カブス・ダルビッシュ有【写真:西山和明】

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先発投手補強が急務だったカブス、なぜダルビッシュに惹かれていったのか…

 昨季終了後にドジャースからフリーエージェント(FA)となったダルビッシュ有投手はカブスと契約し、開幕に向けて順調に調整を進めている。史上稀に見るスローペースとなった今オフのFA市場。カブスがダルビッシュとの契約を正式発表したのも2月13日と、NO1評価を受けるFA選手としては異例の遅さだった。

 ダルビッシュのカブス入りが決まるまで、果たしてどんなやり取りがあったのか。MLB公式サイトは「時間の経過とともにダルビッシュはカブスに完璧にフィットした」とのタイトルで特集記事を掲載し、セオ・エプスタイン球団社長の証言を元にオフの“攻防”の裏側を振り返っている。

 2016年に世界一に輝いたカブスは、昨季もワールドシリーズ制覇の本命の1つと見られながら、頂点に届かなかった。レギュラーシーズンは16年のように独走とはいかず、リーグ優勝決定シリーズではダルビッシュに抑え込まれた試合もあり、ドジャースの前に敗退。記事では「エプスタインもジェド・ホイヤー(GM)も、その他の誰しもが、カブスは投手陣をテコ入れする時が来たと意見の一致を見た」としている。

 若手が順調に育ち、カブスの野手陣は現在、メジャー屈指の陣容となった。打撃も守備も間違いなくハイレベルだ。一方、投手陣にはやや課題があると見られていた。さらに、ローテの軸の1人だったジェイク・アリエッタがFAとなったことで、先発投手の補強は急務となっていた。

「我々の投手陣たちは、おおよそ平均的であり続けている。コマンドや素晴らしいディフェンス。こういったすべてのことに関してうまくできていると思う。しかし、毎年球界では投手の質がどんどん良くなる中で、遅れを取りたいとは思わない」

 記事の中で、エプスタイン球団社長はこのように証言。投手の補強に動く必要はあったが、FA市場でNO1とされていたダルビッシュを獲得するには大型契約が必要だったため、やや及び腰だったという。「交渉は喜んでするが、正直のところ、おそらくフィットしないだろう」という考えだった。

「我々はダルビッシュをこの上ないタイミングで獲得できたと思う」

 ところが、本人と面談をする中で、カブスが次第にダルビッシュに惹かれていったという“過程”が、記事では描かれている。エプスタイン球団社長が「彼との契約に踏み切る前に、彼についてもっと学ぶ必要がある」と代理人に伝えたところ、答えは「それは良かった。彼(ダルビッシュ)も多くの時間を共にし、その球団のことをしっかりと把握するまではどことも契約しないからね」というものだった。同球団社長は「それは興味深いことだったよ」と振り返っている。契約の金額だけを見るのではなく、球団について深く知ってから移籍先を決めたい。この本人の考えに感銘したというのだ。

 ダルビッシュが渡米したのは、日本人選手の評価がやや下がっていた2012年。当初はチームの成績よりも自身が結果を出すことにこだわり、日本を背負って立つことに不安を感じていたことを、カブス首脳陣に素直に打ち明けた、と記事では紹介。昨年のワールドシリーズでの2試合連続KOでドジャースを失望させてしまったという辛い経験から、ダルビッシュが野球への向き合い方などを変えた、とも指摘している。そして、その後のオフで「彼は優勝するチャンスが大いにあるチームを追い求めたのだ」という。

 今はチームの勝利、そして世界一を強く望んでいるというダルビッシュ。エプスタイン球団社長はMLB公式サイトの取材に対して「彼は今、残りのキャリアをワールドシリーズ制覇、そして優勝チームにおいて重要な役割を果たすために献身する立場にいるんだ」とした上で、その知性、フィジカル面を絶賛。「彼のメンタルにおける能力がフィジカルのそれと釣り合うようになったら……彼がどれほど優れているか誰にもわからない」「だから今、ハッピーだと言っておくよ。我々はダルビッシュをこの上ないタイミングで獲得できたと思う」と大きな期待を寄せている。

 ダルビッシュが加わったことで、カブスの先発ローテーションはメジャー有数の陣容となった。実力通りの結果を残せば、悲願の世界一は確実に手の届くところにある。(Full-Count編集部)