レクサス「UX」は機械式駐車場にも入る手頃なボディサイズが特徴の一つだ(写真: Lexus International)

近年、世界の自動車メーカーが力を入れているのがSUV(スポーツ多目的車)だ。


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中でもトレンドの中心にあるのは、SUVが持つタフなイメージを踏襲しながら、アスファルトの上を快適に、かつスポーティにと、乗用車的な感覚で乗りこなせるクロスオーバーモデルといえる。自動車メーカー各社がこぞって独自のブランド観を採り入れたモデルを続々とリリースする流れは、しばらく続きそうだ。

日本ではトヨタ自動車が2016年末に発売した「C-HR」が、2017年の乗用車(軽自動車を除く)ブランド通称名別ランキングで4位(約11万7300台)という高順位に食い込んだほか、2017年末にマツダが投入した「CX-8」の出足も好調。ホンダが一度は日本での販売をやめた「CR-V」を今年中にも復活させる見通しだ。

新モデル、レクサス「UX」を投入する

クロスオーバーSUVへの注目ががぜん高まる中、レクサスが新モデルを投入する。その名はレクサス「UX」。スイスで今年3月8日に開幕し、同18日まで一般公開されているジュネーブ国際モーターショーで市販モデルが世界初公開された。日本では2018年冬に発売を予定している。


「UX」は、「アーバン・クロスオーバー」を意味する車名だ(写真: Lexus International)

「UX」は、「アーバン・クロスオーバー」を意味する車名。今回、ジュネーブショーに出展されたのは、欧州で市販予定の「UX 250h F SPORT」で、ボディサイズは全長4495mm×全幅 1840mm×全高 1520mm。現在、明らかになっているパワートレーンは直列4気筒2.0直噴エンジンと、これと組み合わせるハイブリッドシステムの2つだ。

そもそも、それまで悪路を走る走破性が最大の売りだったSUVを都会派のクロスオーバーSUVという形で提案し、プレミアムカーの潮流を変えた先駆け的な存在がレクサス「RX」(日本名はトヨタ「ハリアー」)だった。

「UX」は最もコンパクトなボディサイズ

現在、レクサスが展開するSUVは、「LX」「RX」「NX」の3車種に広がっているが、ここに追加される「UX」はこの中で最もコンパクトなボディサイズとなり、いわゆるレクサスのSUVとしてはエントリーモデルに位置付けられるだろう。


レクサスのSUVとしてはエントリーモデルに位置付けられる(写真: Lexus International)

UXは起伏のある道や悪路などでの走破性を左右する最低地上高はそれほど高くとっておらず、SUVのわりにルーフは低め。日本仕様はサイズが若干異なるそうだが、マンションやタワーパーキングなどの機械式駐車場に収まる全高の目安である1550mmよりも低いとなれば、都市部のユーザーにとっても、購入時のハードルが下がりそうだ。

ショー会場で初めて目にしたUXは、レクサス車を象徴するスピンドルグリルが小柄なボディに有機的に馴染むようにしてあしらわれている。グリル内のメッシュはF SPORTに因んで「F」の文字が象られたもの。メッシュのデザインは仕様によって異なるものが採用されるという。全体がこなれて見えるのと同時に、表情に意志の強さを感じさせるのは、外側に向けて切れ上がるように配されたポジションランプ。精悍な顔立ちであるとともに、どこか挑戦的な雰囲気を漂わせる。

UXはメルセデス・ベンツの「Aクラス」やBMW「1シリーズ」、VW「ゴルフ」などに代表される、欧州Cセグメントに分類されるモデルで、レクサスでは「GA-C」と呼ばれる新世代のプラットフォームを採用している。


低身長のドライバーが運転しても死角が少ない(写真: Lexus International)

開発のとりまとめを行ったのは、常務役員兼レクサスインターナショナル エグゼクティブ バイス プレジデントを務める加古慈(かこ・ちか)氏。トヨタに入社後、欧州などを舞台にインテリアの素材を検証し、提案を行う立場で活躍してきたレクサス初の女性チーフエンジニアである。

UXのエクステリアはSUVらしい力強さと守られ感を与えたのに対し、インテリアは男性よりも小柄で低身長な女性の立場で違和感を抱いていた点をデザイナーや人間工学設計の担当者と徹底的に議論。低身長のドライバーが運転しても死角が少なく、アームレストやシフトを前寄りにレイアウトし、自然に使いこなせるように解決策を施したという。


乗り味の仕立てには走りの匠たちと共に力を入れて磨き込んだ(写真: Lexus International)

一方で、「UXは見た目と乗り味のギャップを感じると思います」と語る彼女。基本設計はFFレイアウトがベースとされ、4WD仕様も展開されるモデルとなるが、レクサスが目指す「すっきりとした奥深い走り」に倣って、乗り味の仕立てには走りの匠たちと共に力を入れて磨き込んだそうだ。

直接的なCセグメントのライバルとしては、BMW 「X1」やメルセデス・ベンツ「GLA」、アウディ「Q3」といったクロスオーバーSUVモデルが頭に浮かぶが、彼女らがベンチマークした競合車は、ハッチバックの「Aクラス」「1シリーズ」のほかアウディ「A3」にも及んだ。見た目はクロスオーバーでも、走りはハッチバックモデルのパフォーマンスに負けない走りを意識して、UXはニュージャンルのモデルとしての立ち位置を狙っている。

レクサス インターナショナル プレジデントの澤良宏氏によれば、重心が低い新プラットフォームの採用によって、ハードウエアの組成やボディの剛性を高めたことで、走りの質感を左右する基本部分の性能が格上げされているそうだ。


レクサス「UX」の内装(写真: Lexus International)

プレミアムメーカーにとって、こだわりのモノづくりは生命線にあたる。その点、レクサスはフラッグシップクーペの「LC」からデザインや製造技術を磨き込むチャレンジを経験しており、製造の現場のスタッフは、「レクサスとして何をすべきか?」という危機感をもってものづくりに取り組み、モチベーションが高まっているという。

「将来に向けた成長を大切にしたい」

欧州マーケットでの販売は2020年には10万台を目標としているレクサスだが、チーフ ブランディング オフィサーの福市得雄氏は、「一過的な成果よりも将来に向けた成長を大切にしたい」と話す。

近年のレクサスはライフスタイルブランドとして、ユーザーの生活に密着するブランドを目指しているが、マーケティングを駆使してイメージだけに頼る戦略では、欧州ユーザーの厳しい目はごまかせない。イメージを高めるのが目的ではなく、レクサスとしてのスタンダードを貫いたクルマ作りはもちろん、独自のストーリーやフィロソフィー(哲学)も必要になる。

長い歴史を築き上げてきた欧州の競合メーカーたちを相手に、若きブランドとして挑戦者の立場にあるレクサス。試行錯誤を繰り返しながら、独自の価値を高めたクルマを作り上げようともがいている段階にあることが分かる。