元BMW社員が設立の「EV界のアップル」 1000億円調達に成功

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ロサンゼルス本拠の「EVelozcity」は、EV業界に新たに参入した注目のスタートアップだ。3人の創業メンバーはBMW出身で、グローバルファイナンスと自動車開発分野で豊富なキャリアを持つ。彼らは、短期間ながら「ファラデー・フューチャー」に在籍したこともある。

EVelozcityは、「スケートボード」プラットフォームを採用した5万ドル以下の3車種を2021年までにリリースする予定だ。プロトタイプはまだ完成していないが、投資家から既に10億ドル(約1060億円)を調達している。

「EVを開発するためには約10億ドルの資金が必要だ。我々は既に中国や欧州、米国の投資家から出資のコミットメントを得ている」とEVelozcity のCEO、Stefan Krauseは話す。同社は出資元の名前については明らかにしていない。

実績のないスタートアップにこれだけの資金を投じるのは、投資家らがKrauseをはじめ、技術責任者のUlrich Kranz、デザイン責任者のRichard Kimに絶大な信頼を置いている証だ。

KrauseはBMWとドイツ銀行でCFOを勤めた経歴を持つ。KranzはBMWのR&D部門に30年以上勤め、「i3」や「i8」の開発にも携わった。Kimも「i3」と「i8」の設計に関わったほか、フォルクスワーゲンやアウディ、ブラジルの航空機メーカー「エンブラエル」でデザインを担当した。

EVelozcityは、資産をなるべく軽くする「アセットライト」経営を目指しており、この点も投資家から評価されている。

テスラは、組み立て工場の建設と運営に数十億ドルを投じているが、EVelozcityは生産を米国や中国の企業に委託する予定だ。また、バッテリーやモーター、自動運転技術用の部品なども外部のサプライヤーから調達するという。

デザインに注力し製造は外部に委託

「EV分野では技術の進化により、将来的にはバッテリーパックや電気モーターのコモディティ化が進み、差別化が難しくなる」とKrauseは話す。Krauseはアップルに習い、ユニークなデザインとエンジニアリングでブランド価値を築きたい考えだ。

「アップルのブランド価値はデザインとエンジニアリングの力であり、自分たちで製造を行うわけではない。我々もエンジニアリングとデザインで勝負をし、コアなファンを持つ米国発のEVブランドを作りたい」と彼は話す。

EVelozcityは乗用車や配達用の小型バン、ライドシェア向け車両の3モデルを開発中だ。同社は、コストを抑えると同時に製造を簡略化するため、「スケートボード」と呼ばれる共通のフロアパンを採用している。これは、10年以上前から業界で言われてきたコンセプトだ。

「自動車の下部と上部、ヘッド上部を同時に作り、ラインの最後で組み立てることで、工程に掛かる時間を30%削減することができる」とKrauseは言う。

現在、EVelozcityには100名のエンジニアと開発者が在籍しており、年末までに少なくとも300名に増員する予定だという。

同社は資金調達に成功したが、まだ大きな問題が残っている。ファラデー・フューチャーが、知的財産を盗用された疑いがあるとして、1月にKrauseとKranzを相手取り訴訟を起こしたのだ。ファラデーについては破産寸前との噂もあったが、年内に数モデルをリリースする予定だという。Krauseは詳細を語らなかったが、EVelozcityは仲裁による解決を模索しているようだ。

テスラは何度も倒産寸前まで追い込まれながら立ち直った。黒字化はまだ達成しておらず、生産目標も未達だが、同社の時価総額は580億ドル(約6.1兆円)に達し、熱狂的なファンを多く抱える。競争が熾烈な自動車業界においてEVelozcityがテスラのような成功を手にするかはまだ不明だが、同社が優秀なチームと潤沢な資金を持っていることは確かだ。