「Thinkstock」より

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 2013年に公開された映画『謝罪の王様』(東宝)は、“謝罪師”を名乗る男が主人公だ。主演の阿部サダヲが、依頼人の身代わりとして謝罪をする姿が話題となり、興行収入が20億円を超えるヒットを記録した。

 当時は謝罪師が架空の職業として扱われていたが、現在では同様の代行サービスを行う企業が増えている。実際にはどのようなケースに立ち会うのか、2社を取材した。

●関東では浮気の謝罪が多い

 まずは、その名もずばり「謝罪屋」。同社では月に約10件の相談があり、そのうちの7割近くが成約に至るという。

 依頼主は、上場企業から不倫の後始末を頼む個人までと幅広い。上場企業の場合は、クレーマーやゆすり・たかりなどの対応が中心という。東京と静岡に拠点を置くが、依頼があれば全国どこへでも駆けつける。そのなかで、地域によって依頼内容に特徴があることに気付いたと明かす。

「関東から甲信エリアにかけては、浮気の後始末が多いです。不倫がご主人や奥さんにバレたので、浮気相手として謝ってほしいという依頼が目立ちます。関西以西はクレーマー関係、北陸エリアは個人間のトラブルが多いですね」(謝罪屋)

 浮気の謝罪に向かうときには、相手から殴られるリスクもある。これをいかに丸く収めるかが腕の見せ所だ。

「依頼主の要望を聞き、どのように謝罪するのがいいか構成を考えます。こうした流れをプロデュースし、設定を共有するわけですが、相手が予想通りに振る舞うとは限りません。そのため、スタッフには話術トレーニングなども指導しています。ひとつの役を演じ切る、まさに役者のような存在です。また、相手に強い印象を与えたいときにはコワモテのスタッフを派遣するなど、相手に合わせて派遣するスタッフを選びます」(同)

 浮気のように、依頼主が一方的に悪い状況では、まずは土下座からスタート。たとえ地面が濡れていても、ひたすら頭を下げるという。

「人目につくような場所で、相手に土下座されたら恥ずかしいですよね。体裁が悪いので『立ってください』と言われることがほとんど。そこからは、立ち上がり、まくしたてるように話を進めます。そして、『理解してくれてありがとう』と持っていくと、相手が根負けして解決してしまうことが多いです」(同)

●怒りを収めさせるテクニック

 西新宿に事務所を構える「ファミリーロマンス」でも、謝罪の代行を引き受けている。相談・依頼は年々増えていて、謝罪代行のニーズの高まりをうかがわせる。主に都市部からの依頼が多いという。

 さまざまなケースに対応するが、支払い遅延などの金銭がらみは、詐欺に利用されるおそれがあるため受け付けていない。ビジネスの場合は、「自分の失敗を代わりに謝罪してほしい」という依頼が中心。まれに、依頼主も現場に同行することもあるという。

「失敗した本人に成り代わることが多いのですが、怒られる張本人(自分)役を当方に依頼し、本人はその上司役として同行したこともありました。ビジネスシーンでは、誠意を伝えることが大前提。スーツを着るのはもちろん、菓子折も持参します」(ファミリーロマンス)

 謝罪の際に用意する菓子折は、虎屋(とらや)のような有名ブランドで、価格は5000円以上のものを選ぶという。

「また、浮気のケースであれば、たとえばご主人が浮気した場合、奥さんは怒っていて感情的になりやすいものです。そのときは浮気相手役として女性スタッフが向かいますが、『この人が結婚していたなんて知らなかった!』と、依頼主であるご主人に対して、あえて思いきり怒ることもあります。怒りの対象である浮気相手が逆に怒り出すと、奥さんはきょとんとしてしまうことが多く、こうした心理的なテクニックをうまく使います」(同)

 こちらも依頼主から困りごとをヒアリングし、そのうえで数パターンを用意して事前にリハーサルを行うそうだ。

 相手方への面接謝罪は両社とも2万円からで、この基本料金に代行内容や拘束時間、出張費などが上乗せされるので、さらに高額になるようだ。

「怒られたくない」という気持ちから、高いお金を払ってまで業者に謝罪を代行してもらう人がいるからこそ成り立つサービス。現代の若者や子どもは「怒られ慣れていない」という指摘も多いため、今後ますます需要が高まっていくのかもしれない。
(文=OFFICE-SANGA)