弁護士・柳原桑子先生が、堅実女子のお悩みに応える本連載。

今回の相談者は、真理子さん(仮名・40歳・食品メーカー勤務)です。

「結婚12年になりますが、夫とは1回しか性交渉を持ったことはありません。もともと、夫は淡白であるし、多忙な部署に異動になり、うつになってから、体の面で難しくなったのでしょう。実際、病院にも行っていたようですが、あまり改善はしなかった様子です。

私もそんな夫に物足りなさを感じつつ、バレないように別の男性と関係を結んだことはあったのですが、やはり、身も心もわかってほしいのは夫だけだということがわかりました。

私に魅力がないのかと聞くと、”そうではない”と言います。でも眠る前に、そういう雰囲気になると、リビングのソファに逃げ出すし、そこを追いかけると“心が結ばれているだけではだめなのか”などと言われます。手を握ると”気持ち悪い”と払われ、抱き着いて跳ね飛ばされたこともありました。

容姿や体臭、性格、コミュニケーションの癖など、私が夫に嫌悪感を持たれるほどの要素があるのかと理由を聞いても“生身の女性はダメになるし、自分からはできないし……”とあいまいな言い訳ばかりされています。

ただ、妻として家事全般を負担して、お金の管理など信頼されていることがわかるのに、拒否されてしまう現実が受け入れがたい。数年前から”もう、離婚しよう”と言っているのですが、”それは嫌だ”とハッキリ言われます。

先日、夫のスマホをこっそり見たときに、女性の動画や画像があったので、おそらく欲望はあるのだと思います。LINEやメッセンジャーを見たら、仕事相手とばかりで消去した痕跡もありませんでしたので、浮気はしていないと思います。

しかし、お互いの両親から子供の問題もせかされており、夫婦関係を持つことは避けられない状況になっていると感じます。

本当に悩ましいのですが、法律上、性交渉は夫婦間の義務と聞いたことがあります。それは本当でしょうか?もしこの状態が続いたら、“法律で決められているのだから、性交渉を持たなくてはならない”と言えるのでしょうか?

もし、離婚をするならば、性交渉を拒否された精神的苦痛で慰謝料を請求することはできるのでしょうか。そして、私は離婚したほうがいいのでしょうか?」 

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは……!?

性交渉が夫婦の義務だとまでは言えないですが、婚姻生活における重要な要素であることは間違いありません。

ですから、健康な夫婦において理由なく性交渉に応じないという場合には、今後も改善が困難なようであれば、離婚理由になりえます。

ただ、夫婦双方が2人の関係性において性交渉を重要視するものでなく、性交渉がないか、ほとんどなくても婚姻関係の継続に問題はないという場合だったり、体調等の理由があって性交渉ができにくい場合には、性交渉が起こらないことが、離婚理由になるとは言えないのです。

本件は身体の健康上の理由ではないようなので、離婚するかどうかは、今後の改善の見込みによると思います。

夫婦双方が愛情で結ばれている以上、離婚については慎重に検討をしたほうがいいと思うところですが、事情にもよるでしょう。慎重に考えて、行動したほうがいい場合も少なくありません。

2017年『男女の生活と意識に関する調査』(一般社団法人日本家族計画協会)によると、日本の夫婦のセックスレス率は47.2%だという。



■賢人のまとめ
改善の糸口を冷静に探りつつ、離婚はよく考えて行なったほうがいい場合が多いです。

■プロフィール

法律の賢人 柳原桑子

第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。

東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/