40代、50代の人が、幸せな定年後を送るために必要な「4K」とは?(写真:A_Team / PIXTA)

「老後もおカネに困らずに暮らしたい」。これは多くの人の願いだ。だが、30〜40代の人たちが「年金世代」になる頃には、「年金の受給開始が70歳以上になる」とも言われる。すでに、主に年金だけで暮らす「高齢者無職世帯」の家計は月々3〜6万円の赤字(総務省の家計調査)だ。「定年を迎えたらあとは退職金や年金で悠々自適」というライフプランは過去のものとなりつつある。「老後難民にならないために、今からしておくべきこと」とは何か。

「老後は年金でなんとか食いつなげる」は甘い考え

今は現役バリバリのサラリーマンでも、50代の人はあと10年程度、40代の人でも20年程度で定年を迎えることになる(最近では、個人差はかなりあるにしても)。これまでの仕事人生がひとつの区切りを迎えるわけで、40代、50代ともなれば「これからの人生をどう生きていくか」を考えなくてはいけないタイミングのはずだ。

実際、当の世代の人たちは、定年後の人生をどのように考えているのか。まずは該当する40代、50代の2人のサラリーマンに「定年後のビジョン」を聞かせてもらった。やはり、というべきか、かなり温度差があるようだ。

Aさん(50代男性)「この年になって起業する気力も体力もないからね。今の会社には再雇用の制度があるから、定年の60歳以降も『クビ』になるまで会社に通うつもり。もちろん収入は大きく下がるだろうけど、仕方ないよね」

Bさん(40代女性)「定年後は『なるようになるだろう』と思っています。幸いなことに60歳になったら退職金がある程度は出ますし、年金も、まるごとはアテにできないですけど、もらえますよね。それで質素に生活していけば、食うに困るということはないと思うんです」

「定年を迎え、その後数年の再雇用を終えれば、あとは手元に残ったおカネで『お迎え』が来るまで細々と生活する――」。定年が徐々に迫ってきた人たちの多くは、個人差はあっても、このようなライフプランを描いているかもしれない。

しかし、本当に定年後は「退職金+再雇用+年金」で大丈夫だろうか。厚生労働省が発表した2016年の簡易生命表によると、現在の平均寿命は男性で80.98歳、女性で87.14歳。今は80歳以前にお迎えが来る人は、むしろ少数派だ。

これから、定年後の人生は短く見積もっても20年。「人生100年」と考えると40年もある。そう考えれば、いかに「細々と暮らす」といっても、年金のみの収入では不安になるだろう。

前出のように、実際に高齢者無職世帯の家計は赤字だ。終身雇用制が事実上崩壊し、少子高齢化が進む現在、40〜50代は今の高齢者より退職金も年金も少なくなる可能性が高い。「老後は年金があればなんとか食いつなげるだろう」という考えでは早々に貯蓄が底を尽き、「老後難民」まっしぐらになりかねない。

老後の不安は、おカネがあるだけでは消せない

しかも、実はおカネが多少あっても、老後の不安は消えないのだ。英国など他の先進国の事例でもわかるように、老後の不安要素としておカネと並んで多いのが、孤独だ。たとえ年金も退職金も必要ないほど潤沢な蓄えがあったとしても、それだけで幸せな老後が約束されるわけではない。実際に第一線を退いた60代の2人に話を聞こう。

Cさん(60代女性)「夫は現役時代、自他共に認める仕事人間だったのですが、定年を境に人が変わったように無気力になりました。一日中何もせずにボーっとしていて、口を開けば文句ばかり。家庭の空気も悪くなるばかりです」

Dさん(60代男性)「仕事を辞めて時間的にゆとりが出たはずが、かえって体調が悪くなりました。出社時間や『平日』『休日』というメリハリがないためか、生活のリズムが崩れてしまったことが一因かもしれません。気分もすぐれず、新しいことに挑戦しようという気持ちにはなかなかなれません」

もちろん、CさんやDさんのような人ばかりではなく、仕事や趣味に、あるいはその双方で、60歳以前だったときよりも輝いている人も多いはずだ。では、「幸せな老後」の定義とは、いったい何なのだろうか。ファイナンシャル・プランナーの高伊茂氏によると、幸せな老後への近道は「4K」を満たすことなのだという。「4K」?もちろん、「きつい」「苦しい」……のことではない。

高伊氏の指摘する4Kとは何か? 「一般的に大事だとされるおカネ(経済)、からだ(健康)、こころ(生きがい)に加えて、私は家族(パートナー、仲間なども含む)も幸せな老後に欠かせないものだと考えています。この4つを合わせて“4K”としているのです」

現役世代にはピンと来ないかもしれないが、定年を迎えてなお生きがいや仲間に恵まれた人生を送るというのは、実は意外に難しい。同じ仕事内容なのに収入が下がる再雇用や再就職などではやりがいを感じにくく、同僚や元部下など、人間関係も大変になる。「なんとなく」で再雇用や再就職を選ぶと、幸せな老後とはほど遠い生活を送ることになってしまうのだ。

「老後難民になる人」「ならない人」の差は何か

だが、何も同じ会社にいる必要はない。「4Kの要素を満たすのに有効なのが、独立起業です。もちろん一定の度合いで成功することが条件ですが、起業すれば、定年を過ぎても収入があるので、貯金を取り崩す不安な生活から解放されます。また、独立起業すれば仕事の内容はもちろん、就業時間、協力先のパートナーなど、いろいろなことが自分で決められますので、ストレスが大きく減ります。おのずと心身ともに健康になっていきます。再雇用や再就職を選ぶより、圧倒的に効率がいいのです」(高伊氏)。

もちろん、何の準備もしていなかった人が突然独立起業できるほど、社会は甘くない。シニア起業を果たして老後を生き生きと過ごす人と、孤独で不安な毎日を過ごす人。両者を分けるのは、「それまでのちょっとした考え方や習慣の違い」なのだという。


高伊氏が分析する。「さみしい老後を過ごすことになる人は『80歳くらいになればお迎えが来るだろう』などと考え、定年後のライフプランニングを軽視している傾向にあります。90から100歳まで生きるという前提のもとで、現実的なライフプランを立てることが大切です。そのためには、早いうちから家計収支を把握したり、保有資産を整理しておくことも必要です。『おカネの管理はパートナーに任せきり』というのではいけません。

シニア起業で成功するためには、何よりも人脈が重要です。自分の力を買ってくれて、周りに紹介してくれる人がたくさんいれば、ガツガツと営業をしなくても、徐々に仕事がくるようになります」。

「特に有効なのが、社外の人脈です。40〜50代のうちから勉強会などに参加して、会社を辞めても役に立つ人脈をつくっておきましょう。ただ名刺を交換するだけではダメ。勉強会の運営に事務局として参加するなど、汗をかいて深くコミットすると、より効果的です」(同)

盲点になりがちなのが、投資の知識だ。高伊氏によると、「投資経験を積んでいなかったために、退職金などまとまったおカネが入ったときに怪しい投資話に引っかかる人が後を絶たない」という。若いうちから少しずつ、投資の感覚を身に付けておくことが大切だ。

もちろん、勉強が必要なのは、投資に限ったことではない。年金はいつから、どのくらいもらえるのか。保険にはどんな種類があり、それぞれどんな違いがあるのか。これらを、今からでもいいので、よく研究してライフプランに組み入れてみるといい。こうした学びの中で、自分に必要な貯蓄額や保障の内容が自然とわかり、漠然とした老後の不安から解放される。

定年が楽園になる人と地獄になる人――。読者の皆さんは今のところ、どちらの考え方に近いだろうか。もし後者に当てはまっていたとしても、今気づけば大丈夫。幸せな老後に向けて、コツコツと準備を始めよう。