たかぎこういち『一流に見える服装術 センスに関係なく「最適な服」が選べるスーツスタイルの教科書』(日本実業出版社)

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スーツを着るとき、どんな靴を履いているでしょうか。いくら高価なスーツに身を包んでいても、足下が「コンフォートシューズ」と呼ばれるゴム底靴ではNGです。スタイルアドバイザーのたかぎこういち氏は「すべてを台なしにするほどの破壊力を秘めている」とまで言います。たかぎ氏が「仕事着」のポイントを解説します――。

※本稿は、たかぎこういち『一流に見える服装術 センスに関係なく「最適な服」が選べるスーツスタイルの教科書』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

■日本人は服装で損をしている

私は40年以上ファッション業界に身を置き、オロビアンコ、リモワ、マンハッタン・ポーデージなど海外のブランドを日本に紹介することから、個人的なファッションコンサルタントまで幅広く活動してきました。

また、「東京ガールズコレクション」や「デザイナーズ&エージェント」などの国内外のファッションイベントにも参画したり、展示会を主催したりしつつ、販売やバイイングも経験してきました。

仕事で海外と日本を行き来するなかで痛感したのが、仕事の能力はあるのに服装で大きな損をしている日本人ビジネスマンの多さです。いわば、服装への無関心が仕事の評価に対するハンディになっているのです。

冠婚葬祭で着るべき服が決まっているように、ビジネスのファッションでも「基本」があります。しかし、日本においてビジネスシーンでの服の選び方や着こなし方を学ぶ機会はめったにないことを考えると、基本を知らなくてもしかたがない、ともいえます。

ここでは、読者の皆さんの反面教師となるような、典型的なNGスタイルを紹介します。皆さんのまわりにもいるかもしれません。「人のふり見てわがふり直せ」ということで、参考になればうれしいです。

■清潔感に欠ける

あたりまえのこととはいえ、まずここに触れないわけにはいきません。不潔さやだらしなさを感じさせてはNGです。毎日同じ服。肩にフケが目立つ。袖の擦り切れたシワだらけのスーツは、肘やヒップがテカっている。靴が手入れされていなく汚いままだったり、かかとが極度に減っていたり。例をあげればキリがありせんが、いくら高価なスーツを着ていても、だらしない格好をしていてはすべてが台無しです。まずは清潔感に欠けていないか、気を配りたいものです。

■スーツのポケットが小物入れ代わり

スーツの上着の表側に付くポケットは、本来は飾りです。上着の内側には財布やペンなどを入れるポケットがちゃんとあります。しかし、胸ポケットにペンにボールペンに、なかにはメガネまで入れるという人を見かけることがあります。外側ポケットに週刊誌、夕刊紙、小型タブレットと小物入れ代わりにしている人も見受けます。

スーツのポケットを小物入れ代わりにすると、スーツ本来のシルエットを壊し、かつ相手に無神経な印象を与えてしまいます。スーツのポケットは最小限の物を入れるようにとどめましょう。

胸ポケットはポケットチーフのみ。上着の外側ポケットにはせいぜいスマートフォンや薄型の名刺入れまで。内側のポケットに入れるのは財布、名刺入れ、薄い手帳、ペンなど本来の入る物を収めます。

パンツのポケットはハンカチーフ、小銭入れ程度が適当です。厚みのある長サイフを後ろポケットに入れるのも避けましょう。必要なものはビジネスバッグに入れるのがルールです。「適材適所」です。

■柄スーツ×柄シャツ×柄ネクタイ

自分ではかっこいいと思いながらNGなファッションをしている人は、「オシャレ=目立つこと」と勘違いしている場合が多いです。

高級オーダースーツに多い珍しい柄物、変に凝りすぎた襟のデザインのシャツ、芸術的すぎるネクタイ、ましてやそれらすべてを組み合わせたスタイルはあり得ません。

ビジネスシーンの服装は相手がありきです。知性なきコーディネートは、仮に仕事ができたとしても悪い印象を与えます。

まず、ビジネスシーンにおけるスーツは無地のグレーかネイビーが基本の基本です。派手な色や柄のスーツはふさわしくありません。ビジネススタイルに求められているのは、整ったスタイルのなかの、さりげないおしゃれです。

スーツが目立たない柄物ならシャツは無地あるいは細いストライプに無地のネクタイ。無地のスーツに柄のシャツなら、ネクタイは目立たない柄。つまり無地を組み合わせに入れることで安心感が出ます。イラストのように「井の中の蛙(かわず)」にならないように。

■勘違いオシャレ

おしゃれに無関心の人の対極にありながらも、意外とNGなケースが多いのが「自称オシャレ大好き人間」という人が陥りやすい、勘違いオシャレです。先ほどの「オシャレ=目立つ」に近いタイプです。

おしゃれを勘違いしている人にかぎって、派手な色を選びがちです。派手な色の服を上手に着こなす上級者の方もいますが、本当に少ないです。

服装は全体のバランスが第一です。派手な色のアイテムは基本的にビジネスシーンに向きません。たとえば、派手なネクタイを好む人も見かけますが、ネクタイだけ目立ちすぎて全体のバランスを壊し、印象はよくありません。

第一印象は、文字通り一度しかチャンスがないのです。それがその人のすべてと理解されてしまっては取り返しがつきません。おしゃれと目立つだけとは次元の違うものです。一見すると目立たないのにディテールは凝ったおしゃれが、ビジネスシーンにおける正解です。

■自分の体形を考慮しない格好

ファッションには当然、流行があり、シーズンごとにパリやミラノで新しいコレクションがたくさんのデザイナーによって発表されています。はやっているからと、自分の体形を考えずに細身のスーツを無理やり着ている人をたまに見かけます。ファッション誌のイタリア人モデルのスナップをそのまま着る、などというのもそうです。

ビジネススタイルで大切なのは、自分に似合い、かつ相手からの印象がよいものです。流行を取り入れるのは悪いことではありませんが、ビジネススタイルにおいての優先順位は高くありません。流行のスタイルを取り入れるよりも、自分に似合っているかどうかが最初の判断基準です。

ビジネスは相手ありきという点からも、服装によって与える印象の優先順位は「信頼感」や「好感度」です。自分の体形・サイズに合ったシルエットを選ぶだけで、見た目の印象も大きく変わります。服装によって、自分自身の欠点をカバーするのか、強調(して失敗)するのかの差は想像以上に大きいのです。

■高級ブランドのロゴがまる出し

高級ブランドに妄信的で、これさえ持てば免罪符のようにいつでも同じアイテムを使っている人は少なくありません。自分の軸がない方がブランドの威光を借りて安心しているのです。

これみよがしのロゴが大きく描かれた財布やかばん。ベルトのバックルが大きなロゴマーク。ロゴを見ただけで、いかにも高そうだと値段がわかる商品群。ロゴマークとは違いますが、シャツの袖からのぞく金ぴかの輸入高級ブランド時計。なかにはダイヤモンドや宝石付きの装飾時計もあります。

これらはお金持ちのアピールなのかもしれませんが、ビジネスシーンにおいてどんな印象に映るでしょうか。成金趣味、センスが悪いという印象を与えるだけでなく、まっとうな仕事をしていないと思われてもしかたありません。華やかなパーティーならまだしも、ビジネスには似つかわしくありません。「虎の威を借る狐」です。

■足もとで台なし

靴は服装全体の印象を決める最も大切なアイテムです。

試しにスーツにネクタイを締めたスタイルで、足もとをレザービジネスシューズ、レザースニーカー、スポーツシューズ、サンダルと履き替えて鏡でご自身をご覧ください。想像以上に、違いが明白なはずです。靴とフォーマル度は密接に関係しています。

それと、多く見かけるのが日本独特のコンフォートシューズです。これは非常に残念ながら悪意なく広く普及しています。それに、履きやすいし、毎日履いても疲れなさそうです。しかし、この靴は誰が履いてもすべてを台なしにするほどの破壊力を秘めています。コンフォートシューズの他にも、過剰なデザインや、先が異常にとがっているシューズなどもNGです。

靴選びは大変重要です。履き心地だけでなく、見た目と全体のバランスを忘れずに。長く付き合える正しいデザインのシューズを選びましょう。「地に足が着く」です。

■姿勢が悪い

いくら高価なスーツを着用しても、姿勢が悪いとスーツは美しく見えません。

背筋を伸ばし胸を張りましょう。姿勢は自分で意識的に胸を張るくらいでちょうどよく、スーツも美しいシルエットになります。姿勢がよいと、自然に視線も前を向きます。文字通り、前を向くと心理的にもやる気や活力が生まれてきます。姿勢と視線は明確な相互関係があります。つい、うつむき加減になりやすい方は、意識的に姿勢を正すためにタイトなシルエットのスーツを着るのも効果的です。

また、実際に姿勢を矯正できるスーツの仕立て方もあります。年齢を重ねると姿勢がうつむき加減になります。前向きの人生を続けるためにも正しい姿勢でスーツを着用しましょう。姿勢を正すことは、レオナルド・ダヴィンチの言葉にも「体の中心、健康の基本、長寿の秘訣は背骨にある。姿勢の悪さは背骨をゆがめ、万病の元凶となる」とあるように大切です。

日頃から、以上のようなNGスタイルにならないように気をつけていれば、ビジネスパートナーにいい印象を与えられます。国内でも海外でも、能力や仕事の成果を正当かそれ以上に評価される、「得するビジネスマン」になれるでしょう。

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たかぎ こういち
スタイルアドバイザー
1952年大阪生まれ。服飾雑貨卸業を大阪で起業。その後、1998年に現フォリフォリジャパングループとの合弁会社取締役に就任して以来、オロビアンコ、マンハッタンポーテージ、リモワ、アニヤ・ハインドマーチなど海外ファッションブランドをプロデュースし、日本市場に広める。著書に『オロビアンコの奇跡』『LIKEABLE GUY STYLING FILE』(繊研新聞社)がある。

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(スタイルアドバイザー たかぎ こういち イラストレーション=田島重則)