福田康夫元首相

写真拡大

決裁文書の書き換えに大激怒

 森友学園との国有地取引に関し、財務省は決済文書を書き換えたことを認めた。桁外れの衝撃に、今も事態は急激なスピードで動いている。その報道の多くで言及されているのが「公文書管理法」だ。日々のニュースを小まめにチェックしている向きでも、初耳だという方は少なくないに違いない。

 ***

 まずは日本経済新聞が3月11日の朝刊1面で報じた「決裁文書は複数存在 『森友』書き換えの疑い濃く 財務省、処分拡大へ」の記事を見ていただこう。公文書管理法について以下のような一節がある。

《決裁文書などの行政文書は公文書管理法に基づく政府の統一ルールがある。書き換えはただちに法律違反ではないが、同法の趣旨に反するとみる専門家は多い。内容次第では刑法上の罪に該当する可能性もある》

 少し脱線するが、刑法との関係を報じた記事の要点も紹介させてもらおう。出典は時事通信の「刑法抵触の恐れも=文書書き換えで専門家-森友疑惑」(3月7日)だ。

福田康夫元首相

【1】公文書管理法は、作成済みの文書の書き換えは想定していない。
【2】書き換えても直ちに同法に抵触することはない。だが刑法に触れる恐れは残る。
【3】公文書管理に詳しい弁護士は「作成権限がない人が公文書を変造したなら公文書変造罪、作成権限のある人だと虚偽公文書作成罪などが想定される」と指摘する。

 こうした背景から、公文書管理法に注目が集まっているわけだ。そして、この法律の“生みの親”とも言うべき存在が福田康夫元首相(81)なのだという。

福田元首相が安倍首相を公然と批判

 政治担当記者が解説する。

「かつて公文書の保存は、各省庁が独自にルールを作っていたのですが、昔は相当に杜撰だったようです。その問題に注目が集まったのは07年2月。安倍晋三首相(63)の第1次政権下で『消えた年金問題』が発覚したことがきっかけです。ところが安倍さんは同年9月に首相を辞任。次に福田さんが首相になるものの、参議院での首班指名では、当時、民主党の党首だった小沢一郎さん(75)が選ばれるなど、いわゆる『ねじれ国会』でした。福田さんは国会運営に苦しみ、読売新聞の渡邉恒雄主筆(91)の仲介で、自民と民主の『大連立構想』を進めます。ですが、結局は頓挫し、僅か1年で総辞職することに。そんな福田内閣の唯一といってもいい成果が、『公文書管理法』の制定を目指したことだったのです」

 しかしながら、福田氏も安倍氏と同じように、08年に内閣総理大臣を辞任。次期首相として麻生太郎氏(77)が就任した。

 麻生首相が在任中だった09年5月、朝日新聞は「公文書法案、修正協議へ 連休明けにも 福田氏、今国会に意欲」の記事を掲載した。《旗振り役の福田前首相が今国会成立に意欲をみせている》とし、以下のように解説した。

《福田氏のこだわりは長年のものだ。首相辞意表明後の昨年9月4日、自ら立ち上げた政府の「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」に出席し、「公文書は国民に政府が積極的に情報提供する場で、民主主義の原点だ」と力説した》

福田元首相は安倍首相の3選を支持?

 これほどまでに情熱を燃やした法案を、財務省を筆頭とする“第2次安倍政権”が踏みにじってしまったわけだ。福田氏の意志を継いで公文書管理法を成立させた麻生氏が現在は財相というのも、因縁を感じる。安倍首相に対して福田氏が怒り心頭に発したとしても全く不思議はない。

「福田さんも安倍さんも所属派閥は、岸信介派や福田赳夫派を源流に持つ『清和政策研究会』です。さらに清和会の小泉純一郎さん(76)が首相だった時、福田さんも安倍さんも官房長官として女房役を務めました。同じ釜の飯を食い、同じポジションを経験したわけです。だからこそ今回の公文書書き換え問題で、福田さんは安倍さんに怒り心頭だそうですよ。ある派閥幹部に『公文書に嘘やごまかしがあれば、国家が成り立たなくなる。安倍政権は何をやっているのか』と話していたそうです」

 福田元首相は安倍首相の3選を支持した、という逆の報道もあった。今年2月、産経新聞は「福田康夫元首相『3選でも4選でも』 安倍晋三首相・自民党総裁の党総裁選3選めぐり」(2月28日・電子版)との記事を掲載した。そこには以下のような一説がある。

《福田康夫元首相は28日、東京都内で講演し、9月の自民党総裁選での安倍晋三首相(党総裁)の3選の是非について『いいんじゃないですか。しっかりした人が出てこないんだったら3選でも4選でもしたらいい』と述べた》

「自分自身を客観的に見ることができる」

 ところが、この講演を聴いていた別の政治記者は、記事とは全く違う、むしろ正反対と言っていいニュアンスを感じ取ったという。

「発言そのものは、産経新聞が書いた通りです。ですが、喋っているトーンは真逆の印象でした。『どうぞ3選してください』という肯定的な要素はゼロで、もっと冷たく、突き放した口調でしたね。少なくとも私は福田さんの発言を『3選したければ、勝手にすれば』が本音だと受け止めました。『福田さんって、やっぱり安倍さんのことが嫌いなんだろうなあ』と腑に落ちたほどです」

 実際、いわゆる“ネトウヨ”的な人々は福田元首相を「媚中派」として批判する傾向がある。岸信介(1896〜1987)に仕えたのが福田赳夫(1905〜1995)だが、孫と息子の2人は、むしろ水と油と見たほうがいいのかもしれない。

 その証拠に、福田氏は安倍首相を痛烈に批判している。17年8月に福田元首相は共同通信のインタビューに応じ、東京新聞が「官僚が官邸の顔色見て仕事 福田元首相 安倍政権批判」との記事タイトルで報じている。その中に次のような一節がある。

《中央省庁の公務員の姿勢について「官邸の言うことを聞こうと、忖度(そんたく)以上のことをしようとして、すり寄る人もいる。能力のない人が偉くなっており、むちゃくちゃだ」と指摘。「自民党がつぶれる時は、役所も一緒につぶれる。自殺行為だ」とも述べた》

 福田元首相は退任時の記者会見で「私は自分自身を客観的に見ることができるんです。あなたと違うんです」と発言して波紋を呼んだ。

 当時は「記者の質問に逆ギレした」と受け止められたわけだが、本当は単に事実を発言しただけなのかもしれない。自分を客観視できるなら、それ以上に他人は冷静に見つめられるだろう。先のコメントは“予言”と評していいほど正鵠を得ているが、その客観視によって福田元首相は、安倍政権の“終わりの始まり”を予測しているのかもしれない。

週刊新潮WEB取材班

2018年3月14日 掲載