、何時間もいていいの?

 このような設備が充実する一方、NEXCO中日本のSA/PAでは深夜帯を中心に、駐車ます不足も顕在化しているようです。同社によると、たとえば東名の海老名SAなどでは、「ふだんは足りていても、長時間駐車が増える深夜を中心に、大型車の駐車ますが不足することがあります」とのこと。そもそも、SA/PAに長時間滞在してもよいのでしょうか。再び話を聞きました。

――SA/PAに何時間もいてよいのでしょうか?

 SA/PAは高速道路をご利用されるお客さまに休憩などをしていただくための施設です。駐車台数には限りがあり、より多くのお客さまがご利用いただけるよう、ゆずりあいながらのご利用をお願いしています。

――駐車場で取り締まられたり、料金所で止められたりはしないのでしょうか?

 休憩などで長時間駐車いただくぶんには、取り締まられることはありません。しかしながら、一部のSA/PAでは大型車の長時間駐車により深夜帯の駐車ます不足が誘引されていることから、長時間駐車を抑制するのための広報、啓発キャンペーンを実施しています。

 なお、高速道路に長時間滞在された場合は、料金所のETCレーンでバーが開かないことがあります。そのため、「レストイン」へ宿泊された際などは、一般レーンをご利用いただくようお願いしています。

――駐車ます不足も起こっているそうですが、どのように対策するのでしょうか?

 お話した長時間駐車の抑制キャンペーンのほか、2018年度からはSA/PAの空車・満車情報を車種別に本線上の情報板などで提供することによる利用の平準化、既存施設における駐車ますの拡充などに取り組みます。また、新東名の建設中区間(厚木南IC〜御殿場JCT間)にSA/PAを新設するほか、東名下り線の旧豊橋本線料金所跡の遊休地を活用し、駐車場を整備する予定です。


NEXCO中日本管内のSA/PAでは、深夜に大型車の駐車ますが不足することも。写真はイメージ(画像:NEXCO中日本)。

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 NEXCO中日本によると今後、新東名高速の駿河湾沼津SA、静岡SA、浜松SA、東名高速の足柄SAで駐車ますを拡充し、小型車、大型車の駐車ますをそれぞれ合計約300台ぶん増やすとのこと。また、新東名高速で建設中の区間には秦野SAと小山PAを新設し、これによりさらに小型車約400台ぶん、大型車約200台ぶんを確保するとしています。

 同社は「今後もお客さまからのご意見やご要望を参考に、施設の設置やリニューアル等を検討していくほか、駐車ます不足については、お話した対策により利用の分散化が図られ、混雑が解消されると期待しています。対策の効果を見ながら、新たな対策の必要性を検討していきます」と話します。

【地図】東名・新東名のSA/PA新設、駐車ます拡充予定箇所


駐車ますの拡充は2018年度に着手予定。左下は駐車場を新設予定の旧豊橋本線料金所跡地(画像:NEXCO中日本)。