今年発売が予定されているレクサス「UX」には、新世代のパワートレーンが搭載される見込みだ(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

台頭するのはEV、あるいは電動駆動車という風潮

ここ数年、世界の自動車業界では内燃機関に対する逆風が吹いている。クルマにとっての内燃機関とは、化石燃料を燃やして動力を得てCO2(二酸化炭素)を排出するガソリンエンジンやディーゼルエンジンのことだ。


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イギリスとフランスは昨年、2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出した。昨年秋、アメリカでは約10州で排ガスゼロ車の販売義務を課す規制が強化され、中国でもEV(電気自動車)などの生産を一定割合で義務づける新規制が発表された。

こうした“脱・内燃機関”的な流れは表面上、イギリス、フランスにはじまりドイツなど欧州を中心に世界へと波及するかのごとく勢いづき、「代わりに台頭するのはEV、あるいは電動駆動車ではないか」という風潮も加速度的に広まった。

確かに昨年秋に開催された「IAA2017フランクフルトモーターショー」の会場でも、取材した筆者はそうした声を頻繁に耳にした。しかし、日本の自動車メーカーでトップを走るトヨタ自動車にとっては、現実はそうではない。この逆風は実のところ内燃機関に対する追い風だ。

理由は大きく2つある。1つ目は、電動駆動車のさらなる普及には内燃機関との協調が不可欠であること。2つ目は、内燃機関だけでなくトランスミッションを含めたパワートレーン全体で高効率化を図ることでCO2を削減しようという試みが具現化してきたことだ。


説明に当たる「パワートレーン製品企画部」の山形光正チーフエンジニア(筆者撮影)

まず、電動駆動車と内燃機関の協調について解説しよう。トヨタ自動車は去る2月26日に「TNGAによる新型パワートレーン」と題した説明会を開催した。TNGAとは、トヨタが主力車種から順次導入を進めている「トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー」という新しいクルマの造り方だ。

トヨタはその場で2030年時点におけるトヨタの動力源(パワートレーン)別の販売台数予測を示した。内燃機関を持たないEVと燃料電池車(FCV)を合わせた台数が10%程度にとどまる一方で、内燃機関に加えモーターとバッテリー、そしてインバーターを搭載したハイブリッド車(HV)やその派生であるプラグインハイブリッド車(PHV)といった電動駆動車の合計台数が50%程度になるというもくろみがなされた。

つまり今から10年以上先も、トヨタが販売する自動車の90%程度は電動駆動車を含めた内燃機関、つまりガソリンやディーゼルエンジン搭載車であるとトヨタは読んでいる。またトヨタは、その先のシナリオとして2050年頃にはEVとFCVの販売比率が最大で40%程度になると予測している。

こうしたHVやPHVを含めた電動駆動車の増加を声高にするのはトヨタだけではない。エンジンが発電機を回すことに徹し、モーターで走るシリーズ式ハイブリッドシステムである「e-POWER」でファンを増やし続けている日産自動車や、メルセデス・ベンツ/BMW/アウディといったドイツ御三家、さらにはここ数年、日本市場でも販売台数を伸ばしているボルボにしても同じことが言える。

CO2の削減に向けた新技術

次にCO2の削減だ。トヨタは同じく、「TNGAによる新型パワートレーン」と題した説明会で、これまでのCO2削減に向けた取り組みを一層加速させるための新技術を発表した。

トヨタは2012年9月に「環境技術説明会」を、2014年4月と2015年4月には「高熱効率・低燃費エンジンの発表」をそれぞれ行い、CO2削減に向けた取り組みを示してきていた。今後も継続的に内燃機関やHVシステムの高効率化に加え、組み合わせるトランスミッションや駆動方式も同時に昇華させていく必要があるとトヨタは判断している。

今回大きく発表された技術は以下の5点だ。

新型直列4気筒2.0Lの直噴エンジン「Dynamic Force Engine」
新型2.0L用トヨタハイブリッドシステム、
新型無段変速機(CVT)「Direct Shift-CVT」
新型6速マニュアルトランスミッション(6MT)
新型4WDシステム「Dynamic Torque Vectoring AWD(ダイナミックトルクベクタリングAWD)」と「新型E-Four」

これらはいずれも、新しいクルマの造り方であるTNGAに沿っている。

このうち、 嵜祁芯称4気筒2.0Lの直噴エンジン『Dynamic Force Engine』」の注目点は、世界トップレベルの最大熱効率40%(HV用41%)にある。

新型直列4気筒2.0L直噴エンジン「Dynamic Force Engine(2.0L)」(動画:トヨタグローバルニュースルーム)

この熱効率は高ければ高いほど優れているが、これまでのエンジン開発手法では熱効率を上げるとエンジン出力が低下する傾向にあった。対して「高速燃焼技術」や「可変冷却システム」などによって、高い熱効率を保ったままでエンジン出力を従来型から約1.6倍にまで向上させた。また、最大熱効率の発生領域を広げたことで、実際に街中を走行した際のいわゆる実用燃費数値の向上にも期待がもてるという。


世界初の機構を採用した新型無段変速機(CVT)「Direct Shift-CVT」(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

「新型無段変速機(CVT)『Direct Shift-CVT』」の注目点は、CVTの動力伝達効率を上げるため乗用車用のCVTとしては世界で初めて「発進用ギヤ」を組み合わせたことにある。

CVTは構造上、発進時(ベルトの低回転時)と高速時(ベルトの高回転時)に伝達損失が大きかったが、この発進用ギヤによって低回転時のロスを低減しつつ、高速時の高回転側ではミッションの変速比幅(レシオガバレッジ)をクラスの平均値から10%以上向上させた7.5(ちなみにレクサスLS500の10速ATでも8.23)を達成することで、高速時のベルト回転数を低下させ伝達効率の悪化を抑制している。

こうした電動駆動車の昇華には大いに期待したいものの、中核を担う内燃機関にしても高効率化という意味では将来的に技術的な限界点へと近づいていくだろう。ただ、それと歩調を合わせるようにHVやPHVシステムもバッテリーやモーター、そしてインバーターといった「電動化主要3部品」が格段に進化していくことが予想される。

電動駆動車のCO2削減やその先へ

また、この次元まで技術革新が進んでくるとHVやPHVと主要部品を共有しやすいEVは航続距離のさらなる増加が見込めるだろうし、FCVにしても水素充填インフラ(水素ステーションなど)の普及を味方に低価格化も進むだろう。

冒頭の「EVが台頭するのか?」といった風潮は、電動駆動車という言葉の解釈や定義があいまいだったことによるものだ。電動駆動車とは“EVそのもの”を示す言葉ではなく、HVやPHVにあてがわれた言葉であり、そのシリーズとして主要部品を共有するEVやFCVも含まれるとすれば腹落ちするのではないか。

今回トヨタが発表した技術にしても、内燃機関とHVシステム、そしてその駆動力を路面に伝えるパワートレーン全体で高効率化を図るというアプローチであり、いずれも電動駆動車のCO2削減やその先のEVやFCV技術の向上には大きな意味を持つ。

ちなみに「/祁芯称4気筒2.0Lの直噴エンジン『Dynamic Force Engine』」との組み合わせとなる「⊃祁2.0L用トヨタハイブリッドシステム」は、この3月のジュネーブモーターショーで発表された新型「オーリス」やレクサス「UX」などに搭載されることから、本年中には日本市場でもTNGAによる新型パワートレーンを搭載した車種が販売されるはずだ。