コーポレートガバナンス・コード改定議論が決着した。新基準では、政策保有株式について一段の縮減が促される他、社外取締役の拡充、企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮などが強調される。(写真は、3月13日に開催された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第15回)の様子)

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 コーポレートガバナンス改革をより実質的なものへと深化させていくために進んでいたコーポレートガバナンス・コード改定議論が決着した。新基準では、政策保有株式について一段の縮減が促される他、社外取締役の拡充、企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮などが強調される。「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が3月13日に開催され、事務局(金融庁、東京証券取引所)が示した改定案を委員がおおむね支持したもの。今後、パブリックコメントで一般からの意見を聴取した上で、新コードとして発表する。
 
 コードの改定議論は、2015年にコーポレートガバナンス・コードを示し、多くの企業がコードの受け入れを表明しているものの、「日本企業の価値向上は不十分」という問題意識に立って行われた。委員からは、「コードの実効的な『コンプライ・オア・エクスプレイン』を促すため、コードの規定は、より明確に行動を規定する方がいい。コンプライ(受諾)しない企業が出てくるような方が望ましい。受け入れられないのであれば、堂々とエクスプレイン(理由を説明)すれば良い」という強い意見があった。
 
 コードの改定にあたっては、「例えば、・・など」といった、どのようにも解釈できる表現は削られた。また、従来は補足資料で説明されていた内容も、コード、または、補充原則として書き足され、具体的な行為を列挙するように改められた。
 
 たとえば、取締役会の役割・責務について「客観性・透明性ある手段に従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すベきである」「CEOの選解任は、会社における最も重要な戦略的意思決定であることを踏まえ、客観性・適時性・透明性ある手続きに従い、十分な時間と資源をかけて、資質を備えたCEOを選任すべきである」といった文言が書き加えられた。
 
 また、今回、大きく手が入った政策保有株式については、「上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである」「取締役会で個別の政策保有株式について保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証する」と書き加え、政策保有株式の縮減を促している。
 
 そして、株主以外のステークホルダーとして、新たに【原則2−6】「企業年金のアセットオーナーとしての役割発揮」という項目を設け、「企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行う」と定めている。
 
 さらに、独立社外取締役の有効な活用について、2名以上選任すべきという現コードの内容に加えて、「十分な人数の独立社外取締役を選任すべき」と重ね、大企業には3分の1以上の社外取締役を選任することを促している。また、「取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の指名委員会・報酬委員会など、独立した諮問委員会を設置することにより、独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである」と委員会の設置も促している。
 
 取締役会については、「ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである」とし、女性や外国人の取締役の登用を促している。
 
 一部の委員からは、「政策保有株式を一律に縮減すべきと受け取られかねないような表現にすべきではない」「企業年金は規模もさまざまでコスト負担能力等にもバラツキがあり、一律に運用の専門性を求められない」など、反対意見も出たが、参加する多くの委員からは、上記の改定を支持する意見だった。
 
 コーポレートガバナンス・コードは、スチュワードシップ・コードと対になって機関投資家と企業の対話を促し、コーポレートガバナンス改革を推し進め、ひいては、企業の持続的な成長と中・長期的な企業価値の向上を促すことが狙い。コードの遵守を通じて、経営陣は自社の資本コストを的確に把握し、事業ポートフォリオの見直しなど、経営環境の変化に応じた果断な経営判断を実施することを求めている。
 
 このコード改革は、「貯蓄から資産形成へ」を促す政策ともリンクしている。国民の資金を受託する運用会社と、投資先である上場企業が「持続的な成長と中・長期的な企業価値の向上」という目的に沿って実効のある対話ができれば、「失われた20年」のような長い停滞もなくなるだろうと期待されている。(情報提供:モーニングスター社)(写真は、3月13日に開催された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(第15回)の様子)