環境対策として電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)など新エネルギー車(新エネ車)へのシフトが世界規模で叫ばれる中、この分野で世界市場の過半数を占める中国市場の動向に大きな注目が集まっています。

 中国の新エネ車市場は様々な課題が指摘されながらも、2017年度も高い成長率を維持しました。ただし2018年度に関しては、政策転換による市場の再編および弱小メーカーの淘汰が始まると各方面から予想されています。

 そこで今回は、2017年の中国新エネ車、とりわけ比率の高いEV市場の各種統計を分析整理した上で、2018年度の展望について解説したいと思います。

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差が開いていくEVとPHVのシェア

 2017年における新エネ車の世界販売台数は前年比58%増の約122.3万台。これに対し中国市場の販売台数は同53.5%増の77.7万台でした。世界市場に対する中国のシェアは約57.4%となり、実質的に新エネ車世界市場の過半数を中国が単独で占めている状態となります。

 このうち乗用車は同72%増の約57.8万台です。内訳はEVが同82.1%増の約46.8万台、PHVが39.4%増の約11.1万台でした。

 なお、中国市場におけるEVとPHVの販売台数シェアについては、2015年は概ね2:1だったのに対し、2016年は3:1、2017年は4:1と年々差が開いています。この差は今後も開き続け、PHVはEVよりも伸び悩むと予想されます。

 同じ2017年における、中国製の新エネ車(乗用車)販売台数は同69.2%増の約55.6万台でした(下のグラフ)。2014年の約2.9倍増、2015年の約2倍増と比べるとさすがに成長率は下回るものの、2016年の約86%増に引き続き高い成長率を維持しています。仮にこの成長ペースを維持し、2018年も50%程度の成長を維持すれば、2020年までに年間100万台を突破するのも不可能ではないと言えるでしょう。

中国市場における国産新エネルギー車(乗用車)販売台数の推移


(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52531)

首位を追われるBYD

 続いてメーカー別、車種別販売台数ランキングを見ていきます。

 メーカー別では、世界的に著名な新エネ車メーカーであり前年度首位のBYD(比亜迪股份有限公司)が首位を堅持しました(下の表)。ただし、BYDの前年比伸び幅が10.93%であったのに対し、2位の北京汽車(北京汽車股份有限公司)は125.16%と猛追しており、その差はわずか約9000台にまで迫っています。年間販売台数が10万台を突破しているのはこの2社だけであり、2018年の首位争いがどのような結果となるかは見物です。

 車種別にみると、トップテンのうち10位の北京汽車のEUシリーズが唯一マイナス成長を喫しました。一方、同社のECシリーズは約18倍増と躍進して首位となっています。

 とはいえ、性能やブランド面で突出している車種はまだ存在していません。後述の要因もあって、今後この順位はいくらでもひっくり変わる可能性が高いでしょう。

極端に単価が低い輸出額

 次に貿易統計を見ていきましょう。

 まず輸出についてですが、中国の自動車の全輸出台数のうち新エネ車の割合は約10%を占めています。一方、輸出額の割合はわずか約2.7%に留まっています。これは、中国の新エネ車は輸出商品としてまだ単価が低く、国際市場での競争力をまだ持ち得ていないということを端的に示しています。

 こうした傾向は、中国の国・地域別EV乗用車輸出統計データでも示されています。

 2017年度のEVの最多輸出国・地域はバングラデシュで、約7.8万台が輸出されていますが、その1台当たり平均額は0.08万ドルときわめて低い金額に留まっています。バングラデシュ以外でも輸出上位国・地域の多くで0.1万ドルを切っています。

 このあまりにも低い単価は、おそらく実績作りやODAといった採算度外視の輸出結果によるものではないかと考えられます。

 逆に、1台当たり平均額の高い国・地域は、なんと1位が日本(4.38万ドル)、2位がシンガポール(3.05万ドル)となっています。一体、日本のどこの誰が中国製EVを輸入したのか、個人的には大いに気になるところです。

厳格化される補助金支給の基準

 以上、2017年における中国新エネ車市場を見てきました。続いて2018年の展望についてまとめていきます。

 2018年の大きなポイントは、中国政府によるこれまでの大盤振る舞いの補助金政策がより厳格化され、環境対策規制が動き出すことです。それにより本格的な市場競争が始まるとともに、弱小メーカーの淘汰が始まっていくと予想されます。

 これまで中国では、新エネ車購入に際して日本の数倍もの金額の補助金が政府から支給され、市場の発展に大きく寄与してきました。しかし2018年からは、補助金の支給基準が大幅に厳格化されます。

 下の表は易車網がまとめた、EV、PHVの連続航続距離性能に基づく補助金の金額です。連続航続距離が150キロメートル未満のEVへの補助金額は、2017年は2万元でしたが、2018年には0元になってしまいます。300キロメートル未満のEVも、2桁幅で引き下げられています。300キロメートル以上のEVは補助金が引き上げられ、とくに400キロメートル以上の高性能車種は13.7%引き上げられますが、全体としては大きく引き下げる方向です。

 また2018年からの新たな制度として、EVは搭載する車載電池の性能によって補助金額が調整されることになりました。車載電池のエネルギー密度がキロ当たり105Whを切るEVについては補助金を0元にする一方、160Wh以上であれば1.2倍に増やします。易車網では「この新制度により、エネルギー密度が低いリン酸鉄リチウムイオン電池は市場から淘汰される可能性が高い」と分析しています。

中国系と外資の本格競争時代へ

 中国政府はこのように補助金基準を厳格化すると同時に、新たな環境対策規制によって新エネ車市場のさらなる拡大を図ろうとしています。

 中国では「双積分政策」という環境規制が2018年に発効し、2019年より正式施行されます。これは、メーカーが販売する自動車の包括的エネルギー消費性能に対し、政府が示す基準を達成するよう促す政策です。

 大まかな仕組みはCO2の排出権取引と似ています。通年の包括的エネルギー消費性能が基準を超過したメーカーは、その超過分だけ基準を下回ったメーカーから補填するための権利を購入しなければならなくなります。必然的に、高性能な新エネ車の販売比率が高いメーカーほどより有利になる政策というわけです。

 この双積分政策は、外資を含め中国市場で事業を行う全自動車メーカーが適用対象となります。そこで各外資系メーカーは規制による負担を軽減するため、こぞって中国市場へのEV投入を加速させています。

 中国メディアの各種報道によると、広州汽車集団有限公司(広汽汽車)とトヨタ自動車による合弁メーカー、広汽豊田汽車有限公司(広汽豊田)も、SUVタイプのEV「ix4」を2018年中にも発売することが報じられています。広汽豊田に限らず、今年から来年にかけてドイツ系、アメリカ系の合弁メーカーも新エネ車を続々と投入する計画を打ち出しています。

 これまで中国の新エネ車市場は中国系メーカーのほぼ独壇場でしたが、外資系メーカーとの競争はある意味これからが本番と言えるでしょう。それに伴い、中国系メーカー同士の統廃合も進められていくと思われます。

 大きな流れを総括すると、中国政府は2018年から2019年にかけて、新エネ車購入への補助金を厳格化する一方、新たな環境規制を設けてEV市場をさらに拡大させようとしています。これはある意味、タイムリミットが明確に区切られたということもでき、各メーカーにとっては迅速な新エネ車の市場投入、技術開発が一層求められることとなるでしょう。

筆者:花園 祐