「物質的な充足感より心の豊かさに重きを置く」(アイリスオーヤマ社長)

写真拡大

生活に潤いを
 東日本大震災を経験して、日本人は変わった。物質的な充足感より、心の豊かさや当たり前の日常に重きを置く傾向が強まったように感じる。身の丈に合った暮らしや生活に潤いを与える商品が求められる背景には、一瞬にしてすべてを失う、つらい光景を目にしたことで、ささやかな日々の暮らしを慈しむ価値観の変化があるのではなかろうか。私たちはこうした変化を見逃さない。

 農業用品やペット用品から家電製品へと事業を拡大してきた当社の成長の原動力となったのは、日常の不便を快適に変え、消費者に「なるほど」と思わせる商品開発。生活者の潜在的な不満を解消する商品開発には、誰よりも私たち自身が、それを欲しいと強く思う視点が欠かせない。

「声」にヒント
 今冬のヒット商品のひとつに布団乾燥機がある。市場は成熟しているかに見えるが、使い勝手の良さが「布団を清潔に保つ」という従来用途を「温かく快適に眠るためのグッズ」へ進化させた。快適さの追求が潜在需要の開拓につながることを証明する一例だ。単身や夫婦だけの世帯に、4人家族を前提とした従来の家電製品は大きすぎる、高齢者に扱いにくい―。さまざまな声にヒントが宿る。

 私たちは市場調査をほとんどしない。顕在化しているニーズから差別化策を探すことが目的ではないからだ。シェアリングエコノミーなる言葉がよく聞かれるが、市場を分け合う「マーケットシェアリング」から画期的な商品は生まれない。

家電の可能性
 2017年にはエアコンを発売し、念願だった大型白物家電への参入を果たした。今秋には洗濯機の発売も計画しており白物家電はすべて手がけたいと考えている。家電市場は飽和状態で、技術革新の余地が少ないのではとの見方があるが、私の答えは「ノー」だ。分業による多層構造でガラパゴス化した日本の家電を生活者目線に変えていくことで、家電業界は成長産業に生まれ変わる可能性を秘めている。部品内製化による柔軟な生産体制やメーカーでありながら問屋機能も兼ね備えた当社独自の物流体制はこれを可能にする。

 ネット通販の普及でユーザーが商品を評価し、口コミで波及する新たな文化も追い風だ。生の声の向こうに暮らしぶりやちょっとした不満が垣間見える。小さな変化も見逃さず「なるほど開発」を通じ、日本のものづくりに貢献していきたい。