SoCに組み込まれるSIM

 「iSIM」は、SoC統合型SIM(SoC Integrated SIM)とも呼ばれます。

 スマートフォンにおける「SoC(System-on-a-chip)」とは、OSやアプリを実行するCPUなどを含む重要な部品です。この中に、SIM(eSIM)といった、ユーザーを特定するIDデータ関連の役割も担わせてしまおうというわけです。

 携帯電話事業者の団体である「GSMA」では、リモートSIMプロビジョニング(Remote SIM Provisoning)として、機器本体に組み込まれ、取り外せないSIMを定義しています。しかし、SoCに含む形で実現してしまえば、同じ機能をもっと小さなサイズでできるようになりそうです。

 2018年3月現在、「iSIM」はGSMAやETSIといった業界団体では議論されておらず、それぞれの企業などが実現に向けたコンセプト発表や、技術デモを行っているところで、まだいつ現実の製品として出てくるかと行ったメドはたっていません。

Armが技術を発表

 2018年2月、英国Armが、SoC統合型SIM技術「Arm Kigen」を発表しました。

 「Kigen」は携帯電話回線(セルラー)対応のIoTデバイス向けSoCです。これまで、SIMカードが担ってきた、携帯電話事業者の接続情報や認証情報を保持するという役割を、SoC内に実装できるとしています。

ArmのプレスリリースからiSIMの実装例。アプリケーションプロセッサ、モデム部、それにSIMに相当するiSIMをワンチップにし、安価で管理しやすい組み込みやすいセルラーIoT機器が製造できるようになるだろう、としている

 これからの社会では、いわゆるスマートシティといった言葉でも表現されるように、さまざまな産業もこれまで以上にネットワークへ繋がり、社会全体でIoT化が進んでいくと目されています。そこで、さまざまな機器が携帯電話のネットワークへ接続することが不可欠です。

 すると、増えた機器の管理は非常に大変になっていきます。たとえば数十億台規模となった機器で、携帯電話事業者を変更するとなればどうなるでしょうか。もし、SIMカードを1台1台差し替える……という物理的な交換作業は、非現実的です。

 GSMAで定義されたリモートプロビジョニング、いわゆるeSIMでは、遠隔地から管理できるようにしています。eSIMであれば通信経由で膨大な台数のSIM情報を書き換えることも難しくないでしょう。

 その一方で、IoTデバイスでも、さらにコストやサイズに厳しい目が向けられるようになります。そこで、eSIMよりもさらに、SIM機能を小型化し、低価格化すべく研究開発が進んでいるのがArmの「iSIM」を初めとしたSoC内蔵型SIMです。

 今回、Armが発表した新技術は、GSMAのEmbedded SIM仕様に準拠したソリューションとされています。その上でハードウェアのセキュリティを強化する仕組みと組み合わせることでIoT機器のコストを大幅に削減できるとの見通しが示されています。

 Armは、半導体メーカーへ、機能単位での回路情報を販売しています。今回発表されたiSIMも、半導体メーカーに採用され、いずれ私たち一般ユーザー向けのスマートフォンに搭載される日が来るかもしれません。