出版社との直接取引により、発売日当日に消費者の自宅に本を届けるアマゾンは、取次と書店の領域を着実に侵食し始めているが、出版社自体も「海賊版サイト」による著作権の侵害に手を焼いている。

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 電子書籍への時代の流れがある。印刷や製本の手間はもちろん、流通の経費も削減できるし、在庫するための保管スペースも必要ない。従来の書籍では考えられない動画や音声、振動に加えてハイパーリンクの利用も可能となる。ところが電子化には大きな陥穽(かんせい)があった。

 今まで書籍を不正にコピーするためには、紙の本を断裁したりスキャナーでの読み込みが必要だったため非常に手間が掛った。書籍データがデジタル化されている電子書籍は、不正コピーを目論む輩(やから)には有難い存在だ。ネット上にある無料公開ソフトを使うと、大した手間も掛けずに数分で1冊のコピーが完了する。つまり造作なく大量の不正コピーが可能な時代になった。

 出版業界は不正コピー防止機能の導入により対抗しているが、対応した防止機能解除ソフトが登場して無力化する。購入者情報を特定して追跡できるように「電子透かし」を導入しても、「電子透かし」を除去する方法を解説したサイトが登場する。出版業界と不正コピー側との、果てのないイタチごっこが続いていて、現状では有効な対策は見い出せていない。

 海賊版サイトを摘発して閉鎖させることが出来れば効果は大きいが、サイトのサーバーを海外に置いているケースが多く、運営者の身元を特定するのは極めて難しい。

 96年をピークとして減少傾向が続く出版業界で、漫画の単行本は数少ない堅調推移組だった。それが16年には2千億円を下回り、17年には1700億円まで減少した。要因の一つが電子書籍への移行であることは確かだが、海賊版サイトによる浸食の影響も大きい。読者が海賊版サイトに流れるため、出版社によっては月に数億円もの被害を被っているようだ。

 出版社はもちろん、取次・書店にとってもドル箱的な有難味を発揮している漫画本の失速は、業界全体の大きな痛手だ。売上高が全国の書店の19%を占めるという漫画本の売り上げ減少は、ますます書店経営を追い込んで行く。出版業界は活字離れの進行によって、全体のパイが徐々に縮小するのに加えて、取次はアマゾンによる出版社との直接取引の拡大に対抗する術を持たず、ビジネスモデルの変革に晒されている。電子書籍の拡大、海賊版サイトによる著作権の侵害行為の横行も深刻さを増し、出版社、取次、書店のいずれにとっても直面する問題を解決に導く特効薬は見当たらない。知の源(みなもと)を襲う大きな変革の嵐は、日本に何をもたらすのか?