何気なく映画やドラマを観ていて「誰かわからないけど、この俳優なんか気になる!」と思い、エンドクレジットで名前を確認するも、そのまま忘れて日々が過ぎる。それでまた別の映画やドラマで、やはりどう考えても気になるお芝居をする人がいて、どこかで観たことあるけど誰だっけ?などと思って名前を確認すると、あああのときの〇〇!と名前と顔が一致し、この人ぜったいに来るな!などと思う。それで自分がいちばんに目をつけた!と思うも、案外多くの人が同じように注目していて、次第に出演作が増え、演じる役が大きくなっていく……ニューカマーの発掘はいつだって楽しいもの。今回、筆者がいま超気になる俳優を思いつくままズラズラっと並べたら、あっという間に5人に。つぎのブレークはこの人、か?

太賀ですが、なにか?

太賀は、もうとっくにブレークしているのかも。宮藤官九郎脚本の連ドラ『ゆとりですがなにか』で爐罎箸螢皀鵐好拭次匹海隼慨澆鬚屬辰舛りのハイテンションで演じ、ついに彼を主役に据えたスピンオフドラマまで生れたのは、この役を演じた太賀がとてもナチュラルにずうずうしい人間に見えたから。そのツボを突いた演技に、こんなヤツいる〜、ムカつく〜!と多くの共感を呼んで笑えたからだった。

遡って考えても太賀は『桐島、部活やめるってよ』『男子高校生の日常』『スイートプールサイド』『私の男』と小さな役での一瞬の出演シーンでも、観る者にどうにも気になる!と思わせる企みのある演技をしていた。『ほとりの朔子』であの二階堂ふみを相手にちょっと不思議な存在感を出したり、石井裕也監督による連ドラ『おかしの家』にゲスト出演し、オダギリジョー演じる主人公にイヤがらせ的訴訟を起こす男を、これでもか!というくらい嫌味たっぷりに演じたり。作品の中で彼の占める位置は次第に大きくなっていく。

『ポンチョに夜明けの風はらませて』での「明日とかどうでもいい」アホアホな男子、『南瓜とマヨネーズ』で魚喃キリコが描く、女子にとってはたまらない色気を漂わせる売れないミュージシャンと、役がどんどん大きく幅広くなり、その演技をじっくり味わえるようになった。

今後も『淵に立つ』の深田晃司監督作『海を駆ける』、山田孝之と共演する『50回目のファーストキス』と気になる作品が続く。ああ、なんて楽しみ。

『海を駆ける』(配給/日活 東京テアトル)監督・脚本・編集/深田晃司   出演/ディーン・フジオカ 太賀、鶴田真由 ほか ●5月よりテアトル新宿ほか (c)2018 "The Man from the Sea" FILM PARTNERS

初舞台は1歳3か月!存在感がすごい若葉竜也

若葉竜也という俳優を意識したのは2004年のWOWOWドラマ『4TEEEN フォーティーン』だったか、翌年の連ドラ『野ブタ。をプロデュース』のシッタカ役か。当時15〜16歳。でもじつは大衆演劇の老舗「若葉劇団」の三男坊で、初舞台は1歳3か月なのだ。早っ! そんな彼が注目されたのは映画『葛城事件』で無差別殺傷事件を起こして死刑囚となる葛城稔役だった。劇団「THE SHAMPOO HAT」の赤堀雅秋(←俳優でもあって、最近だと『監獄のお姫さま』でキョンキョンの別れた夫役とか)演出のもと、精神的にかなり追いつめられながら演じたというこの役は、ほんと〜に見応えがあった。彼の存在が明らかに映画の鍵になっていて、その役割をきっちりと果たした。

福田雄一監督の『明烏 あけがらす』では七三分けの小心者、ラブコメドラマ『過ちスクランブル』ではヒロインが想いを寄せるイ〜感じの同僚、吉田大八監督の『美しい星』では存在が謎めいたストリートミュージシャン、音楽が禁止された近未来を描く『サラバ静寂』では音楽への過激な初期衝動を体現する青年――どの役も「彼がやったから面白くなった」と思わせる実力の持ち主。

『曇天に笑う』では本広克行監督が描くにぎやかな世界観のなかで画面の熱を冷ややかにする忍者を演じ、『素敵なダイナマイトスキャンダル』では柄本佑演じる主人公の「バクハツする母」と心中する男役。う〜む、どちらも決して多くない出演シーンで、作品の質を確実に底上げしている。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』(配給/東京テアトル)監督・脚本/冨永昌敬 出演/柄本 佑 前田敦子 ほか ●3月17日よりテアトル新宿、池袋シネマ・ロサほか(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

とにかくイキがいい吉村界人

その若葉竜也と『サラバ静寂』で連れを演じていたのが吉村界人。この人はとにかく、イキがいい。『太陽を掴め』はそんな彼の演技への衝動、映画への情熱がほとばしる映画。自分のなかにはわけのわからない熱があり、それを自覚しているけど、上手く言葉に出来ない。でも演じることにはすべてをぶつけられる!――みたいな情熱が伝わってくる。『サラバ静寂』でもその熱が彼を後押ししているようで、画面へ惹きつけられてしまう。お芝居が上手いかどうかとは別枠な人で、その存在が際立って無防備で必死。フォトジェニックでもあって、25歳のいま、若さゆえのぎりぎりな純粋さ、みたいな役をやるとがぜん強い光を放つ。

最新作は沖田修一監督の『モリのいる場所』。山粼努と樹木希林という大御所中の大御所を相手に、そんなのどこ吹く風〜というイマドキな若者役。こんな役も肩の力が抜けていい感じ。

『モリのいる場所』(配給/日活) 監督・脚本:沖田修一 出演:山粼努、樹木希林ほか ●5月シネスイッチ銀座、ユーロスペース、シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか (c)2017「モリのいる場所」製作委員会

朝ドラ〜大河ドラマでおなじみ井之脇海

井之脇海はNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』で菅田将暉と幼なじみを演じ、お茶の間に広がる狎次ロス”(高橋一生ロス?)を一瞬で沈めた張本人。この人も芸歴は長く、2008年に『トウキョウソナタ』へ出演してキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞している。今春に日本大学藝術学部映画学科を卒業予定なのだが、自ら脚本・主演を務めた初監督作がカンヌ国際映画祭ショートフィルムコーナーに正式出品された実績を持つ犧遒蠎蠡Δ凌諭匹任發△襦

そんな彼を一躍メジャーにしたのは朝ドラ『ひよっこ』を経て、やはり『おんな城主 直虎』。決して大げさな芝居はせず、無駄な動きはなし。よく考えたらさまざまなタイプの人間を演じているのに、彼が演じるとそういうフリをしているとか、演技というウソをついているように見えないから不思議だ。安定した誠実さのようなものが役柄を通して透けて見える。一方で見た目の印象が役柄によってまったく異なり、ぶさいくな役もイケるし、キリっとしたハンサムなエリートみたいにも見える特異な人。

上白石萌歌と共演した「午後の紅茶」のCMが濃密な時間を切り取るラブストーリーのように見えるのは、彼の存在が大きい。最新作は映画『サイモン&タダタカシ』。まさかの超リーゼント姿で犲転車暴走族”柳田役を演じている。

『サイモン&タダタカシ』(配給/日活)監督・脚本・編集:小田学 出演:阪本一樹、須賀健太 ほか●3月24日シネ・リーブル池袋ほか(c)2017 PFF パートナーズ(ぴあ ホリプロ 日活)

今年はドラマ、映画で数多く目にするはず!清水尋也

清水尋也はまさに「どうにも気になるけど、その理由がよくわからない」系の人だった。まず、キラキラしたイケメンとは明らかに異なる顔つきに惹かれた。『渇き。』でのイジメられっ子、『ソロモンの偽証』で猗鏐霓諭匹箸覆詆堽斌鬚函△泙気某慎奸な役柄がなぜかピタリとハマる。タレ目にも吊り目のようにも見える目つきで、「こんなイジメられっ子いそう!」「イジメっ子ってこんな顔だよな〜」と観客を妙に納得させてしまう。それでいて『ストレイヤーズ・クロニクル』の超記憶力を持つ引きこもりというこれまた極端な役でも、わりとフツーの顔をして演じていた。

今年、彼の周囲はがぜん騒がしくなる。『ちはやふる-結び-』の公開、『anone』と『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』と連ドラを掛け持ち。先の2本で広瀬すずと共演し、後者のドラマでは、LINEでのやりとりばかりでなかなか顔を現さない気になる男の子として相手役を演じている。そして映画『ミスミソウ』では、彼の俳優としての力量を堪能できる。『ライチ☆光クラブ』の内藤瑛亮監督が手掛けるこのトラウマ必至の復讐劇は、雪に覆われた田舎町で繰り広げられる血だらけにして肉片がぶっ飛ぶ惨劇の連打。イジメっ子にもイジメられっ子にも引きこもりにも見える彼の外見の個性が活きていて、余計なことはしないけれど説得力を持つに至る確かな演技力を堂々を見せつけている。

『ミスミソウ』(配給/テイ・ジョイ)監督/内藤瑛亮 原作/押切蓮介 脚本/唯野未歩子 出演/山田杏奈 清水尋也 ほか ●4月7日より新宿バルト9ほか(c)2017「ミスミソウ」製作委員会