活況が伝えられる回転寿司業界にあって、「一人負け」の様相を呈しているのがかっぱ寿司。2016年にはロゴからカッパを排しイメージの刷新を図るなど数々の手は打ってきましたが、抜本的な業績の改善にはつながっていません。かっぱ寿司はこのまま沈んでしまうのでしょうか。無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』の著者・佐藤昌司さんが同社の今度を占います。

社長とカッパのキャラクターの交代で「かっぱ寿司」は変わることができるのか?

回転ずしチェーン「かっぱ寿司」の既存店客数が前年同月比で18年2月まで28カ月連続で減少しているなか、運営会社、カッパ・クリエイトの社長に17年4月に就任したばかりの大野健一氏が「一身上の都合」という理由で18年2月28日付で突然辞任しました。社長就任からわずか11カ月にしかならない中での出来事です。

業績を回復させることができなかったため辞任に追い込まれたとする見方があったり、「コンプライアンス違反があったため」と報じる報道機関もあるなど、様々な憶測が飛び交っています。真相は今のところ公には分かっていませんが、いずれにしても、同社の業績は芳しくなく、有効打を打てていないことだけは間違いありません。

同社はかっぱ寿司の不振により15年3月期に134億円という巨額の最終赤字を計上しています。16年3月期はなんとか黒字を確保したものの、17年3月期には58億円の最終赤字を計上し、経営が抜き差しならないところまで追い込まれています。売上高も減少が続いています。

今期も厳しい状況が続いています。17年4〜12月期の売上高は前年同期比0.6%減の595億円。最終利益は売上高の1%にも満たない3億6,500円です。

厳しい状況を受けて18年3月期の業績見通しの修正を1月に発表。売上高は前回発表より3.5%少ない783億円とし、前年と比べて1.3%減る見込みです。最終利益は13億8,300万円から7億8,100万円に下方修正しています。

回転ずし業界が活況を呈しているなか、かっぱ寿司の不振は異常といえます。市場調査会社の富士経済によると、回転ずしの市場規模は2016年が6,055億円で、前年比で4.8%増加しています。

回転ずしの市場規模は外食産業の中でも伸びが大きく、「回転ずし店であれば伸びて当然」という雰囲気さえあります。しかし、かっぱ寿司はそうした波に乗りきれず、逆に沈み込んでいる状況です。

一方、業界1位のスシローは好調です。運営会社のスシローグローバルホールディングスの17年9月期の売上高(IFRS)は前年同期比5.9%増の1,564億円、最終利益は同2.2倍の69億円です。17年10月〜18年2月の全店売上高はすべての月で前年同月を上回っています。既存店ベースの売上高も好調で、台風が週末に2度襲来するなど天候に恵まれなかった10月こそ前年割れとなったものの、それ以外の月はすべて前年同月を上回っています。

スシローの17年12月末時点の国内店舗数は485店。年に30〜40店を国内に出店する計画があり、今年9月までに500店体制を築く方針です。

スシローは近年ネタにこだわりを見せています。たとえば、CSN地方創生ネットワークが運営する飲食店向けオンラインマーケット「羽田市場」を活用し、店舗に直送される国産の天然魚介類を使った新鮮なすしを提供するプロジェクトを17年11月から始めています。

この他にもネタにこだわったすしの提供を続けており、たとえば、2月28日からは、水揚げ後に1度も冷凍していない生の国産本マグロのすし6貫を税別980円で数量限定で提供しています。

業界2位のくら寿司も好調です。運営会社のくらコーポレーションの17年10月期の売上高は前年同期比8.0%増の1227億円、最終利益は同10.3%増の48億円。17年11月〜18年2月の全店売上高も好調に推移し、すべての月で前年同月を大きく上回っています。

くら寿司は流行を取り入れた商品を打ち出すことで売り上げを伸ばしてきました。

昨今の健康志向の高まりを受けて、17年8月から、シャリを酢漬けのダイコンに入れ替えた「シャリ野菜」シリーズや「7種の魚介らーめん 麺抜き」など、糖質オフを売りにしたメニューを売り出し、人気を博しました。

同年11月には、17年のユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞にも選ばれた「インスタ映え」を打ち出した商品シリーズ「竹姫寿司」の販売を開始し話題となりました。竹をモチーフにした器にシャリとネタを入れたもので、「いくら」や「えびマヨ」など5種類をそろえました。その後に種類を増やし、現在は12種類となっています。

業界3位のはま寿司も好調です。はま寿司の17年3月期の売上高は前年同期比8.0%増の1,090億円、最終利益は同7.0%増の28億円でした。

はま寿司はサイドメニューのラーメンに強みがあります。たとえば、17年10月に再販売した「荒節醤油ラーメン 〜黒〜」は16年に100万食以上を販売した大ヒット商品です。18年3月1日からは、17年にわずか1カ月で60万食以上を販売した「春の旨だしはまぐりラーメン」の販売を開始しています。

このように、回転ずしチェーン大手各社があの手この手を繰り出してしのぎを削っているわけですが、もちろん、業界4位のかっぱ寿司も手をこまねいていたわけではありません。

16年10月から緑色の「カッパ」でおなじみのロゴをやめ、皿を数枚重ねたロゴに変更。「脱カッパ」でイメージを刷新しました。17年には「食べ放題」や「1皿50円」といったキャンペーンを実施。また、女優の吹石一恵さんを起用したシリーズ物のテレビCMを放送し、かっぱ寿司が変わっていくことをアピールました。

どれもそれなりに話題にはなりました。しかし、抜本的な業績の改善にはつながっていないのが現状です。

そうしたなか、一旦はやめた「カッパ」を再登場させる形で、新たに緑色の「カーくん」とピンク色の「パー子ちゃん」の2つのカッパのキャラクターを誕生させました。皿を重ねたロゴはそのままで、新デザインのカッパは「かっぱ寿司のPR隊」として活動させていく考えです。

社長とカッパが変わるかっぱ寿司。今度こそ、業績を回復させたいところです。

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image by: image by: Twitter(かっぱ寿司【公式】@kappasushi_jp)

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