フロリダを熱狂させたタイガー・ウッズ 復活優勝への期待は大きく膨らんだ (撮影:GettyImages)

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<バルスパー選手権 最終日◇11日◇インニスブルック・リゾート&GC(7,340ヤード・パー71)>
「バルスパー選手権」でツアー復帰4戦目に挑んだタイガー・ウッズ(米国)。初日は首位に1打差で回り、2日目はホールアウト時点で首位に並んだ。3日目は「67」の好スコアをマークし、首位に1打差で最終日へ。ツアー通算80勝目はなるか。2013年以来、5年ぶり、1680日ぶりの復活優勝はなるか、と世界中のゴルフファンが期待を膨らませた。
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だが、残念ながら今週は、そんなふうに期待を集めた3日目がウッズのゴルフのピークだった。肝心の最終日、彼は勝利するために必要な何かを、まだ取り戻し切れてはいなかったのだと思う。優勝したポール・ケーシー(イングランド)に及ばなかった1打は、その「何か」の表れだったのではないだろうか。
初日、2日目、3日目。ウッズのゴルフには勢いがあった。木の後ろからでも、バンカーの目玉のライからでも、まるで漫画のようなミラクルショットでリカバリー。それは、まさに「タイガー・イズ・バック」を感じさせてくれるプレーぶりだった。
だが、ラウンド後のウッズの反応は、黄金時代のウッズのそれとはまったく異なっていた。かつてのウッズなら、ラウンド後の表情にも口にする言葉にも、プレーと同様に威勢の良さが溢れ返っていた。「勝つためだけにプレーしている」「目指すは優勝の二文字のみ」。それがウッズの決まり文句だった。
しかし今週は、2日目を終えて「とてもいい1日だった」としみじみ語り、3日目を終えて「ワクワクしている」「最終日を戦う準備はできている」と言うに留まった。
昔のように「勝つ」「優勝」というストレートな言葉が出てこない。アグレッシブな姿勢を見せることができない。それは、生涯4度の腰の手術を経たウッズが、まだ復帰したばかりだからなのか、それとも42歳という年齢が彼を大人にしたからなのか。
昔のようにアグレッシブには「なれない」のか、それともあえて「ならない」のか。
一体どっちなんだろう――バルスパー選手権の最終日は、ウッズ自身も彼を眺めたファンも、そんな小さな疑問の答えをどこかで探していたように思う。
最終日。1番をバーディ発進したものの4番ですぐさまボギー。5番ではスロープレーの警告を受け、以後はバーディパットがことごとく外れて前半はイーブンパー。後半もずっとパー続き。今季すでに戦い終えた復帰3試合ではダブルボギー以上を叩いた場面が目立ったが、今週のウッズは優勝争いの真っ只中の最終日も含めて、最悪でもボギーまでに食い止めていた。
とても安定したプレーぶり。だが、世界の一流プレーヤーが集まる米ツアーで、とりわけ混戦の中から抜け出し、勝ち抜くためには、たとえば今日のケーシーがわずか21パットで逆転勝利を飾ったように、何か特別な“スペシャル”を、しかも肝心の最終日にやってのけることが求められる。
その“スペシャル”を実現するためのアグレッシブさは、勝つためには絶対的に必要なはずで、優勝争いに直面しながらも歯切れが悪かった今週のウッズは、かつては得意としていた“最終日のスペシャル”をまだ取り戻せてはいなかった。
「アイアンショットが十分にシャープではなかった。グリーン上でコンサバティブ(保守的)になってしまった」
とはいえ、終盤のウッズは「ゴルフは上がり3ホール」というフレーズを私たちに思い出させてくれた。16番をパーで終え、17番で12メートルのバーディパットを沈めた姿に「ネバーギブアップ」の精神をあらためて教えられ、最後まで何が起こるかわからないゴルフの面白さを味わわせてもらった。
72ホール目。決めればプレーオフとなるウッズの長いバーディパットを世界中のどれほどの人々が、どれほどドキドキしながら固唾を飲んで見守ったことか。その楽しさを味わえただけでも、私たち周囲は十分ハッピーだった。
ボールはカップに沈まず、ウッズは2位タイどまり。その結果はハッピーエンドではなかったが、72ホール目の緊張とスリルを実感したことで、ウッズの心と体に何かしら変化が起こり、さらなる前進につながっていくのなら、それもまたハッピーエンドである。
かつて、レッドシャツを着たウッズは、ここぞという場面でミラクルショットを打ち放ち、魔法のようにパットを沈め、「すごいこと」「スペシャルなこと」をやってのけた。
その「スペシャル」を最終日に見せることができるかどうか。それが「勝ち方」と呼ばれるもの。ウッズが通算79勝を挙げてきた由縁である。
復活を目指す今のウッズが、そんな「スペシャル」をレッドシャツ姿で披露する日は、もう、すぐそばまで来ている。
文/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)

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