写真=iStock.com/violetkaipa

写真拡大

デキるビジネスパーソンは、どんな人と組んでも結果を出すことができる。それは、「クセがすごい」とか「使えない」などと言われている人であっても、その人のタイプをつかめば、成果を導けるとわかっているからだ。どういうことなのか。経営・組織コンサルタントの秋山進氏がタイプ分類の方法を解説する――。

※本稿は、秋山進『職場の「やりづらい人」を動かす技術』(KADOKAWA)を再編集したものです。

■「あの人は使えない」はアテにならない

組織コンサルタントとして、多くの企業と向き合ってきた。そこでたくさんの人に出会い、「あの人は優秀だ」とか「あの人は使えない」とか、いろいろな評価を聞いてきた。

ただ実際には、きわめて個人的な好き嫌いがあふれている。人はときに、自分の弱みを補完する人を過大に評価するし、一方で、他人から見れば似たようなタイプの人を毛嫌いしたりする。そこでは、絶対的な能力そのものよりも、人と人との相性が強く影響しているのだ。

私は相性の良しあしを、その人の性格ではなく、ある程度は変更可能なその人の「仕事の進め方」に見出そうと努力してきた。その結果、「何を見るか(視点)」「どう考えるか(思考)」「どう動くか(行動)」の3つの軸について、人にはそれぞれ明確な特徴があり、それをもとに、8つのタイプに分類できることに気がついたのである。

その結果が、ここで紹介する「ビジネスパーソンのタイプ分類」だ。

このタイプ分類をもとに、各タイプの特徴やタイプどうしの相性をつかめば、仕事をする上での「苦手な人」は、「あなたの弱点を補ってくれる、ありがたい人物」に変身しうる。

■小説家、実務家、革新者、政治家……職場に存在する8タイプ

まず、3つの軸について説明してみよう。人は、下記の3つの軸のそれぞれにおいて、2つのうちどちらが強いかによってその人のタイプが分かれる。

(1)視点のもち方……何を見るか
・ミクロ視点=身の回りの小さな世界における、人・関係・プロセスなどに興味をもつ。
・マクロ視点=大きな世界における、仕組み・機能・バランスなどに興味をもつ。
(2)思考のパターン……どう考えるか
・直観意味的思考=物事を自分なりの世界観で認識して解釈する。そして、物事に独自に意味づけをしたり、理由を見つけようとしたりする。
・事実論理的思考=事実と論理を重視し、理論的・定量的・統計的な視点から、物事の科学的な法則性を見つけようとする。
(3)行動の重点……どう動くか
・WHAT重点=「どうあるべきか、何を成すべきか、それはなぜかを明確にする」ことに重点的に取り組む。
・HOW重点=「どのように具体化するか、実際にどう現実化するか」に重点的に取り組む。

ある人は、「(1)視点の持ち方」は「ミクロ視点」が強く、「(2)思考のパターン」は「事実論理的思考」が強く、「(3)行動の重点」は「WHAT重点」が強い、という具合だ。

こうして、3つの軸を2タイプに分類した結果の組み合わせ(2×2×2)により、働く人は次の8タイプに分類できる。

1.想像力ゆたかな小説家(ミクロ×直観意味×WHAT)
2.創意工夫の技能者(ミクロ×直観意味×HOW)
3.現実を見抜く観察者(ミクロ×事実論理×WHAT)
4.頼りになる実務家(ミクロ×事実論理×HOW)
5.時代を感じる評論家(マクロ×直観意味×WHAT)
6.未来を創る革新者(マクロ×直観意味×HOW)
7.正しさを求めるコンサルタント(マクロ×事実論理×WHAT)
8.実現を目指す政治家(マクロ×事実論理×HOW)

たとえば、先に記した「(1)視点の持ち方」は「ミクロ視点」が強く、「(2)思考のパターン」は「事実論理的思考」が強く、「(3)行動の重点」は「WHAT重点」が強い人は、「3.現実を見抜く観察者」となる。

タイプ分類テストについては拙著『職場の「やりづらい人」を動かす技術』に詳述したが、長くなるためここでは割愛する。

■真逆のタイプと仕事をすると……

ちなみに筆者は「正しさを求めるコンサルタント」タイプなのだが、その特徴は次のとおりだ。

○言動の傾向
業界動向、社会趨勢、技術の変化などを、データと論理を駆使した科学的思考によって認識し、「どのような状況にあるのか」「自分たちはどうあるべきか」などについて語ることを好む。要は、データやロジックを片手に「そもそも論」や「あるべき論」を語る人である。
○ビジネスの場面での振る舞い
・強み=業界の構造変化や顧客のトレンドの変化などを、定説のある理論やデータを利用して解析し、現状や市場のありかについて数字で、明確に表せる。何かあるとすぐにホワイトボードに図やグラフを描いて説明する人はこのタイプ。
・弱み=一定以上のデータが集まり解析できるようになるまでは、感覚に基づく行動を避けようとするため、時代に乗り遅れがち。また、コンサルタントタイプが提示する「あるべき姿」は、現場の人から見ると「わかりきったことを数字で示したもの」「机上の空論」と思われることも多く、現場感覚の薄い、使えない意見を言う人と評価されることも。

いろいろと身に覚えがあった方は、私と同じコンサルタントタイプかもしれない。

このコンサルタントタイプが、たとえば3つの軸すべてで真逆の特徴をもつ、ミクロ視点×直観意味思考×HOW重点の「創意工夫の技能者」タイプと協働しようとすると、どうなるだろうか。

■話がさっぱり通じないことにストレスを感じる

実は私は、新卒当時「創意工夫の技能者」が圧倒的多数派を占める会社に入社した。正直にいって、当時は周囲の人々が何を考えているのか、なぜそんな行動をとるのかがまったく理解できず、話もさっぱり通じないことにストレスを感じ、辞めることばかり考えていた。

現場に山積する課題に対し、私は(できる能力はないが)根本的な解決をしたいのに、周囲の人々は根本なんてお構いなしで、モグラたたきのように対症療法的手段に明け暮れていて、それを最善の方法と思っているようだった。

それもそのはず、「創意工夫の技能者」タイプは、「成果を生み出すことへのこだわりが強く、さまざまなアプローチで課題解決に臨み、独自の工夫でユニークな成果をもたらすことができる。一方で、自分の技能でコントロールできる比較的小さい問題への対応には強いものの、構造的問題など大きな課題への取り組みは苦手」なタイプなのである。

これだけ「違う」人たちが、相手を理解しようとせずにお互いを「わけのわからないことをいい、わけのわからない行動をとる人」だと思っていては、出る成果も出ない。私の見てきた企業でも、人の能力を活かしきれていない組織には、このような「相性問題」が積み重なっていた。

■「具体化したい人」と「参考になる意見をくれる人」

しかし、種明かしをしてしまえば、コンサルタントタイプと技能者タイプの相性は、本当のところそんなに悪くない。

成果やゴールに向かってどう動くかを考え、実行したい技能者は、コンサルタントが抽象論にとどまらず、具体的にイメージできる話をしさえすれば、「へー、世界はそんな風に動いているのか。それなら、自分のアイデアもトレンドに合うな」と受け入れることができる。

さらに技能者がコンサルタントに対して「今から言うのは単なる思い付きですが……トレンドや法則に合っているといいのですが、どうでしょう?」みたいなトーンで相談でもすれば、コンサルタントは大喜びで答えてくれるだろう。

コミュニケーションの取り方次第では、互いに興味を持って話せる者どうしなのだ。まず、自分と相手がいかに「違う」かを認識し、その違いを前提にしながら互いに歩み寄る姿勢と声掛けさえすれば、格段に気持ちよく、かつ生産性の高い仕事ができるようになる。

一方で、コンサルタントタイプと本当に相性が悪いのは「現実を見抜く観察者」と「未来を創る革新者」だ。

■組織において「相性」はバカにならない

「現実を見抜く観察者」は、視点以外はコンサルタントと同じだが、この「ミクロとマクロの差」は、仕事を進めるうえで実に深い溝をもたらす。生産計画ひとつとっても、コンサルタントが世界情勢から未来予測をし、それに合わせて計画を立てたがるのに対し、観察者は目の前の顧客の言動や昨年対比から現実的な計画に固執し、まったく話がかみ合わないことが多い。

「未来を創る革新者」はマクロを直観的にとらえ、当たれば大成功も可能なアイデアを繰り出すが、そのアイデアが計数的な分析の範囲を大きく超えていることも多い。裏付けのある現実的な姿を目指そうとするコンサルタントからすると、「そんな山勘と勢いだけでうまく行くと思ってるの!?」ということになる。

いずれも相性診断は×である。

ただし、相性診断がバツの関係であっても、自分と相手のクセを把握し、相手にあった問いかけや相談のしかたをすることで、仕事は随分とやりやすくなり、成果も出しやすくなる。

いろいろな人が集まって活動する組織において、これまで軽んじられていた「相性」はバカにならない。それが、30年近く組織とそこで働く人々を見てきた私の結論だ。

生産性向上や働き方改革が叫ばれる昨今、案外この「相性問題」に取り組むことが、多くの職場の解決策となるのではないだろうか。

----------

秋山 進(あきやま・すすむ)
プリンシプル・コンサルティング・グループ代表
1963年、奈良県生まれ。京都大学経済学部卒業後、リクルートに入社し事業企画に携わる。独立後、経営・組織コンサルタントとして活躍。現在は、経営リスク診断をベースに、組織構造設計などのプロフェッショナルが集まるプリンシプル・コンサルティング・グループを主宰し、代表取締役を務める。著書に『社長が“将来”役員にしたい人』(日本能率協会マネジメントセンター)、『「一体感」が会社を潰す』(PHP 研究所)などがある。

----------

(プリンシプル・コンサルティング・グループ代表 秋山 進)