ピークを迎えるスギ花粉の飛散。花粉症対策の効果の判断の仕方とは・・・。


 スギ花粉の飛散量がピークを迎えている。

 手軽な対処法として根強い「食の民間療法」の実態や効果などを、専門医に聞いている。応じてくれたのは、山梨大学で耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座に所属する五十嵐賢(いがらし・さとし)助教。「山梨環境アレルギー研究会」では、スギ花粉症患者を対象とした民間療法を含むセルフケアについての実態調査のとりまとめ役も務める。

 前篇では、ヨーグルトや甜茶などの摂取をはじめとする、食の民間療法の現状を実態調査や研究報告などから見ていった。ヨーグルトの成分として知られる乳酸菌の特定の株では、人での症状緩和の効果が認められるといった研究結果もあり、効果を否定できない側面もある。

 後篇では、食と花粉症をめぐる話の周辺として、漢方の効果やプラセボ(偽薬)効果の位置づけなどについて、さらに話を聞いていく。患者自身が「効いている」と感じているかどうかは、効果のほどを判断するときの重要な指標となるようだ。

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アルコールは鼻づまりを助長させる

――前篇では、花粉症などのアレルギー性鼻炎に対する飲食物の効果のほどなどを尋ねました。逆に、飲食物の中で、花粉症の症状を助長させてしまうようなものはあるでしょうか?

五十嵐賢氏(以下、敬称略) お酒は鼻づまりを助長させます。お酒を飲むと顔や体が赤くなるなどしますが、あれはアルコールには血管拡張作用によって血流がよくなっている表れです。花の粘膜のあたりも血流がよくなります。すると、粘膜に血液を溜め込むことになり、鼻がつまりやすくなるのです。

 鼻づまりなどの症状のある患者さんには「お酒はあまり飲まないように」と言っています。

漢方薬「小青竜湯」の治療効果は認められている

――漢方による花粉症治療についてはいかがでしょうか?

五十嵐 私自身は診療ではあまり処方はしていませんが、漢方薬も「鼻アレルギー診療ガイドライン」では適用の対象となっています。

――「小青竜湯」(ショウセイリュウトウ)という漢方薬は、アレルギー性鼻炎に対してよく使われているようですね。

小青竜湯。麻黄、芍薬、乾姜、甘草など、複数の薬草の成分が配合されている。「医薬品」と記されている製品は、食品でなく医薬品として扱われる。


五十嵐 小青竜湯については、日本医科大学の松根彰志先生が2017年に『アレルギー・免疫』に寄稿した記事「セルフケアの効果検証」で「小青竜湯は漢方薬の中で、唯一ランダム化試験で有効性が示されている薬剤である」と記述しています。

 一般的に、小青竜湯は鼻粘膜の血管を収縮させて鼻づまりなどを改善する効果があるとされています。漢方ではない抗ヒスタミン剤などと併用して使われることもあります。また、一般の風邪薬にも入っています。

 ただし、松根先生は「作用機序については不明な点も多い」とも言及されています。

効果のほどは患者の症状から判断

――薬でないものを投与されたときにも治療効果が現れる「プラセボ(偽薬)効果」をよく耳にします。花粉症の対策において、この効果をどう捉えたらよいでしょうか?

五十嵐賢(いがらし・さとし)氏。博士(医学)。山梨大学大学院総合研究部医学域臨床医学系耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座助教。山梨大学医員、診療助教を経て、2015年7月より現職。山梨県下の施設に所属する環境アレルギーに関心のある医療関係者・研究者からなる「山梨環境アレルギー研究会」では、「スギ花粉症患者のセルフケアについての質問票調査」などの各種研究調査の取りまとめ役を務める。2014年に「山梨医師会優秀賞」を受賞。


五十嵐 プラセボ効果だけを安易に強調することはできませんが、プラセボ効果も大事な効果と考えてよいのだと私は思います。患者の方が「効いた気がする」という感覚を持つことが大切ですから。それも含めての医療だと私は思っています。

 花粉症の治療に効果があったかどうかは、「日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票(JRQLQ)」などの調査票などを使って、「水っぱな」「くしゃみ」「鼻づまり」などについて「0 症状なし」から「4 非常に重い」までの症状の程度を患者に聞いていき、スコアとして表しています。前回の診療より、そのスコアが改善されていれば、花粉症の症状が改善されたのだとしています。

 いま、アレルギー性鼻炎の患者の体からバイオマーカー(生物指標化合物)を得て評価するための研究も進められてはいますが、現状では効果のほどは患者の症状からしか測れません。

――ということは、何らかの花粉症対策をしている患者が「効果が出ている」と感じれば、それは効果があったと診断されることになるのでしょうか?

五十嵐 その通りです。診療時では、患者に試験をして医師の所見をとることもありますが、日常的な診療では患者の感覚が重視されるものです。

 プラセボ効果だけを期待して受診していただくのは間違いだと思いますが、本当の効果かプラセボ効果は別に、患者が治療によって「効いた」と思えば、それでよいのだと思います。

「十分なデータは得られていない」治療法は自身の判断で

――もう1つ、花粉症の民間療法をめぐっては、患者や市民に「十分な効果の根拠があるとは言えません」や「花粉症の症状を改善する十分なデータは得られていません」などと知らせる公的な情報も見られます。こうした表現を、私たちはどう捉えたらよいでしょうか?

五十嵐 難しいところですが、「自己責任ですよ。自身のご判断でお願いします」といった意味合いが含まれているのではないでしょうか。

――「データは得られていない」と聞くと、「効かないんだ」と思ってしまう人も多いのではないかと・・・。

五十嵐 私からすると「もう少し研究をすれば、もしかしたら効果が分かってくるのではないか」という感覚を持ちますけれどもね。

――最後にあらためて、花粉症に対する食をはじめとする民間療法について、私たちが念頭に置いておくとよいことについて聞きます。

五十嵐 ヨーグルトもそうなのだと思いますが、手軽に試せそうなものがあれば試してみるという考え方でよいのではないかと思います。

 患者の方が「効いている」と思えば、患者も医者もそれはよいことだと思えますから。さらに社会的に見れば、膨れあがる医療費が削減されることにもつながります。

筆者:漆原 次郎