トヨタ「GRスープラ レーシング コンセプト」(筆者撮影)

数多くの新型車、コンセプトカーが出品された

3月8〜18日の会期で開催されているジュネーブ国際モーターショー(以下ジュネーブショー)には今年も数多くの新型車、コンセプトカーが出品されている。


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1905年から開催され今年で88回目となる春の風物詩的イベントについて、全貌の俯瞰図をクイックに紹介していこう。

ジュネーブショーは、大規模な自動車メーカーを持たない「自動車中立国」であり、西ヨーロッパの中央に位置するスイスで毎年3月に開催される伝統的なイベントである。ヨーロッパにおいては年が替わって初めて自動車業界が勢揃いするタイミングで、1年おきに開催される秋のパリ・モーターショーやフランクフルト・モーターショーと並ぶ重要イベントだ。

パリやフランクフルトとくらべて会場がコンパクトなことと、小規模な自動車メーカー、デザインスタジオ、チューナー(既存モデルの改良を手がける業者)にもスペースがバランスよく割り当てられていることから、取材陣の人気も高い。

2000年までイタリアで開催されていたトリノ・モーターショーが消滅したため、イタリアのメーカーやカロッツェリア(車体デザイン/製作会社)も焦点をジュネーブに合わせるようになった昨今は、艶やかなスタイリングを競うクルマたちの晴れの舞台としてさらに華やかさを増した印象がある。

まずはここジュネーブで初公開された量産市販車のブランニューおよびフルモデルチェンジから紹介していこう。

日本勢はトヨタが2種類のハイブリッド・パワートレインを採用した「オーリス」の新型を投入、レクサスもコンパクトSUVの「UX」を披露した。レクサスUXはトヨタC-HRを若干拡大したサイズのボディに、それぞれ新型のエンジンとトランスミッションを搭載している。


レクサスのコンパクトSUV「UX」(筆者撮影)

日本人の注目を最も集めるのは…

コンセプトカーに目を移すと、日本人の注目を最も集めるのはトヨタが放った「GRスープラ レーシング コンセプト」だろう。現時点では市販化が明言されていないものの、これがおよそ16年を経て復活するスポーツクーペ「スープラ」をベースとすることは明白だ。

「なぜ市販モデルの姿を先に明らかにしないのか」という疑問を持つ人も多いだろうが、量産メーカーであるトヨタにとって、スポーツカーは数を売るよりブランドのイメージ作りが優先される。

ドイツ勢ではアウディが「A6」、BMWが「X4」をフルモデルチェンジ。A6は全エンジンが48Vの電源システムにBAS(ベルト・オルタネーター・スターター:発電機を駆動に用いる)を組み合わせたマイルド・ハイブリッドとなる。メルセデス・ベンツは新型「AMG GT 4ドア・クーペ」に加え、先月発表された新型「Aクラス」を持ち込んだ。


アウディの「A6」(筆者撮影)

フランスからはプジョーが「508」を2代目へ移行させ、シャープなデザインの4ドア・クーペに路線変更。商用にも使われるパネルバンの「シトロエン・ベルランゴ」「プジョー・リフター」も新型に切り替わった。スウェーデンのボルボも新型「V60」をデビューさせた。V60には2種類のプラグイン・ハイブリッドが用意される予定だ。ジャガーは今年後半に発売する電気自動車「Iペース」を出品した。


プジョー「508」(写真はプジョーのサイトより)

価格1億円オーバーのスポーツカー

トヨタ「スープラ」をはじめ、今回のショーではスポーツカーが目立った。スポーツカー・メーカーからはマクラーレンが価格1億円オーバー、500台限定、800馬力のロードカー「セナ」を初めて一般公開した。フェラーリは488GTBをベースに、サーキットを意味するイタリア語を組み合わせた「488ピスタ」をワールドプレミア。エアロダイナミクスのさらなる向上と50馬力のパワーアップが図られている。


マクラーレンの「セナGTR」(筆者撮影)


フェラーリ「488ピスタ」(筆者撮影)

ランボルギーニもウラカンの高性能オープンモデル「ペルフォルマンテ・スパイダー」を導入した。小規模メーカーながら度肝を抜いたのは、クロアチアのリマック・アウトモビリがワールドプレミアした「C_Two」だ。合計4基のモーターによる四輪駆動車で、なんと最高出力は1914馬力、最高時速は412kmに達し、航続距離も650kmにおよぶというこのクルマ、150台を市販予定とのこと。


ランボルギーニ「ペルフォルマンテ・スパイダー」(筆者撮影)

よりグラマラスでスポーティなスタイリングを早くから消費者に印象づけようという戦略なのだろう。スーパースポーツの分野でもマクラーレンの「セナGTR」、アストンマーティンの「ヴァルキリーAMRプロ」といったサーキット専用車のコンセプト・モデルが視線を集めた。

電気自動車の出品も相次いだ

そのほかのコンセプトカーでは、昨年のフランクフルト・ショーに続いて電気自動車(EV)の出品が相次いだ。ディーゼル・ゲート(排ガス偽装問題)を経て徹底したEVシフトを敷くVWグループは、アウディ「eトロン」、ポルシェ「ミッションEクロス ツーリスモ」、VW「I.D.ヴィジョン」という3ブランドのEVを揃えた。

アストンマーティンは2021年までに送り出すという超豪華サルーン「ラゴンダ ビジョン コンセプト」を、全固体電池を用いたEVとして提案。ルノーからは都市部のシェアード・モビリティとして電動の完全自動運転車「EZ-GOコンセプト」が出品された。


アストン・マーティン「ラゴンダ・ビジョン コンセプト」(筆者撮影)

このジュネーブショーではEVが人気を集める反面、トヨタが欧州市場における乗用車へのディーゼルエンジン搭載終了を明らかにするなど、ディーゼルへの逆風は止む気配を見せていない。このほか市販を見据えた現実的なコンセプトカーとしてはスバルが「ヴィジヴ ツアラー」を、BMWが「M8グランクーペ」を投入した。


スバルの「ヴィジヴ ツアラー」(筆者撮影)

空飛ぶクルマ

最後にジュネーブショーでは見逃せない、イタリアのカロッツェリアについて紹介しておこう。ピニンファリーナは香港の企業と共同開発した電気駆動のグランツーリスモ「HK GTコンセプト」と、限定12台の燃料電池スーパースポーツ「H2スピード」の市販バージョンを発表。イタルデザインはランボルギーニ・エンジンを備える限定5台の「ゼロウーノ」のロードスター、そしてアウディおよびエアバスと共同開発した空飛ぶクルマ「Pop.Up Next」の改良版を披露した。


空飛ぶクルマ「Pop.Up Next」の改良版(筆者撮影)

そしてジョルジェット&ファブリツィオのジウジアーロ親子と組んだ中国資本のGFGスタイルは、御大ジョルジェットの母親の名を冠した高級サルーン「シビラ」のコンセプトカーを発表した。いずれも少量生産に的を絞った凄みはあるものの、外国資本に頼るゆえかパワーユニットが従来と異なるせいなのか、かつてのイタリアン・デザインに馴染んだ感覚からすると、少し慣れが必要に思えた。