何度も繰り返されるエージェンシーとの電話のやりとり、長いリードタイム。マーケティングコンテンツを、特にビデオを自社で制作することで、こういった悩みを回避することができると、ユナイテッド航空(United Airlines)は学んだようだ。

昨年7月、ユナイテッド航空は統合デジタルエンゲージメントのシニアマネージャーとしてメーガン・ミッチェル氏を雇った。彼女はそれまで、パブリッシャーであるトラベルズー(TravelZoo)のソーシャルメディアとビデオの責任者だった。ユナイテッド航空に移った彼女の仕事は、拡大する自社によるソーシャルのためのコンテンツ制作を率いることだ。ミッチェルを加えた4人のスタッフがソーシャルコンテンツのディレクションを行う。しかしこの4人は、クリエイティブと戦略を取り扱う、さらに大きなクリエイティブコンテンツチームのクルーともなっている。後者のチームについては、具体的なスタッフ数は教えてもらえなかった。自社コンテンツに関わっているのが何人か、正確な数字を出すのが難しいとのことだ。

「我々は自社チームの能力を拡大させている。特にビデオに関して顕著だ。それによってソーシャルのスピードについていくことができ、ブランドの重要度を保つことができる」と、ミッチェル氏は言う。ユナイテッド航空の自社コンテンツ制作能力は、彼女が勤務を開始した月から本格的に拡大しはじめたという。

自社制作のメリット



自社で制作するビデオの数を増やすことで、スピードと効率性を上げることができたとミッチェル氏は言う。各種プラットフォーム上でユナイテッド航空が投稿するビデオの数は7月以降2倍以上に増えた。それによってビデオの再生回数は245%、再生分数は311%増加したという。社内でのコンテンツ制作を増やしたことでコストが増えたのか、それともコストが削減されたのか、についてはコメントをもらえなかった。

特にこの冬季オリンピックのために作られたキャンペーン「スーパーヒーローズ(Superheros)」は、制作スピードの改善が成果を見せている。エージェンシーのマックガリーボーエン(McGarryBowen)と共同で、Facebookとインスタグラム(Instagram)向けのソーシャルコンテンツを40本制作した。

ユナイテッド航空のFacebook上のフォロワー数は110万人、インスタグラムでは51万3000人となっている。ビデオの一部はユナイテッド航空の自社チームによってスピーディに制作されている。しかし、これによって彼らがソーシャルキャンペーンで起用しているワンダーマン(Wunderman)やメディアプランニングやバイイングで起用しているソーシャルコード(SocialCode)への案件が奪われているわけではないと述べた。

たとえば、アメリカ代表フィギアスケーターであるブレイディー・テンネル氏の一家は彼女のオリンピックでの勇姿を見るために韓国へ行くための資金を集めるクラウドファンディングページを開始していたが、これはユナイテッド空港にとってはポジティブなインパクトを与えられる絶好の機会だった。彼らを平昌まで移動させる、というサプライズギフトを成功させるためには素早く24時間以内にビデオを制作する必要があった。ユナイテッドはこれをすべて自社で行い、Facebookに投稿。結果、7万の再生回数を記録している

従業員を通してPR



ビデオ制作を社内へと取り込むもうひとつの理由は、ビデオを通して顧客に従業員を紹介するといったフレキシブルさだと、ミッチェル氏は言う。

ミッチェル氏は「ユナイテッド航空は大きなブランドだ。そして我々は、誰がサービスを提供していて、目的地に到着してもらう助けとなっているかを、顧客に知って欲しいと考えている」という。

Facebook上のアルバム・シリーズ「翼の後ろで(Behind the Wings)」を通して、従業員の物語をシェアしている。11月に開始されたこの試みでは、従業員の日常業務を画像で紹介。毎月、新しいユナイテッド航空の従業員の写真がアルバムでまとめられる。「我々の顧客が通常見れない部分を、従業員を通して見せることができる」と、ミッチェル氏は説明した。



ユナイテッド一家の視点で我々の内側をお見せする「翼の後ろで」新しいエディションの時間です。今回の主人公はニック・E。彼のインスタグラム(@nonrevnick)で知っている人もいるかもしれません。彼のユニークな視点がシェアされています。ランプサービス部で勤務して3年。ニックはあなたの荷物を必要な場所へと移動させ、飛行機が安全な状態であることを確実にします。また胴体の大きな飛行機を利用した、珍しい自動車の運搬に携わるのも、彼のお気に入りの業務です。DENランプで働いていないとき、彼は世界中に旅行に行っています。今年だけで、もう10万マイルも飛行しています。ロンドンは彼のお気に入りの場所のひとつです。


従業員はまた、自分自身のソーシャルアカウント上にコンテンツをシェアすることもある。パイロットのマイク・モーガン氏は上空から彼が撮影した写真をインスタグラムに投稿する。#mikeshotや#unitedjourneyというハッシュタグが使われる。

アメリカでは3月は女性の歴史月間となっているが、ユナイテッド航空はソーシャルキャンペーン「ウーマンユナイテッド」をローンチする予定だ。毎日、ユナイテッド航空で働く女性を紹介するコンテンツを投稿する。

炎上の過去との関係



ユナイテッド航空は、ソーシャルメディアでPR上の惨事を多く経験してきている。ピークは2017年4月だろう。ユナイテッド航空の従業員のために席を譲るように指示された乗客がそれを拒否、警備員が無理やり流血する乗客を引きずり下ろした姿がビデオでシェアされ大きな話題となった。オンラインではこれに対する批判と怒りが大規模に表明された。またレギングを着用していた女性の搭乗拒否、また精神的な支えとなる動物(エモーショナル・サポート・アニマル)として孔雀を連れてきた女性の搭乗拒否、そして危篤状態の母親に会うために飛行機に乗ろうとしていた女性のチケットのキャンセル、といった事件でも批判を浴びた。

ユナイテッド航空によると、昨年4月の事件がきっかけで従業員のストーリーをソーシャル上でシェアすることにしたわけではないという。この試みは2016年10月にデイナ・ブルックス・レイングラス氏が起用されたときから構想・開始されたとのことだ。レイングラス氏はユナイテッド航空初の「最高ストーリーテラー」という役職に就いている。彼女によって社内のクリエイティブチームが開始されたという。しかしミッチェル氏によると、「こういったストーリーを自社で制作し、外側へ発表し、ソーシャルの一部とすることを明らかな目標とした」のは、昨年の7月からだという。

Ilyse Liffreing(原文 / 訳:塚本 紺)
Image courtesy of United’s Instagram