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もくじ

ー 水素燃料電池車 ふたつの見方
ー ミライを長期テストする理由
ー ミライ納車 第一印象は
ー テスト車について
ー テストの記録

水素燃料電池車 ふたつの見方

不思議なことに、水素燃料電池車(HFCV)へのひとびとの反応にはあまりにも差がある。われわれの長期テスト車勢に加わったばかりで、これから6カ月を共にする走行4800kmの白いミライもそうだ。

「この変な格好のクルマは水素で動き、有害な排気ガスを全く出さない」と、先日のある集まりでふれてみた。するとあるひとたちは、すぐさま「ロンドンには水素ステーションがほとんどないではないか」という月並みな事実を返し、一笑に切りすてた。

かと思えば、まるで永久機関という神様からの贈り物が目の前に舞い降りてきたかのように目を輝かせるひとたちもいた。水というありふれた物質から水素を取り出し、その水素を使って発電し汚染物質を出さずに走るクルマ―うん、確かに魔法だ。

HFCVが実際にエンジン車よりも静かで滑らかに走るとわかれば、なおさらだ。

わたしはいえば、後者の立場だ。

56年前、初めて買った自動車雑誌で水素燃料電池の有用性を書いたおとぎ話のような記事を読んで、これは魔法だと思った。実はあまり知られていないが、排気ガス禁物の工場などで使われる室内用電動フォークリフトはもう水素燃料電池で動いていたりもする。もはや技術的には新しくも何ともないのだが……。

ミライを長期テストする理由

イギリスにほんのわずかな台数しかないミライをなぜ長期テスト車に迎えたかといえば、プリウスがハイブリッドで成し遂げたことをミライが再現するというトヨタのお偉方の言い分がいかほどのものか、それを見きわめるためだ。

思えば、1997年にデビューした初代プリウスという変わり種は、発売されたとたんに次々と不可解な注文を突きつけられた。サスペンションがドタバタするとか、スタイルがまるでジャガイモだ、などは言うまでもない。その頃は買ってみようなどとは思いもよらなかっただろう。

しかし2003年頃には売れはじめ、そして伸びていった。いまやプリウスの累計販売は世界で1000万台に達し、一方でトヨタの役員はミライが同じ道をたどるだろうと主張しはじめている。

そういうクルマが、おまけにこれだけ未来的な風貌とあれば、もっと深く知りたくならない方がおかしい。

ミライを長期テストに供したいと申し出て、ゴーサインが出たのはクリスマスも近い頃だった。トヨタの販売責任者ジョン・ハントが多忙な中、1日を割いてHFCVの手ほどきをしてくれた。彼は従来からのトヨタ車を法人向けに量販する立場だが、自身はHFCVにぞっこんなのだ。

ジョン・ハントによれば、購入するには6万1500ポンド(893万円)の価格を支払う必要があるし、燃料費込みプランの月額750ポンド(10万9000円)もたぶん支払うことになるとのこと。

ご存じのとおりミライは700気圧の圧縮水素を60ℓの燃料タンクに収めるが、その重量は満タンでも5kgにすぎない。同じ60ℓで40kgにもなるガソリンとは大違いだ。

ミライ納車 第一印象は

燃料補給の機会がないチョイ乗りは経験があるが、これからはそうはいかない。ロンドンの水素ステーションはテディントン、ヒースロー、ヘンドンそしてレイナムのたった4カ所。やっとまもなく、コバムにあるハイウェイM25号線の広いサービスエリアに民間向けのステーションができるという状況だ。

ジョン・ハントとは、AUTOCAR編集部のあるトゥイッケナムで落ち合った。そこから、長期テスト車ともう1台のミライでまず近くのテディントン、次にやや離れたヒースローの水素ステーションへ向かう予定をたててくれた。

ミライを運転した感じは日産リーフにけっこう近い。ゼロ発進から最大トルクが出るのがそうだし、時にコンプレッサーがかすかにカタカタ音を立てはするが、ノイズがほとんどないのもそうだ。即座に望むだけのトルクを出してくれるのも同じだ。

たまにロードノイズが目立つのは、他の音で紛らわされることがないからだろう。4.9mにもなる全長と2名乗車で2t近くにもなる車重が効いて、乗り心地は非常に柔らかく、揺れもやさしく鎮まる。

水素の補充は簡単だ。クルマとポンプがしっかり接続されたことを確認しないといけないことと(700気圧もの高圧、しかもマイナス40℃で流れるのだ)、ハンドルを握らなくてよいことを除けば、ガソリンを入れる作業と大して変わらない。電気自動車の充電とは大違いだ。

航続距離も大した心配ではない。トヨタは水素燃料5kgで「480kmも」走れるという。

距離を伸ばす秘訣はただアクセルを踏むのではなく、すきを見て回生ブレーキでエネルギーを取りもどし、小容量の駆動用バッテリーをなるべく充電できるよう常に気を配って運転することだ。

それでも、ミライは本質的にシンプルで、静かで、極めて洗練されている。変速しないのにトルクもあふれんばかりだ。これだけ静かでスムーズだとハードな運転をする気も起こらないが、実際の性能は最高速度が179km/h、0-96km/h加速も9.6秒とまずまずだし、操縦安定性もなかなかだ。

まあ今のところ、周りのひとたちは気づき始めているようだ。われわれのミライがいくら走ってもテールパイプから汚いものを出さないことと、こんな目新しいクルマを所有し走らせる喜びを記事にすることがこのクルマの人気に少しでもつながるかもしれないことを。

テスト車について

モデル名:トヨタ・ミライ
新車価格:6万1500ポンド(893万円) 政府補助金4500ポンド(65万7000円)を差し引いたもの
テスト車の価格:6万1500ポンド(893万円)

テストの記録

燃費:80-88km/kg H2(約9.2km/ℓ)
故障:無し
支出:無し