健康・環境システム事業本部 メジャーアプライアンス事業部 冷蔵庫商品企画部の森元雄課長

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 シャープの白物家電のキーワードといえば“AIoT”。AIとIoTを組み合わせた造語は徐々に業界内では浸透しつつある。しかし、エンドユーザーに対しての認知はまだまだこれからという段階だ。スマート家電元年が叫ばれてはいるが伸び切れていない日本市場で、シャープは普及の足がかりをつかめるのか。健康・環境システム事業本部 メジャーアプライアンス事業部 冷蔵庫商品企画部の森元雄課長に、AIoT製品群の中でも肝になるであろう冷蔵庫のAIoT戦略を聞いた。

●AIoTは売り場に浸透するか 課題と対策



 AIoT機能を謳う冷蔵庫の1号機は2017年3月に発売した「プラズマクラスター冷蔵庫 SJ-TF49C」。インターネット上のクラウドと連携し、献立提案や買い物メモといった暮らしのサポート機能を備えているのが特徴で、使い続けることでユーザーの生活リズムを学び、最適なタイミングで能動的に提案する。“保存”という目的に特化してきた冷蔵庫の再定義ともいえる意欲的なモデルだった。

 森課長は「冷蔵庫の食材を保存する機能や省エネ設計は成熟しており、積極的な買い替え目的ではなくなりつつある。『なにか新しいことができる』というワクワク感を醸成していかなければならない」とAIoT機能の意義を語る。シャープの調べによると、10年以上冷蔵庫を買い替えていないユーザーのうち、約76%は「買い替えたいと感じている」という。それでも、買い替えが進まないのは、最新モデルに変えることによるメリットを見出していない、もしくはそのメリットを認知していないということだ。

 「SJ-TF49C」は新しいメリットを創出することで、こうした状況を打破する第一歩となったが、“認知”という部分では不十分だった。「『SJ-TF49C』は独立したシリーズだったので、売り場で浸透するには至らなかった。見た目も通常の冷蔵庫と大きな差異がなく、機能が伝わりづらかった」(森課長)。

 もちろん「SJ-TF49C」はプロトタイプという位置づけでもあったので、反省を生かして二の矢をすぐさま放った。17年10月に発売したAIoT機能搭載の第2弾は、従来から展開する「GX」シリーズの「SJ-GX55D」。冷蔵庫のドアには思い切って液晶ディスプレイを取りつけた。「液晶ディスプレイを設置するのは、社内でも議論になったが、機能を知っていただくために決断した」と森課長。スマートフォンのようなデザインも、ユーザーが直感的に操作できることを意図してのものだ。

 液晶ディスプレイには、節電や製氷、冷凍といった庫内の設定に加えて、クラウドサービス「COCORO KITCHEN」が提案する献立の候補や食材の調理方法が表示される。目で確認することで、使いやすさがより向上した。

 また、スマートスピーカーの「Google Home」に対応したことで、コミュニケーションの“入口”も広がっている。

 シャープは今後、AIoT機能に対応したラインアップをさらに拡充していく予定。現在は「ワーキングママ」というターゲットを設定しているが、可能性は一つではない。森課長は「シニア向けや単身者向に特化することも十分に考えられる。重要なのは機能ではなくシーン提案。ユーザーの属性に合わせて、メリットを感じるシーンを想起してもらいたい」と訴求の切り口を語る。冷蔵庫はどんな家庭でも生活の中心にある家電だ。接触頻度が多いからこそ、新しいソリューションが生まれる余地は多そうだ。

 森課長は「AIoT冷蔵庫は購入したときが『100』でも、そこからアップデートで『101』『102』とできることが増えていく。いつ購入しても新しい体験を提供することができる」と、常に進化していくという特徴も強調する。これは新しい製品ゆえに様子見する顧客の購入を後押しするポイントにもなる。シャープが冷蔵庫同様にAIoT化を推し進める別カテゴリの家電との連携はこれからだが、実現に向けた動きは加速している。今はバラバラの“AIoT製品群”がまとまったとき、森課長のいう「100」は「110」「120」と利便性を深めていくだろう。(BCN・大蔵 大輔)