コンテンツをAmazonに掲載してもらおうと数カ月にわたって頼み込み、パブリッシャーの望みがようやくかなった。Amazonはこの数カ月、少数のパブリッシャーでテストを行い、商取引に特化したパブリッシャーの記事がAmazonのウェブサイトに直接掲載されている。記事は、Google検索やAmazon内での特定キーワードによる検索を通じて見つけることができ、パブリッシャーの自社サイトと同じように買い物ができる。商取引専門のパブリッシャー、それも特に小規模なパブリッシャーやあまり定評のないパブリッシャーにとって、こうしたテストは、膨大な数の買い物客の目に触れるチャンスとなる。「大勢のオーディエンスにリーチするのに役立っていた」と、以前にAmazonと多様なコンテンツ構想に取り組んだ、あるパブリッシャーの幹部は語る。だが、そうした規模と露出に犠牲は付き物だ。Amazonは、コンテンツを掲載するにあたってパブリッシャーにライセンス料を支払っていない。代わりに、購入促進面でのパフォーマンスにパブリッシャーのコンテンツ料を連動させている。たとえば、ガジェット推薦サイトであるワイヤカッター(The Wirecutter)の旅行ガイドで推薦されているバックパックを読者が購入しようと決めた場合、そのバックパックをクリックすると、Amazon内の商品ページに誘導され、購入を完了できる。この購入によってワイヤカッターは手数料を受け取る。

分散型メディアの再来

この取り決めに通じている人物によると、手数料率は、取引がパブリッシャーのウェブサイトで行われた場合にAmazonが支払うのと同率だという。あるパブリッシャーによると、Amazonはコンテンツに対してライセンス料を支払っていないらしい。Amazonは、テストを行っていることは認めたが、パブリッシャーが受け取る報酬に関する質問には答えようとしなかった。一部のパブリッシャーにとって、このテストはもっと恐ろしいことを示唆している。すでに米国におけるeコマースへの支出額の40%以上を占めるAmazonが、同プラットフォーム内でサードパーティのレコメンドを探すことに顧客を慣れさせれば、アフィリエイトコマースをもっと管理できるようになり、アフィリエイトの手数料率を現行水準の何分の1かに引き下げる可能性がある。このプログラムの登場は、プラットフォームに管理を任せる分散型メディア戦略から、明らかに輝きが失われているタイミングでもある。「パブリッシャーはいつになったら学習するのか? 目標は、消費者との直接の習慣的な関係を築くことだ。自社サイトにアクセスする必要がないことを消費者に教えれば、それだけ業績が悪くなる」と、テストに参加していない商取引重視のパブリッシャーの幹部は語る。

Amazonのウェブサイト上のワイヤカッターの旅行用具ガイドのモバイル版スクリーンショット

 

Amazonは以前に、パブリッシャーのコンテンツで実験を行ったことがある。2015年には、ピュアワウ(PureWow)やアリュール(Allure)、トークショーの司会で有名になったオプラ・ウィンフリー氏のオー・ジ・オプラ・マガジン(O, The Oprah Magazine)など、ライフスタイル専門のパブリッシャーとクリスマスプレゼントのガイドを作成。この1年間、オー・ジ・オプラ・マガジンは、ウィンフリー氏が「最上級」と呼んでいる化粧品をまとめたショッピング可能なページでも、Amazonと協力した。オー・ジ・オプラ・マガジンの代理人は、Amazonとのコラボに関する質問に答えなかった。

現行のテストの実態

現在のテストはもっと控えめだ。たとえば、Amazonに掲載されているワイヤカッターの旅行ガイドは、既存の記事の簡略版で、ウィンフリー氏とのコラボによるオプションは一切追加されていない。Amazonとのコラボについて質問したが、ワイヤカッターは回答を避けた。Amazonは、コンテンツを追加すれば、自社サイトで商品を発見しやすくなると考えている、とパブリッシャーは指摘する。「商品の発見での貢献について、Amazonと何度も会話してきた。Amazonはレコメンドエンジンを増強する方法を模索している」と商取引専門のパブリッシャーのある幹部は語る。だが、複数のパブリッシャーによると、Amazonは、エージェンシーやマーケターの前では、詳細な情報をちらつかせて広告に支出させようとする一方で、パブリッシャーにはハイレベルな情報しか提供していないという。求めているコンテンツの種類やユーザーに対する働きかけの内容についての基本的な根拠など、「何らかの形で手引きしてほしい」と別の商取引専門パブリッシャーの幹部は述べている。

この取り組みの価値

その一方、そうした変遷のパターンが変化しはじめている可能性がある。Amazonと提携してきたあるパブリッシャーは、ブランド戦略チームを最近設置し、コラボをめぐってパブリッシャーと協力していると語る。この戦略で、パブリッシャーは複数分野でAmazonとの試験運用をもっとうまく調整できるようになるという。テストに参加していない別のパブリッシャーは、部門間のコミュニケーション改善をめぐる「機運」に気づいていたが、ブランド戦略では誰にも会っていないと述べている。最近まで、Amazonがパブリッシャーとともに行ってきたコンテンツのテストの多くは、社内の異なる部門の幹部によって独立して実行されていた。インスタグラム風写真共有プラットフォームであるスパーク(Spark)向けのコンテンツを制作するパブリッシャーに資金を提供するという決定は、Amazonアソシエイト(Amazon Associates)の幹部によって下されたが、商品に関する動画を制作したほかのパブリッシャーに資金を提供するという決定は、別の部門によるものだったと、この各テストに参加してきたパブリッシャーは述べている。万が一、Amazonともっと緊密に協力する機会が生まれても、パブリッシャーは、時間とエネルギーをさらに費やすだけの価値があるのかどうかだけでなく、Amazonに過度に依存することになっても、それだけの価値があるのかどうかも考えないといけないだろう。「そうした懸念は、明らかに、分散型ウェブでどの単一のプラットフォームでも直面する問題だ」と、あるパブリッシャーは語った。Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)