インバウンドに人気の民泊だが、各区の対応は分かれる(イメージ)

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 民泊事業者の届け出受け付けが15日に始まる。東京都内の各自治体は地域によって厳しい規制もあり、民泊を推進する政府との温度差が浮き彫りになった。規制内容次第で街づくりに影響するだけでなく、観光立国の礎となる第一歩を踏み出せず経済活性化の芽を摘むことにもなりかねない。2020年東京五輪・パラリンピックを控え、規制と推進のバランスをいかにとるか。各自治体の模索は続く。

都心2区は厳格
 厳しい規制となることを区長が明言したのは、東京都千代田区と中央区。千代田区の石川雅己区長は「23区の中でも厳しい対応にする」という。同区は保健福祉部の中に約10人程度を配置予定の「民泊指導課」を新設する。受け付けといった事務と違法民泊の取り締まりの二つの役割を担う。皇居や官公庁など国の中枢機関が集まる同区の地域の実情を踏まえ、業態制限を家主居住・不在型に加え、不在型は管理者の常駐型・駆けつけ型に分類。駆けつけ要件を満たさない管理者は全日不可とする。業態制限や区域制限がきめ細かい条例案とする。

 条例が可決した中央区は区内全域を制限し、土曜午後―月曜午後限定とした。区内全体に商業地域と住居専用地域が混在しており、仮に一部地域で制限を実施した場合には差異が生じることを考慮した。 

外国人集客狙う
 一方、土地の特性から受け入れに柔軟な姿勢の自治体もある。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると17年の訪日外国人旅行消費額(速報)は前年比17・8%増の4兆4161億円と年間値で過去最高を記録。外国人人口が4万人を超える新宿区の吉住健一区長は「合法であることを前提に、区内の商店街や魅力あるスポットを散策してほしい」とし、住居専用地域は金曜正午―月曜正午の限定とする。

 港区は外国人観光客の連泊需要に対応した。家主不在型では住居専用地域、文教地域では春、夏、冬の長期休暇を想定した計97日間を許可する。また、豊島区は用途地域が住宅と商業地域が入り組んでいる特性を踏まえ、区域制限・業態制限を設けない。集合住宅の場合、民泊事業を行っている部屋には標識の掲示を義務化するなど区民の安全・安心に配慮する。

両輪で柔軟対応
 都内のモノづくりの集積地である大田区と墨田区の対応は分かれた。大田区は国家戦略特別区域法に基づいた「大田区特区民泊」と「住宅宿泊事業法施行条例」の両輪で対応。墨田区は住居専用地域が存在せず、旅館業法が緩和していることから「旅館として、きちんと許可を得て区の指導監督下で運営してほしい」(山本亨区長)という。隣接区で浅草、上野といった国内有数の観光スポットを抱える台東区は区民の安心・安全を優先し、管理者が常駐しない施設は土日に限定する。また、都下では、八王子市も独自ルールを規定する。民泊を否定はしないが、条例を策定し、適正に管理していく考えだ。

 各自治体により対応はさまざま。用途地域の特性と住民の安全・安心のはざまで揺れ動く。新法ゆえ、政府の対応がどの程度かイメージがつかめず不透明感はぬぐえない。ただ、渋谷区は高齢者が自宅を民泊向けに改造・開放し、自身も国際交流を楽しみつつ、生きがいを感じるといった事例も存在し、民間の力が一つの光にもなっている。そういった良質な環境創出を加えた経済発展の実現可能性は、政府のスピード感をもった適切な判断の可否が左右する。

(文=茂木朝日、高橋沙世子、大串菜月、南東京・門脇花梨、西東京・松崎裕)