トップ2人の実力の高さが伺えた、白熱の戦い(撮影:上山敬太)

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7年連続のプレーオフ決着となった、国内女子ツアー第二戦「ヨコハマタイヤ PRGRレディス」。2日目の1番から、5連続バーディでゲームを引っ張ったアン・ソンジュ(韓国)と、そこに離されまいと食い下がったのが、鈴木愛と横峯さくら。後続の横峯に2打差、鈴木とは3打差をつけて、最終日をトップで迎えたソンジュを日本勢2人が追いかける。横峯はソンジュと2打差の3位に終わったが、鈴木が1日で7ストローク伸ばす猛追。

トータル11アンダーで並んだ二人がプレーオフに突入する一騎打ちとなり、一ホール目でバーディを奪ったソンジュが激闘を制して幕を閉じた。トップ二人が見せた決戦。上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が掘り下げる。
■二桁スコアは実に2010年ぶり! 勝負の分かれ目は風に苦戦した初日
今年を含めて7年連続プレーオフ決着と、肉薄した戦いが見どころの本大会。今年はトータル11アンダーまで伸ばした鈴木対ソンジュの戦いとなったが、トップのトータルスコアが二桁を記録したのは、実に2010年以来となる。
「冬の寒さもあるし、風が吹くコースだから、ハイスコアにならないイメージのコース」とは辻村氏。特に今年は、初日に約13メートル/秒の風速が選手たちを苦しめた。第1ラウンド終了時点で、アンダーパーはトップに立った佐伯三貴(3アンダー)を含めて4人のみ。ソンジュは1アンダー・4位、鈴木はイーブンパー・5位タイで終えたが、今大会の勝敗を分けたのは初日だと辻村氏は語る。
「初日は、だいたい5人アンダーパーが出ればいいほうだと思うくらいの風だった。強い風と、上空を回る風。アウトコースは山、谷間に風が当たり、風向きは本当に分かりづらかった。初日の風を乗り切れなければ、この大会での優勝はない。本当に耐える1日で、イーブンパー以内の人は本当にナイスプレー。鈴木さん、ソンジュさんの二人とも、そこをクリアしていた。二日目と3日目は風、気温などの条件が易しくなって、最終的にこれだけスコアを伸ばしてきましたが、コースが易しいというよりは、プレーのレベルが上がってきていると感じた。攻撃的なゴルフが出来るようになっていると思います」。
■代名詞のパッティングがさえた!女王・鈴木が見せつけた、日本ツアートップの強さ
そんな攻撃的なゴルフをまさに体現したのが鈴木。最終日、トータル7アンダー・単独首位から出たソンジュとは3打差の3位タイからスタート。鈴木は9バーディ・2ボギーと1日で7ストローク伸ばす猛追。気づけばトータル11アンダーでソンジュに並び、賞金女王としての意地はもちろん、昨年ツアー2位、16年はトップに立ったパッティングの技術が光った。
「ツアートップを誇るパッティング技術が間違いなく生きた試合でした。バーディ数も昨年は7位と、いい仕上がりを見せる日本人選手の筆頭。スコアの伸ばし方も尋常じゃなかった。普通は、ああいうバーディ合戦についていけません。ショットだけではあそこまでバーディを重ねていくことはできないですし、5メートル前後のミドルパットが、まあよく入る選手です。ショットでチャンスにつけないと当然ダメだけど、そのチャンスをものにしていける。最終日の猛追は、間違いなくパッティングが大きかった。パッティングで猛追していく愛ちゃんのスタイルが、ちゃんとできています」。
■一年ぶりにつかんだ優勝 3度賞金女王に輝いたアン・ソンジュの安定した強さ
とはいえ、さすがはツアー23勝を誇るアン・ソンジュ。16年はケガに悩まされ、6月の「サントリーレディス」を棄権した後に約1カ月半ツアーから離脱。今大会の優勝会見では「試合に出られるか不安だった」と語るほど、精神的にも落ち込む時期が続いたが、17年「ダイキンオーキッドレディス」以来の優勝を遂げ、ようやく本調子だったころの兆しを見せた。
「今年の開幕戦のときから、久々にいい感じだなと目に留まっていました。もともとドライバーもパターもアプローチもゴルフの組み立て方すべてがうまい選手だから、70点くらいの状態が出たらその状態でいっても勝てるな、という選手。今年はいい状態で打っているなと感じました」。
先週行われた開幕戦の「ダイキンオーキッドレディス」の練習日から、10、11、14年の3度賞金女王に戴冠した際の輝きが垣間見えたと話す。
「スイングに関していえば、下半身の安定力。打ち終えても、フォロースルーで首の後ろにいくまで右足がめくれないベタ足が特徴です。彼女は体をとても柔らかく使います。普通の人だったら、ベタ足にしていたらあそこまで体が回っていかない。下半身の重い、安定したスイングができているというのはあります。低重心がウリなので、その特徴がいい感じに出てきていますね」。
そして、今回の一番大きいのが持ち前の総合力の高さ。この復活が今回のハイスコアをたたき出した。
「今大会はアプローチでミスをする選手が多く見られましたが、彼女はアプローチやショートゲームが抜群にうまい。グリーンを外してからのリカバリーのうまさは天下一品です。そういう部分は、今回のコースに向いていたかもしれません。賞金女王になった年は、技術も集中力も本当にすごかったけど、ここ数年はそれがありませんでした。今年、それが完全に戻るかは分かりませんが、総合力が強い選手。普通にコンディションよく、ショットの精度が安定したプレーをしていれば、3勝くらいしてもおかしくない選手だと思います」。4度目の賞金女王も不可能ではない。
解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、比嘉真美子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。

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