Vice Media(以下Vice)は、ヨーロッパ圏で自身のブランデッドコンテンツの統一的な戦略を施行するにあたって、特定の国に向けたローカライズを行いながら、どのようにバランスを取っていくかを模索している。

地域の文化の違いを軽視しているようなパブリッシャーの表現は、ぎこちなく不自然に聞こえてしまうものだ。ドイツ、オーストリア、そしてスイス向けのメディア部門のトップを務めるニーナ・ケネディ氏によると、Viceは単なる直訳をやめるように努めているという。

Viceにはドイツ国内に広告運営部門があり、ドイツ、スイス、オーストリアにはブランデッドコンテンツのチームがある。ケネディ氏によると、ドイツのViceには20人ほどのメディア担当者、そして自身のクリエイティブエージェンシーとなるバーチュー(Virtue)にも22人が在籍しているという。また、そのドイツの10分の1ほどの人口(約870万人)のオーストリアではおよそ100人が、バーチューでメディア戦略、ソーシャル戦略、キャンペーンおよびアカウントの運用に取り組んでいる。オーストリアと比べるとベルリンの市場規模は大きいが、クリエイティブエージェンシーの競争も激化しているからだ。

戦術レベルの理解が重要



「その国における全体的な戦略を把握しつつも、それをどのように適用すべきか、戦術レベルで理解している人材が必要だ」。2018年2月末にモナコで行われた、米DIGIDAYのパブリッシングサミットにおけるスピーチで、ケネディ氏はこう語った。

これは、オーストラリアとドイツにおける航空会社のANAのキャンペーンでオーストラリア人を起用したり、スイスのドイツ語にナレーションを変更したり、またはその地域での関心ごとに関連したコンテンツを制作するなど、比較的シンプルなことかもしれない。

「我々の戦略軸は、クライアントが簡単にモニターできること、担当者とメディアストラテジストをひとりずつ配置すること、首尾一貫したブランドであること、そしてトレンドを素早くキャッチアップすることだ」と、彼女は語る。

オーディエンス分析の実施



2017年末、オーディエンスの理解を深めるため、Viceはヨーロッパとアメリカの教育市場、金融市場に関わる読者に対するアンケートを行った。そこで明らかになったのは、ファッション、グルメや旅行に高い興味を示した回答者が多かったこと、そしてドイツ人の回答者の33%が5万ユーロ(約658万円)以上の高所得者層だったことだ。現在、オランダのViceのデータ分析チームは双方のレベルでクライアントにデータを提供するため、ドイツ語圏(ドイツ、オーストリア、スイス)におけるデータを一斉に収集中だ。

たとえば、ドイツではシェアリングエコノミーが一般的であるため、Viceはドイツの大都市向けのシェアリングエコノミーを特集した自動車ブランドのキャンペーンに取り組んでいる。「ベルリンでは、シェアリングエコノミーの一員としてできることがたくさんある」とケネディ氏は語る。「だが、オーストリアの小さな街の人にとっては興味をそそるようなものにはならない」。

またViceは、ベルリン芸術大学とともにZ世代はどのプラットフォームへの関連性が高いか、Viceがそこでどのようにコンテンツを提供するか、そしてこの世代グループに関連性の高いコンテンツとは一体何か、といったZ世代のメディア消費の習慣に関する研究を行っている。ケネディ氏によると、大まかにいってZ世代はミレニアル世代の影響もあり、健康、政治、そして自身の環境の問題に関心が高いと初期の研究結果に示されている。

プラットフォームの多角化も



「多種多様なプラットフォームへの展開は基本計画の一部だ。我々は、Facebookのアルゴリズムに依存しすぎずに、オーガニックリーチできるための手法を模索中だ」とケネディ氏は語る。プラットフォームの多角化は、このサミットで多く語られたトピックだ。最初のセッションで、ハースト UK(Hearst UK)のチーフブランドオフィサーのダンカン・チャター氏は、10代の若者のユーザーが多いミュージカリー(Musical.ly)のプラットフォーム向けに、自身の雑誌ブランドが動画コンテンツを配信していたことを明かした。

「ひとつのターゲットグループに依存しすぎてはダメだ」と、ケネディ氏は語る。「これは、特定のトラフィック解析に依存しすぎてはいけないことと、まったく同じ。我々は若者向けのメディアブランドとしてトレンドの最先端であり、それを深く理解してなくてはならない」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac)