アパホテル株式会社 元谷芙美子取締役社長

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 ホテル数は400以上、アパカード累積会員数は1400万人超、今やホテル業界において世界トップレベルの収益力を誇るアパホテル。「わたしが社長です!」の掛け声とともに、社長でありながら営業の現場に足を運ぶ元谷芙美子社長のお金との接し方とは?

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身近な人のためにお金を使うことで、
どんどん人生の内需が拡大していきます

 私は信用金庫で働き出したときから今にいたるまで、単に貯めることを目的とした貯金はしたことがないんです。お金って、水や血液と一緒で流れることで意味を持ちます。同じ貯めるでも、誰かのプレゼントを買うために貯める、事業を展開するために貯めるのであれば意味が生まれますが、通帳とにらめっこをしているだけでは何も生まれない。夫である代表からも「老後のために貯めるって、今が老後だろ」と言われて、「あ、そっか」って(笑)。

 自分のために使うこともいいですが、私は家族や社員のために使うことを心がけています。楽しんでいる顔やモチベーションが向上している様子を見ると、「頑張って働いてよかった!」って思える。誰かが喜んでいるから、またお金を生み出そうと活力が生まれます。

 それにお金は、お互いの理解を深める有効な手段でもあるんですよ。例えば、旦那さんとギクシャクしているときにプレゼントを贈ってみたり、夕食に好物の料理を増やしてみたりする。「自分のために用意してくれた」とわかれば、旦那さんは「もう少しお小遣いが欲しいけど、俺のためにも使ってくれているんだ」と理解が生まれます。高価なものである必要はありません。少額でもお金は使うから意味が生まれ、使い方ひとつで関係性を変えることができます。しかも身近な人であればあるほど、その効果を感じやすい。

 最初は小さなコミュニティーかもしれません。でも、それを心がけているとどんどん人間関係は広がっていく。自分のためだけにお金を使っていては、自分の人生の内需が拡大していかないんです。財閥でもない叩き上げの企業が、ここまで成長できたのは、そういった気持ちを常に持っていたからですね。

 日ごろからどんなお金の使い方をしているかは、ピンチやチャンスのときにこそ最も発揮されます。リスクヘッジや決断力って、日ごろの研鑽(けんさん)がないといざというときに動けません。よい物件だとわかっていても、初めて不動産を買うとなれば腰が引けてしまう。お金に余裕があっても扱い方を知らなければ機を逃します。判断能力に貧するから鈍してしまうとも言えます。

 何歳であろうが自分や身近な人への投資は素晴らしいこと。私は54歳のときに大学に入学したくらい。人生って面白くて「自分はこういうふうにやるんだ!」と決めると、そういう人生になるんです! それをより確実なものとするためにお金を使って、自分を、周りを豊かにしていくことを忘れないでほしいですね。

名言
 お金は生かさなくては意味がない。何歳になっても、自分や身近な人への投資をしよう!

座右の銘
 馬車馬のように働き、レディーのように振る舞う。

将来の夢
 大切な家族や社員たちと楽しい時間を過ごし続けること。

<プロフィール>
もとや・ふみこ◎福井県生まれ。福井信用金庫に入社し、金融機関の会合にて、元谷外志雄氏と知り合い結婚。’71年、夫が設立した信金開発(現アパグループ)に入社、取締役に就任。’94年から現職。2011年、早稲田大学大学院公共経営研究科博士課程修了。日本舞踊、ヨガ、習字など趣味も多彩。