2016年4月のことだ。BuzzFeedは、Facebookライブ動画でスイカを爆発させてみせ、それが当時、Facebookでもっとも視聴されたライブ動画になった。BuzzFeedには、310万ドル(約3.2億円)という豊富なFacebook資金があった。Facebookがライブ動画コンテンツ制作のためにもっとも資金を投じているメディア企業として、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)やCNNをも上回っていた。

スイカ動画の数日後、BuzzFeedのファウンダーであるジョナ・ペレッティ氏は、Facebookの開発者カンファレンス「F8」で登壇し、バイラルコンテンツ企業である同社がFacebook向けに制作したすべてのライブ動画について解説した。そのなかには、ゲーム番組もあった。FacebookとBuzzFeedは腕を組み、まったく新しいライブ動画の世界へ一緒に向かっているかのようだった。

しかし、それまでだった。当時の大演説とはうってかわり、ペレッティ氏はこのところ、カンファレンスで不満を訴えている。Facebookはニュースフィードの収益をもっとパブリッシャーにシェアする必要があると、メディア企業やBuzzFeedスタッフに主張している。文字通りFacebookを中心にビジネスを構築しているメディア企業としては大胆な発言だ。プラットフォームとパブリッシャーの不均衡で損なわれているのが従来型メディアだけではないことが、メディア界隈に広く伝わっていった。

ペレッティ氏は、米DIGIDAYのインタビューに次のように語っている。「ニュースフィードの収益をシェアすることは、Facebookにも利益がある。世界のためだからというのではない。ニュースフィードに表示されるものをFacebookが多少コントロールできるようになる。そうなれば、Facebookのビジネスにかなりのプラスがあるだろうし、メディア企業のモデル改善にもつながる」。

パブリッシャーたちの不満



強大なプラットフォームに対するメディア幹部の批判は、かつては密室で声を潜めて行われるものだった。ワイアード(Wired)編集長のニック・トンプソン氏が最近、米DIGIDAYのポッドキャストで言及したように、Facebookにはダイヤルがあって、それを調整するだけで生意気なメディアを切り捨てられるのではないかという恐怖があるのだ。

しかし、パブリッシャーたちの我慢は限界に達しており、かつて熱心なFacebook支持者だったペレッティ氏のような人たちまでもが、いまでは声を上げている。最大の標的はFacebookだ。理由はオーディエンスのリーチ、影響力、そして、戦略の度重なる変更であり、パブリッシャーはそのたびに慌てて対応してきた。ひどい仕打ちだという感覚を多くのパブリッシャーが抱いている。エンゲージメントが高まるように、パブリッシャーはコンテンツを供給してFacebookに協力してきたが、Facebookはそのあいだに、広告システムを改善し、ビジネスのかなりの部分を我が物にした。

ペレッティ氏に続き、ほかにもパブリッシャーから批判が上がっている。筆頭はニューズ・コープ(News Corp)のトップであるルパート・マードック氏や、同社最高幹部のロバート・トムソン氏だ。テクノロジー大手2社は、ジャーナリズムのビジネスモデルを損なっており、メディア企業にもっと報いるべきだと、ときに激しく、ときに派手な言葉遣いで非難を繰り広げている。それだけではない。ワイアードによると、マードック氏は2017年、パブリッシャーの報酬改善に取り組まなければ攻撃すると、FacebookのCEOのマーク・ザッカーバーグ氏を脅したという。トムソン氏はその後、Facebookがパブリッシャーに支払う「キャリッジ料」を打ち出した。Facebookはこのアイデアを却下していない。Facebookのニュースパートナーシップの最高責任者であるキャンベル・ブラウン氏は、2月のCode Mediaカンファレンスでこの件を質問され、「絶対にないとは言わない」と答えた。

ブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)のCEO、ジャスティン・スミス氏は、配信プラットフォームへのコンテンツ提供に軽率に突き進む危険性を、その立場を利用してほかのバブリッシャーに警告している。NBCユニバーサル(NBCUniversal)のセールス責任者のリンダ・ヤカリノ氏は、デジタル広告の修正を唱え、そのなかで、テレビが従っている測定基準をFacebookが満たしていないことを攻撃している。「業界は消費者の行動を把握できない状態が何年も続き、そのイライラがみんな我慢の限界に達している」と、ヤカリノ氏は語る。

メディア幹部の戦い方



メディア幹部は、プラットフォームへのロビー活動をいまも見えないところで進めている。しかし、さらに公に語ることで、プラットフォームにつぎ込む予算をますます増やす広告主たちに揺さぶりをかけたいと考えている。加えて、まさにFacebookが恐れている可能性を温存している。米国や欧州でFacebookに厳格な規則を課すため共同戦線を張るのだ。世論を動かすのに、メディアは外からの影響力を行使する。マードック氏も百も承知な、メディアがもつこの力がいま、Facebookの対外イメージを下げ、政府当局や規制当局の側についている。

急速に力をつけたFacebookが、実は2017年はひどく苦しんだ。もちろん、利益は相変わらず急上昇している。しかし、米国大統領選挙の結果とFacebookが果たした役割への疑問が同社につきまとった。これと並行し、メディアではFacebookへの長年の情熱が冷めてきている。

Facebookが2015年からインスタント記事(Instant Articles)を導入し、Facebookのためにライブ動画やニュースフィード動画を制作するパブリッシャーに資金を提供すると、Facebook上に本格的なビジネスを構築できるかもしれないとパブリッシャーは期待した。しかし、収益の期待は一度も満たされなかった。Facebookは動画の方針を変え続け、Facebookが求めるものを提供しようと体制を作ったパブリッシャーたちは憤慨した。皆、期待される収益をもとにベンチャーキャピタルから資金を調達したが、この間、Facebookからパブリッシャーへのオーガニックトラフィックは減る一方だった。

2社に対する向かい風



当時、デジタルパブリッシャーの業界団体であるデジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Content Next)のCEO、ジェイソン・キント氏は、データを計算して、デジタル広告の成長がすべてGoogleとFacebookに向かっていることを突き止めた。同氏は訴訟を起こし、大変な議論になった。

「正しくないことを市場に説明するシンプルな方法がずっと求められている。成長の大半が2社に向かうのが健全だという主張はかなり無理がある」と、キント氏は語る。

同時に、2016年の選挙前と選挙中の「フェイクニュース」が発覚し、世論がGoogleとFacebookに向かい風になりはじめた。これがメディア企業の武器になった。テクノロジーの中毒性への意識が高まっている。2017年、NYTからマククラッチー(McClatchy)まで新聞2000社が所属する業界団体、ニュースメディア連合(News Media Alliance)が、メンバーがプラットフォーム側と集団交渉をできるように、独占禁止法の適用除外を国会に要求した。この除外に沿って、ニュースメディア連合のCEO、デビッド・シャバーン氏が、サブスクリプション、ブランド、データ、および収益支援をパブリッシャーに提供するよう、独占2社に働きかけている。

「GoogleとFacebookに対し、問題をはっきりさせ、政治家にこの問題を認識させ、レガシーメディア対デジタルメディアの問題ではないことを世の中に広く知ってもらう取り組みが続いている」と、シャバーン氏は語る。

耳を傾けはじめた2社



ある意味、米国のメディア幹部たちは、欧州を追いかけているところだ。米国生まれのテクノロジー大手に対する疑念と抵抗が根深い欧州には、アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)などの有力メディア企業があり、プライバシーの懸念に敏感な長い歴史がある。米国メディアは、巨大プラットフォームの分割や規制を公然と求めてはおらず、そういうことになる様子はない。しかし、プラットフォームが信頼できないことをパブリッシャーが受け入れていけば、声は大きくなっていく。

テクノロジー企業側はいま、少なくとも耳を傾けてはいる。FacebookはGoogleと同様に、パブリッシャーのサブスクリプション対応のテストを進めている。Googleは、モバイルページの高速読込に対応する記事形式を拡充し、また、アドブロック版Chromeを導入した。後者は、質の高いパブリッシャーが、自社サイトの広告需要を拡大すると期待しているものだ。シャバーン氏は、手がけている独占禁止関係の取り組みは、今年進展があるだろうと期待している。切迫度は高まっている。ソーシャルプラットフォームに対する社会の信頼度が下がり、そこに表示される消費者ブランドやパブリッシャーの信頼度にも影響している可能性があることが、調査で浮き彫りになっている。

しかし、米国では発言者がまだ一部に限られている。パブリッシャーは圧倒的多数が広告スタックにGoogleを使っており、GoogleとFacebookでいまもパブリッシャーの参照トラフィックの70%を占めている。大きな声で何度も主張していると、Facebookのなかの人がダイヤルを回して参照トラフィックを完全に切られるのではないか、という恐怖がまだ浸透している。

「この件で目立ってもプラスにならない」と、キント氏。「プラットフォームなしではやっていけないのだ」。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)