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もくじ

ー 「ヴァルキリーの兄弟」 属するのは新たなリーグ
ー きっかけはヴァルキリーの成功 エンジンはV8
ー さらなるレッドブルとの協業モデルも登場へ
ー 488のライバルも開発中 AMGとの協業も選択肢
ー ますます成長 才能を惹きつけるには創造性がカギ

「ヴァルキリーの兄弟」 属するのは新たなリーグ

アストン マーティンではレッドブルF1チームとの間でこれまで極秘扱いだったプロジェクトを進めている。ラ フェラーリとマクラーレンP1を上回るミドエンジン・モデルの発売に向けた動きをAUTOCARが明らかにしたのだ。

開発チーム内で「ヴァルキリーの兄弟」と呼ばれているこのモデルは、100万ポンド・クラスのハイパーカー市場に新たな基準をもたらすものとして開発が進められており、既に発売されているライバルたちがモデルチェンジを迎える前の2021年ころの発表を目標としている。

ラ フェラーリもマクラーレンP1もその発表は2013年であり、両モデルとも生産は終了しているが、通常こういったハイパーカーのモデルチェンジには時間が必要となる。エンツォとラ フェラーリの間には11年のギャップがあり、今回も同じような空白期間が繰り返されるとすれば、アストン-レッドブル・モデルが彼らに先んじて市場に登場することになるだろう。

アストン マーティンCEOのアンディ・パーマーは、プロジェクトの存在を認めたうえで、「そうです。ヴァルキリーも含めれば、現在われわれにはふたつ以上のミドエンジン・プロジェクトが存在します。この新しいプロジェクトには、スタイリングの独自性やエンジニアリング能力といった、われわれがヴァルキリーから得た全てのノウハウを投入して、市場の新たなセクターへと送り出すことになるでしょう」と語っている。

「ヴァルキリーの兄弟」の名が示すように、レッドブルとともに第2のウルトラ・ハイパフォーマンスカーを作りだすというチャンスは、アストンとエイドリアン・ニューウェイ率いるこのF1チームとの第1のコラボレーションの成功がもたらしたものだ。

ただ単にハイパーカーとして定義されてはいるが、ヴァルキリーが見せるパフォーマンスは、これまでに登場したいかなる量産モデルをはるかに凌駕するものであり、ラ フェラーリやマクラーレンP1、さらにはマクラーレン・セナやいずれ登場するであろうセナGTRといった超弩級のクルマたちが属する、全く新しいリーグにこのクルマを位置付ける。

きっかけはヴァルキリーの成功 エンジンはV8

限定モデルのヴァルキリーと、そのサーキット専用モデルであるAMRに対しては、非常に多くの需要があった。200万ポンドから300万ポンドというプライスタグを掲げ、最初のモデルがオーナーの手元に届けられるには2019まで待つ必要があるにもかかわらず、両モデルとも既に完売となっている。

だからこそ、アストン マーティンはレッドブルF1チームとの協業を拡大して、この100万ポンドのニューカー・プロジェクトをはじめることにしたのだ。

この「ヴァルキリーの兄弟」の価格は今のところ明らかにされていないが、フェラーリ488のライバルとして2021年登場予定のアストン主力モデルと基本レイアウトやその他多くを共有するものの、このモデルには、ミドエンジンのスーパーカー市場に対して、アストンがもつ技術を誇示するため、特別なモデルとして登場することが予想されている。

つまり「ヴァルキリーの兄弟」は、希少性を高めるため、極めて限定された数しか販売されないだろうということだ。ラ フェラーリの場合には、のちにオープントップ・モデルのアペルタが210台のみ生産されたものの、その生産台数はごく限られたものだった。

両モデルとも、新カーボンファイバー製モノコックを使用した完全新設計のシャシーと、ヴァルキリーの製作過程で開発されたノウハウから創り出された、よく似たアルミニウム製サブフレームが使われることになる。

一方で、「ヴァルキリーの兄弟」に使用されるパワートレインについては、アストンがハイパーカー・プロジェクトのショーケースとして、2021年ころの登場を予定している効率よりもパフォーマンスを優先した電動パワートレインを使用するのではないかという憶測があるものの、パーマーはなにも明らかにしていない。

もちろん、ヴァルキリーに搭載される1014ps以上を発揮する6.5ℓV12エンジンの開発をコスワースとともに進めているように、株主でもあるメルセデスのAMG部隊との共同開発も可能なオプションではある。いずれにせよ、そのエンジン形式はV8となることが予想されている。

さらなるレッドブルとの協業モデルも登場へ

さらに、長くマクラーレンで開発ドライバーをつとめ、ヴァルキリーの最終仕上げを行ってきたクリス・グッドウィンが、昨年末により長期の任務としてアストンとレッドブルの協業における要のポジションに着いたことも、このクルマの開発を裏付ける。このふたつのプロジェクトは、もし彼が望めば、ル・マンへの参戦を含めたレースの最前線にグッドウィンが戻って来るのではないかという見方を強めてもいる。

「ヴァルキリーの兄弟」は、アストン マーティンとレッドブルが、ともに長期に渡って多くのロードカー・プロジェクトに乗り出すのではないかとの憶測にもつながっている。アストンのトップであるアンディ・パーマーはAUTOCARに対して、第2のプロジェクトの一環として、ミルトンキーンズにあるレッドブルの拠点に130名のスタッフがフルタイムで働くキャンパスを設けたことを明らかにしている。

「われわれはレッドブルとともに非常に深い根をはりつつあります」とパーマーはいう。「このキャンパスはわれわれの将来的なパフォーマンス・デザインとエンジニアリングセンターのベースであり、ここで行われる開発作業に完ぺきなヒントを与えてくれる存在です。もしかしたら、われわれのオフィスがエイドリアンのすぐ隣だということが、われわれの狙いを最も雄弁に語っているのかも知れません」

アストンでは、2021年の発売を予定しているフェラーリ488のライバルモデルの発売に備えて、多くのスタッフを採用している。開発作業自体は、フェラーリから最高技術責任者としてアストンへ移籍してきたマックス・シュヴァイによって進められているが、パーマーはこのクルマの開発について、マラネロの最新動向を注意深く観察しながら行われていると語る。

488のライバルも開発中 AMGとの協業も選択肢

「マクラーレン720Sのほうがドライバーズカーとしては素晴らしいという意見もありますが、われわれのターゲットはフェラーリです。なぜなら、このフェラーリには最も優れたパッケージがあるからです」とパーマーはいう。

「このフェラーリは驚くほどのダイナミクス性能と、だれもが見惚れてしまうようなルックスという、すべてと言っていいほどのものを併せもっており、とりわけ、常にわれわれが口にする、すべてのアストンはクラス最高のモデルでなければならないという点でも、このクルマは目標なのです」

「デザイン・チーフのマレク・ライヒマンとマックス・シュヴァイ、それに彼らのチームにとっては、もちろんチャレンジですが、彼らには既に素晴らしいデザインとハンドリング、それにパフォーマンスを実現してきたという実績があります。マレクもマックスも素晴らしいリーダーであり、われわれが必要なものを実現するためのドリームチームを作り上げました。アルファやフェラーリ、そしてマセラティから、最高のシャシーとエンジン、それにデザインを作りだすために必要なスタッフを集めたのです」

パーマーはさらに以前AUTOCARに対して、488のライバルモデルには完全新設計のパワートレインが搭載されることになるだろうと明らかにしているが、詳細については依然として沈黙を守っている。

マクラーレンは、ハイブリッド・テクノロジーや、専用設計のパワートレインが搭載される可能性を否定しないが、「ヴァルキリーの兄弟」との価格差を考えれば、そうした技術が採用されることはないだろう。

「現時点ではわれわれには必要とされるパワーを発揮できるだけのエンジンはありません」と彼はいう。「AMGとの協業を通じてか、われわれ自身の手で行うか、ともかく方法を見つけ出す必要があります」

ますます成長 才能を惹きつけるには創造性がカギ

488のライバルは、今年後半の公開が予定されているフロントエンジンのスーパーカー、DB11、ヴァンテージとヴァンキッシュとともにゲイドンで生産されることになるだろう。

さらに2019年の登場が予定されるSUVモデルのDBXは、ラゴンダ・ブランドの2モデルとともに、ウェールズのセント・アサンに建設中のアストンの新工場での生産が計画されている。まずはサルーン・モデルが2020年から、続いて2022年からSUVモデルの生産が始まる予定だ。

現在アストンではその成長にともない、エンジニアリング部門を中心に400ものポジションでスタッフを募集している。パーマーはアストンの拠点がミルトンキーンズとセント・アサンに拡がったことで、必要な才能を集めるに際して、もはや近隣のジャガー・ランドローバーと競合することはなくなったと話す。

「素晴らしい成長ですが、成長に必要な才能を惹きつけるためには、イノベーティブである必要があります」と彼はいう。「しかし、重要な点は、アストンが日々さらに素晴らしくなっているということです。われわれはすべての人びとに対して、アストンが重要な存在だと示し続けることができています」