古典の翻訳作業を20年以上短縮、「文化保存」でもAIが活躍

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歴史や文化を保存・伝達するさまざまなプロジェクトに、人工知能(以下、AI)が導入され始めている。

中国では、検索大手・バイドゥの動きに注目が集まっている。同社は、AIを使った文化遺産復元プロジェクトを立案。並行して、歴史文物博物館に関する情報プラットフォームを構築する計画を進め、年内に10か所の博物館で作業を完了する予定だという。

海外メディアが報じたところによると、バイドゥはすでに秦始皇帝陵博物院(兵馬俑)にAI技術を採用したとされている。用意されたモバイルアプリを起動すると関連情報を閲覧することができ、また世界文化遺産に指定されている兵馬俑坑などの歴史を音声で聞くことができるという。

そのバイドゥの案内システムが従来の機械的な装置と異なるのは、音声認識AIなどの技術を通じて「双方向コミュニケーション」が可能になっているという点だ。AIが遺産案内や通訳に加え、訪れた観光客との対話も担うことで、利便性やホスピタリティ向上が期待されている。なおバイドゥは秦始皇帝陵博物院以外にも、文化、歴史、旅行などの分野・施設に、さまざまなAIアプリケーションを投入する計画だとされている。

一方、韓国ではAIが「古典翻訳」に用いられている。昨今、AIを使った機械翻訳の精度がめざましく向上していると言われているが、それを自国の歴史の保存に使おうという訳だ。AIを使った「古典文献自動翻訳システム」を構築するとしたのは韓国古典翻訳院。政府の正式な産業振興策のひとつとして国の予算も割り当てられている。

韓国には朝鮮王朝時代最大の機密記録「承政院日記」という古典があるが、今後、同システムによってその全巻が翻訳される見通し。承政院とは、朝鮮王朝時代の役所のひとつで、現代の大統領秘書室に該当する機関だ。日記には、行政、王命、出納にはじまり、国王が臣下たちと交わした話や、その日の天気までつぶさに記録されている。史料的価値の高さから、2001年9月にはユネスコ世界記録遺産にも指定された。

韓国古典翻訳院の「承政院日記全巻翻訳プロジェクト」は、いまからさかのぼること約20年前、1994年に開始されているのだが、完了は2062年と予想されていた。なにしろその文献の量が膨大で、全体で3200冊以上にものぼるからだ。ただ自動翻訳システムが構築されれば、完了が2035年にまで短縮されると予想されている。年数にして約27年の削減である。

歴史や文化の保存は、人類にとって非常に重要な作業ではあるものの、多くのリソースと専門知識、そして何よりコストがかかる。税金など関連支出の規模を考え併せれば、AIの発展が非常に役に立つ分野となりそうだ。