USAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)にとって、これは方向転換ではない。

同社はいま、動画の制作能力の拡大に乗り出しており、旗艦メディアとなる一般大衆紙、USAトゥデイ(USA Today)と関連する109のニュースおよびメディア向けに動画や写真を制作している40名のチームに、20名の新しいエディターを加えようとしている。また、マンハッタンの中心部にある親会社ガネット(Gannett)の本社内に新しいスタジオを設置するなど、動画への投資を拡大している。

「私たちの動画ビジネスは進化している。かつては、優れたカメラマンとして20年間当社で働いた人に、動画撮影の仕事を担当してもらっていた」というのは、USAトゥデイ・ネットワークでデジタル動画コンテンツおよび戦略担当バイスプレジデントを務めるラス・トレス氏だ。「だが、優れたカメラマンが優れた動画制作者になるとは限らない。ルールが異なるからだ。そのため、動画制作者の採用を進めている」と、トレス氏は話す。

拡大のための見直し



トレス氏によれば、USAトゥデイはすでに動画ビジネスで利益を上げているが、配信と収益を増やすための取り組みを見直しているという。トレス氏が米ヤフー(Yahoo!)から移籍するまで、USAトゥデイ・ネットワークには、ネットワーク全体でコンテンツと戦略を監督する単独の「動画責任者」がいなかった。さまざまな動画制作チームが乱立し、USAトゥデイのメインの動画制作部門やほかのネットワークのチームが、個別にコンテンツを制作していたのだ。そのため、仕事の重複がよく見られた。

「この投資は見栄で行っているのではない」と、トレス氏はいう。「動画は当社のビジネスに欠かせないものであり、コンテンツ面でも事業面でも、ビジネスの拡大が期待されている」。

将来的には、バイラル動画、速報ニュース、特集記事のような毎日公開する動画と新たに作るエディトリアル動画とで、制作体制を分ける計画だ。エディトリアル動画は、USAトゥデイ・ネットワークサイトやソーシャルプラットフォーム(FacebookやYouTubeなど)向けの番組として公開されている。

最近成功した動画の例



トレス氏は、エディトリアル動画で最近成功した例として、USAトゥデイの「ヒューマンカインド(Humankind)」シリーズと、Facebookで公開している「アニマルカインド・ストーリーズ(Animalkind Stories)」を挙げた。これらの動画はおもに、USAトゥデイのネットワーク各社が公開した心温まるローカルニュースの動画だ。同社によると、アニマルカインド・ストーリーズは1月にFacebookで4億以上のビューを獲得したという。また、Facebookのビデオ配信プラットフォーム「Watch(ウォッチ)」で公開しているページも、1月に1億900万回のインタラクションを獲得している。そのため、Facebookのニュースフィード改変による影響を回避できるほど、十分なシェアを獲得できるとトレス氏は考えている。

また、トレス氏のチームは、新しいエディトリアル動画を作成するだけでなく、USAトゥデイの各バーティカル(スポーツ、マネー、ライフ、テック、トラベルなど)向けの動画も制作する予定だ。2018年には5〜7種類のデジタルシリーズに的を絞っており、USAトゥデイのサイトと配信プラットフォーム(FacebookのWatch、YouTube、MSNなど)で動画を公開したい考えだ。

リサーチ企業のコムスコア(comScore)によると、USAトゥデイ・ネットワークが2017年に獲得した動画視聴者数は、平均で1670万人以上だった。

制作以外の部門も拡大



トレス氏のチームが新たに採用する20名のスタッフは動画の制作に専念する予定だが、USAトゥデイ・ネットワークは事業部門の人員も増やそうとしている。目的は、既存のビジネスの拡大と新しい収益源の構築だ。募集している人材には、プラットフォーム配信契約を統括する幹部も含まれる。

さらにUSAトゥデイ・ネットワークでは、大きな話題となった動画を映画やテレビ番組などほかの種類のメディアに展開する方法を模索していると、USAトゥデイ・ネットワークのプレジデントで、USAトゥデイの副発行人も務めるマリベル・ウォズワース氏はいう。たとえば、地方紙のインディアナポリス・スター(Indianapolis Star)は、元米国女子体操チームのチームドクターであるラリー・ナサール氏に対するセクハラの告発をいち早く報じ、その後も詳しい追跡報道を続けている。USAトゥデイ・ネットワークによると、ナサール氏の事件に関する報道やその他のニュースをロングフォームの動画プロジェクトとして展開しないかという話が、複数のエージェンシーから持ち込まれているという。

「我々は質の高いオリジナルのニュースを制作しているため、エージェンシー、独立系のプロデューサー、パブリッシャーから定期的に声がかかる」と、ウォズワース氏はいう。「現在、いくつかの開発契約の話が進んでいるところだ。USAトゥデイ・ネットワークのコンテンツを、台本のある番組、台本のない番組、ドキュメンタリー、映画、書籍として展開するため、新しい関係を構築する話には積極的に応じている」と、ウォズワース氏は語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)
Image provided by USA Today Network