クルマを冷房したい場合、「A/C」ボタンを押すことで冷たい風が出ますが、燃費の悪化にもつながります。では、暖房の場合はどうなのでしょうか。

暖かい送風を冷やして冷房 暖房はそのまま?

 クルマのエアコンは、燃費に影響があるのでしょうか。


カーエアコンの操作部には「A/C」ボタンや送風の強弱を調整するスイッチ、内気・外気の切り替えスイッチなどがある。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 そもそもクルマのエアコンとはどのようなものなのでしょうか。「A/C」のスイッチを押さずとも風が出ます。カーエアコンの仕組みを業界大手のデンソー(愛知県刈谷市)に聞きました。

――クルマはどのように暖房、冷房されるのでしょうか?

 暖房はエンジンの熱を利用しています。走行中のエンジンは高温になるため、冷却水で冷やしていますが、この熱を帯びた冷却水をヒーター用の熱交換器に通して、ここで作り出した温風を車内に送っているのです。対して冷房は、家庭のクーラーと同じように、熱を運ぶ物質である冷媒を圧縮させて、放熱と冷却を繰り返しながら冷たい空気を作り出してファンで車内へ流しています。

――「A/C」スイッチはどのような役割があるのでしょうか?

 冷媒を圧縮するコンプレッサー(圧縮機)を作動させるボタン、つまり「エアコン」の作動ボタンです。おもには冷房したい場合に押しますが、暖房時に押せば、設定に応じた車内の温度調整や除湿がなされます。

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「A/C」を作動させていないときの送風は、基本的にはエンジンの熱を帯びたもの。送風の温度調節は、送り込む冷却水の量を調整しているだけで、夏場に「A/C」を押さないでいると生温かい風が出るのはこのためです。

 では、冷暖房は燃費に影響するのでしょうか。

暖房は燃費に影響する?

 デンソーに再び話を聞きました。

――冷暖房は燃費に影響するのでしょうか?

 暖房は、エンジンの廃熱を利用しているのであまり燃費に影響しませんが、冷房のコンプレッサーはエンジンで動かしているので、そのぶん燃料を使い、燃費も悪くなります。

――送風の強弱で影響はあるのでしょうか?

 燃費への影響はそれほどありません。


ヒートポンプ式エアコンは、外気の熱をくみ上げて暖房に利用する(画像:デンソー)。

――暖房はエンジンの熱を利用しているとのことですが、エンジンのないEVではどうなのでしょうか?

 ガソリン車のカーエアコンと異なる点は、EVやHVのコンプレッサーはエンジンの動力でなく、電気で動かす電動コンプレッサーを搭載している点です。エンジンのないEVはもちろん、PHV(プラグインハイブリッド車)やHVも「EVモード」の場合は暖房時にエンジンの廃熱が利用できないため、電気ヒーターを搭載しています。このため暖房時の燃費はガソリン車と比べると大きく悪化します。

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 デンソーによると、EVなどでは暖房の電気使用量が大きく、航続距離にも影響するとのこと。このため、最近の車種では外気の熱エネルギーを利用する「ヒートポンプ方式」が採用されているといいます。

「ヒートポンプは外気の熱を利用し、少ない電力で大きな熱エネルギーを得ることができる方式で、従来から家庭用エアコンなどに使われています。低温・低圧な状態の冷媒と外気温とでは、外気のほうが暖かいので、高温から低温へ熱が移動していくという自然な原理を利用して外気の熱を暖房に活用します」(デンソー)

 ただ、外気温が低いと、そのぶん冷媒との温度差が小さくなり、ヒートポンプによる暖房能力は低下します。そのためHVなどでは、外気温が0度前後になると自動でエンジンが始動し、ガソリン車の暖房方式に切り替わりますが、「ガスインジェクション」と呼ばれる機構を採用した2017年2月発売の「プリウスPHV」は、外気温マイナス10度までヒートポンプによる暖房使用が可能だといいます。

【画像】カーエアコンの仕組み


一般的なカーエアコンのしくみ。冷媒が高温・高圧になったり、低温・低圧になったりしながら循環する(画像:デンソー)。