Snapchat(スナップチャット)のテレビ番組がほしい?Snapchatは今年、動画番組の数をおよそ倍の80番組へと増やす予定だ。なかには台本のあるシリーズ物も含まれている。これにともない、同社は番組の供給元を従来のテレビネットワーク企業だけでなく、デジタルパブリッシャーやレガシーパブリッシャーにまで広げている。複数の情報筋によると、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)とコンデナスト・エンターテインメント(Conde Nast Entertainment)も、それぞれSnapchatに少なくとも1番組を提供しているという。2月第3週に、エンターテイメントとポップカルチャーのニュースサイトであるアップロックス(Uproxx)はSnapchatの新番組を発表した。エンターテイメントスタジオのSTXデジタル(STXdigital)と共同制作の同番組「ブローラー(Brawler)」は、3月16日に放送開始。昨年はほかにもパブリッシャーの番組が生まれた。たとえばバースツール・スポーツ(Barstool Sports)は大学のカルチャー番組「フィフティイヤー(Fifty Year)」を、ビルボード(Billboard)は音楽のシリーズ番組「アーティストパス(Artist Pass)」を、Vice Mediaはデート番組「ハングリーハーツ・ウィズ・アクションブロンソン(Hungry Hearts with Action Bronson)」を提供している。

前向きなパブリッシャー

Snapchatの関係者に事情を聞いたところ、グループ・ナイン・メディアやコンデナストのようにSnapchatのディスカバー(Discover)で複数チャネルを持つパブリッシャーの場合は、こうしたディスカバーの雑誌スタイルのチャネルを動画番組で置き換えることはないという。むしろ、動画番組はディスカバーでこれまで以上にプロフェッショナルな製作コンテンツを提供しようとするスナップ(Snap)社による取り組みの一環だ。この取り組みとして、ほかにもSnapchatアプリ内でメディアや有名人のコンテンツと一般ユーザーの投稿を分けるようにデザインを変更している。グループ・ナイン・メディアのCEO、ベン・レーラー氏は次のように語った。「Snapchat向けに番組を製作できるのを嬉しく思っている。Snapchatディスカバーにおけるナウディス(NowThis)やドードー(TheDodo)といったチャネルでは、オーディエンスやエンゲージメントの目覚ましい伸びが続いているし、昨年は(Snapchatディスカバーの番組)「シャーク・ウィーク(Shark Week)」も素晴らしい結果を生み出した。Snapchatとこれまで以上に協力していくとともに、さらに多くの番組制作を行っていきたい」。2016年に番組への取り組みをはじめてから、Snapchatに番組を供給してきたのは、大半がテレビネットワークや大手メディア企業であり、デジタルパブリッシャーはディスカバーで雑誌スタイルのストーリーを提供してきた。スナップ社がパブリッシャーに動画制作をさせたがらなかったというわけではない。だが、これまでSnapchatで配信されてきた40の番組の大半は、NBCユニバーサル(NBCUniversal)やA+Eネットワークス(A+E Networks)、ESPNといった企業が製作している。そしてスポーツリーグの番組も少なくない。こうした番組の数は、今年さらに増える見込みだ。

心配のタネは補助金

「(製作における)さまざまな段階にあるたくさんの番組について話し合いを設けている」と、アップロックスのCEO、ベンジャミン・ブランク氏は明かす。「大事なことは、彼らが求めているものと、当社が創りあげたいものがマッチするかどうかだ」。Facebookのニュースフィード改変にパブリッシャーたちは動揺している。スナップ社がパブリッシャーの番組を増やすのは、そんなパブリッシャーの機嫌を取ろうとしているためだ。Snapchatについてパブリッシャーとほかのデジタルメディアの製作者が抱える心配のタネは、SnapchatからはFacebookのWatch(ウォッチ)のように補助金を受けられないことだ。製作企業は自社で番組資金を捻出し、スナップ社と番組の広告収入の半分を分け合う。

各社さまざまな思惑

これを問題視していないテレビネットワークもある。既存のメディアにより若い世代の視聴者層を取り込むためのマーケティング媒体としてSnapchatを捉えているからだ。実際、この形でうまくいっているテレビネットワークも存在する。E!が週に3回放送している番組「ランダウン(The Rundown)」は、1月には3000万人のユニークビューワーを記録した。また同月に、NBCニュース(NBC News)が日に2回放送しているニュース番組「ステイチューンド(Stay Tuned)」は2800万人、ESPNの「スポーツセンター(SportsCenter)」は1750万人のビューワーを記録している。

Snapchatの番組視聴者 Source:Snap

一方、Snapchatからの収益が少ないため、番組の製作継続を正当化できないと考えるテレビネットワークも存在する。たとえばCNNはデイリーニュース番組「アップデート(The Update)」を12月に打ち切っている。パブリッシャーにとってSnapchatの番組でいかに収益をあげるかはテレビネットワーク以上に重要な問題だ。パブリッシャーの多くはNBCユニバーサルやESPNと違って、収益として還元される保証もなしにソーシャル動画番組に投資できるだけの資産を持っていない。

どのように向き合うか

ディスカバー向けに番組の営業を行っているとあるパブリッシャーは、「スナップ社が(番組に)資金を出さないということは、同社と仕事をすべきか、またどういうときにすべきかの優先順位を把握しなければならないということだ」と語った。だがそれでも、Snapchatという他企業以上に若い層にリーチできるプラットフォームでの番組配信という魅力は大きなままだ。最近、グループ・ナイン・メディアやハーストデジタルメディア(Hearst Digital Media)といったパブリッシャーが、配信プラットフォーム向けの番組制作を専門とするあらたな部門を立ち上げたのもこうした魅力があるためだ。バースツールスポーツのCEO、エリカ・ナーディーニ氏は、同社が「フィフスイヤー(Fifth Year)」の製作を継続している大きな理由のひとつに、このようなあたらしい視聴者を獲得する機会があることを挙げている。大半のプラットフォームにおいて、バースツールのオーディエンスの7〜8割は男性だ。だがSnapchatの「フィフスイヤー」では男性女性それぞれ半分ずつに分かれている。「Snapchatのおかげでこれまでと異なる人たち、素晴らしいオーディエンスを惹きつけることができた」と、ナーディーニ氏は語り、次のような体験を明かした。「昨秋、24の大学を訪れたが、どの大学でも学生たちが番組パーソナリティーの写真を撮ってSnapchatに投稿していた。あれを見て、当社にとって重要なオーディエンスである大学生が利用しているプラットフォームで番組をもっていることを実感した」。

第二、第三の配信権

「フィフスイヤー」のファーストシーズンは13話からなっている。そしてスナップ社によると、1話あたり平均で300万人の視聴者を獲得しており、バースツールは収益を上げることに成功している。スナップ社はウェンディーズ(Wendy's)と1シリーズのスポンサー契約を呼び込んでおり、同社がバースツールの新しい広告主となった。同様に、ブランク氏によると、アップロックスの「ブローラー」も広告スポンサー1社と契約しており、ほかにもいくつかのスポンサーが加わる可能性があるという。同氏は広告主の名前は明かさなかったが、番組の広告販売に関してはスナップ社が先導しているとのことだ。制作側からするとスナップ社が番組費用を負担しないことは不都合だが、制作側が番組の所有権を保持できるため、こうした取引での経済性を向上させる余地もある。たとえばアップロックスは製作パートナーであるSTXデジタルとの合意に「ブローラー」をスナップ以外にも広げていくことを盛り込んでいる。これには、ほかのプラットフォームや、番組フォーマットを利用して他番組を作りたいバイヤー向けの番組ライセンス提供などが当たる。ブランク氏は、「当社は他企業に製作を外注するだけの制作会社ではない」と述べ、次のように語った。「当社は社内で番組制作を行っている。これは将来のチャンスに活かせるような自社資産を確保することにもつながる。もし番組が盛り上がりを見せたときに、第二、第三の配信権を確保できる」。Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)