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■在庫を減らしたのは「工程結合」

 注目すべき点は、「トランスファーマシン(自働化)」は専用機と考えられているが、この始まりは多数の機械を一人で受け持つための「機械群」の考え方から始まっていること。つまり自動化ではなく、「人偏」のついた「自働化」の考え方で、多数の機械を受け持つために機械が停止していることは起きるが、人間が動作しないことがなくなることを狙っているのだ。

【前回は】世界の自動車生産を変えた「トヨタ生産方式」のビックリする数字とは何か?(上)

 これは、マシニングセンタなどNC(数値制御)工作機械が導入される前からあった考え方で、一部の大学教授たちが言っている20年ほど前からではなく、それよりもはるかに古い半世紀以上前からの動きであった。この考え方が「工程結合」であり、「工程間の在庫」をなくす動きで、この調査の1990年時点でも日本企業では徹底してきていた。

 よって1日の「在庫レベル」においては、日本1.5、米国8.1、欧州ではなんと16.3という数字だ。欧米では日本の5倍10倍となっており、ムダな在庫の存在や多品種少量生産が進んでいないことを表している。

■「カイゼンは革命」であり、品質向上に結び付く

 また、「完成車1台当たりの欠陥部品数」では、日本が0.24、米国が0.33、欧州が0.62で日本が一番低く、日本の品質の良さを表している。これには、「小さい」と批判されているトヨタの「カイゼン」の効果が見られる。つまり作業効率を求めて「カイゼン」していく結果、作業が「やりやすくなり」、安全と品質の良さが生まれてくる。「カイゼン」とは「改革」であったことを、多くのジャーナリスト、大学教授は知るべきだ。しかもそれは「産業革命」と言える規模であったことを、未だにとらえられない経済専門家も多い。

 ほかにもこの資料では、日本の「トヨタ生産方式(リーン生産方式)」よる自動車生産の効率の良さが数字の比較によって一目瞭然なのだ。しかしそれは、目先の「けちる」コストダウンではなく、「考え方」によるものであることが深読みしてみるとわかってくる。さらにそこには、「品質の良さ」という効果までついているのである。

■現在の日本経済停滞の原因は、生産性向上の切り札がないこと

 驚くのは、これらの数字の差が1980年代のものであること。だから当時、欧米メーカーがものすごい衝撃を受け、その後も日本を追いかけ続けているのだ。現在その差は縮まっている。けれどトヨタ生産方式はまだまだ進化し続けているし、2月に発表された2018年3月期の連結決算予想では、純利益見通しを過去最高の2兆4,000億円に上方修正している。さらに、経営陣は為替にも左右されない収益体質を目指すと語っており、まだまだカイゼンの余地があり、TNGAを掲げるのはカイゼンを進めるためだ。これでさらなる警戒感を「トヨタ生産方式」に示すのが欧米メーカーで、「HV」を飛ばして「EV」を推進する政策に変更したりするのだ。

 しかし、1980年代からのこれらの数字を見ていると、日本が高度経済成長期において、トヨタ生産方式で資金的に生まれた余裕が金融政策ほどの規模であったことが推察できる。これが日本を支えてきたことを認めれば、その後トヨタ(リーン)生産方式が各国に広がって日本との差が徐々に少なくなり、日本の優位性がなくなりつつあり、現在は「日本が切り札をなくし」苦しみ始めたと理解できるだろう。