提供:週刊実話

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 日本には、食物アレルギーの人が約150万人いるとされる。問題になり始めたのは1980年代頃だが、中でも、大人の食物アレルギーが年々増えているという。
 まずはその理由を、アレルギー科担当医がこう説明する。
 「アレルギーは、一種の文明病とも言えます。農村などで昔から続く伝統的な生活をしている人と、都会の生活にどっぷり浸かっている人を比べると、その違いは明確に分かります。農村では家畜の菌や毒素が常に身近にいるものですが、都市部では抗菌志向が強くなり、菌に接する機会が減少する。そのため、アレルギーを発症しやすくなるのです。この違いの仮説を、医学的には『衛生仮説』と言います。最近では食べ物やシャンプーにも防腐剤が含まれているため、それが体内に残留して抗生物質を飲み続けているような状態となる。そうしたことから、腸内の常在菌叢のバランスが崩れ、アレルギーを発症しやすくなっている可能性が指摘されているのです」
 また、発症に関係するものとして高脂肪食、肥満、ビタミンD不足が挙げられるという。これに、前述の現代的な生活習慣への変化、アレルギー反応を予防する説がある寄生虫やダニなどの感染症がなくなってきたことなどが影響している。

 成人の食物アレルギーとは、具体的にどういった種類があるのか。
 「食物アレルギーは、『経口感作』と『腸管外感作』という2種類の発症ルートがある。経口感作は、口から食べ物を摂取してアレルギーを起こす場合。腸管外感作は、鼻や気道、皮膚から食べ物が体内に侵入してアレルギーを起こすケースを言います。とくに大人の食物アレルギーは、腸管外感作による発症頻度が高いとされています」(健康ライター)

 実際、食べ物が皮膚に直接付着したり、料理を食べている際に室内に舞った食べ物のタンパク質などが皮膚、鼻、喉から吸収されるといったものだ。
 前出のアレルギー科担当医は、こう続ける。
 「人間の体は、異物が侵入してくると、それを攻撃するためにリンパ球による『IgE抗体』を作ります。これとアレルゲンが反応して、アレルギーのさまざまな症状を引き起こすのです。人間にとって、排除しようとするのはしかるべき反応です。口から摂取する食べ物については『免疫寛容』という特定の抗原に対する免疫抑制システムが働くため、反応を起こさずに済んでいる。しかし、繰り返し特定の食べ物を摂取し続けると、そのアレルゲンに対してのIgE抗体が蓄積され、腸管外感作でアレルギーを発症することがある。つまり、皮膚や鼻などの免疫器菅から食べ物が侵入し、これを異物とみなしてしまうのです」

 こうした成人アレルギーの原因物質で最も多いのが、リンゴや桃などの果物や野菜類。「花粉食物アレルギー症候群」といって、花粉症の原因となるアレルゲンが、リンゴや桃に含まれていることで起きる。特に、ハンノキや、シラカンバのアレルゲンに反応してしまう人が発症しやすい。
 東京労災病院内科(消化器)外来担当医は言う。
 「アレルギーを発症する場合、典型的な即時発症型の際は、原因の食べ物を口にしてから2時間以内に症状が表れることが多い。多い順に(1)皮膚症状(かゆみや発疹など)、(2)呼吸器症状(咳や呼吸困難など)、(3)粘膜症状(目や口腔の腫れ、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど)、(4)消化器系の胃や小腸で起きる胃腸炎(腹痛、下痢など)となります」

 また、食べてすぐに症状が出る、この即時型に対し、数時間、さらには数週間後に出る遅延型の場合、頭痛やめまい、倦怠感、さらには精神的に不安定になるなどの症状がある。
 「遅延型の場合は、症状が様々。そのため、食べたものとの関係に気付かない人も多い。何らかの異変が出たときは、最近、健康のために何か取り入れるようになったものはないかなど、振り返ってみることも必要です」(同)