とてもかわいい時期なのに超厄介。魔の「イヤイヤ期」を乗り切るには?(写真:KEN226/iStock)

2〜3歳の子どもは「魔の2歳児・悪魔の3歳児」や「イヤイヤ期」と呼ばれることもあるほど、親にも理解しがたいこだわりを持つ時期です。

こちらからすると「どうでもよさそうなこと」に執着したり、いつまでも「同じこと」を延々と繰り返したり、そしてちょっと口を出そうものなら烈火のごとく怒りだしたり……そうした行動は、しばしば大人をイライラさせたり、疲弊させたりしてしまいます。

しかし、そこにはしかるべき理由があり、子どもの成長にとって重要な意味を持つ行動なのです。親がそれを知っておくことで、ストレスが軽減し、わが子の行動をあたたかく見守ることができるようになるはずです。

「イヤイヤ期」は「秩序の敏感期」

私は、モンテッソーリ教師・保育士として、モンテッソーリ・メソッドに基づいたプログラムを提供する幼児教育施設に勤めています。モンテッソーリ・メソッドは、近年、棋士の藤井聡太六段や、GoogleやAmazon.comの創業者が幼少期に受けていた教育法として注目を集めています。誕生してからすでに100年以上の歴史を持つ、医学的・生物学的な視点に基づいた、科学的な子育てのアプローチです。

拙著『子どもの才能を伸ばす最高の方法 モンテッソーリ・メソッド』でも詳しく解説していますが、その代表例が「敏感期」という考え方であり、多くの親が手を焼く「イヤイヤ期」についても、「秩序の敏感期」として、理解することができます。

「敏感期」は、もともと生物学の用語です。生物には成長の過程で「ある特定の機能」を成長させるために「特別な感受性」を持つ時期があります。

生まれて間もない子どもにはまだ意識的に何かをする能力はありませんが、本能的に環境から学習していくプログラムが備わっています。子どもが自分で考えて意識的に行動をし始めるより先に、時期が来れば自動的にプログラムが発動して、自然のうちに学びへと導くようになっています。これが「敏感期」の作用です。

イタリアの女医、マリア・モンテッソーリは膨大な時間をかけて子どもたちを観察していく中から、多くの敏感期がそこにあることを発見しました。

0歳から6歳までの乳児期・幼児期の間には、実にさまざまな敏感期が現れ、消えていきます。その一つが2〜3歳の「秩序の敏感期」です。

2〜3歳の子どもが置かれている状況とは

小さな子どもは、大人のようにまわりの環境に対する知識がありません。目に映るものすべてが、知らないことばかりです。このときの子どもがどんな状況におかれているのか理解したければ、今まで一度も行ったことのない国に突然ひとりで放り出された状況を想像してみましょう。

地図を持っていませんから、自分のいる場所がどこなのかわかりません。時計もありませんから、時間もわかりません。買い物をしようにも、通貨がわかりません。見知らぬ人が何か言っていますが、言葉がわかりません。

これはかなり不安な状況だと言っていいでしょう。それでもここで生きていかなければならないとしたら、必死にまわりを観察して、適応していこうとするはずです。地図がないなら、周辺を探索して目印になる建物を見つけて、自分の位置を把握しようとするでしょう。

内面では秩序感が形成されている

2〜3歳の子どもはこのようにして毎日を過ごしています。もちろん、大人がそばにいるという点で、先の状況とは異なりますが、それでも身のまわりに「わからないこと」がたくさんあるというのは不安なことです。

子どもは、推理小説の主人公が事件の手がかりを探すように、身のまわりの物事の一つひとつに整理をつけて、わかった順から秩序立てていきます。

「私の家にいるのはお父さんとお母さん、そしてお姉ちゃん。この部屋のこの場所にはお父さんの椅子があって、こっちにお母さんの椅子がある。お姉ちゃんの椅子はこれで、私のはこれ……」という具合です。言葉として表に出ることはなくても、子どもの内面ではいつもこのような作業が行われています。

想像してみてください。これほど大変な苦労をしてようやく慣れ親しんだ環境なのに、そうと知らない誰かにふいに椅子の位置を動かされてしまったら。子どもがかんしゃくを起こす気持ちもわからないではない――そう思いませんか。

この時期の子どもは、物事を行う順番ややり方がいつもと違うと烈火のごとく怒ったり、いつもの場所に決まったものがないと不安になったり、物をきっちり同じ方向にそろえたがったりします。自分の持ち物だけでなく、「ママがいつもと違うジャケットを着ている」のが気に入らない場合もあります。

「いつもと同じ」で落ち着いた子が育つ

どれもこれも大人にとっては「なぜそんなことが気になるのか」と思うような些細なことばかりですが、子どもにとっては大問題なのです。


子どもが安心するのは、いつも同じ結果になるとわかっている遊びや、いつもと同じ道を通って学校に通うことや、同じ手順で出かける準備をすることです。

子どものこだわりにすべてつきあっている時間はない、というのが正直なところかもしれませんが、この時期の子どもの特性として理解しておくと、子どもと感情のすれ違いが生じたり、こちらがイライラしたりすることが減るかもしれません。

「秩序の敏感期」の期間はそれほど長くありません。せいぜい1年、長くても1年半くらい。この時期に内面の秩序感がしっかり育てば、精神的にとても落ち着いた子どもになるのです。