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2018年3月7日に三菱重工業長崎造船所で、海上自衛隊向けの護衛艦「あさひ」の引渡式、ならびに自衛艦旗授与式が行われた。久々の新型護衛艦の登場である。ちなみに、配備先は第2護衛隊群・第2護衛隊、定係港は佐世保だ。この式典の模様を取材してきたので、最新の護衛艦における情報通信技術という観点から記事をまとめてみた。

前編では、護衛艦の引渡、自衛艦旗授与について説明するとともに、護衛艦「あさひ」の特徴として、ソナーと洋上無線ルータを紹介した。後編では、引き続き、「あさひ」の特徴を見ていこう。

○「あさひ」の特徴(2)レーダー

「あさひ」は汎用護衛艦であるため、搭載する艦対空ミサイルは自艦の身を護るためのものだ。飛来する脅威を捜索・追尾するためのレーダーと、そこに向けて発射したミサイルを誘導するためのレーダーがあり、艦橋上部の前後左右に合計4組を設置してある。これら一式をOPY-1と称する。

捜索レーダーは、「ひゅうが」型ヘリコプター護衛艦で初登場したFCS-3の流れを汲むもの。いわゆるアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーで、アンテナは固定式としてビームの向きだけを電子的に変えている。

それを実現するために多数の送受信モジュールを束ねている。その送受信モジュールで使用する半導体は、「ひゅうが」型のFCS-3はガリウム砒素(GaAs)だったが、「あきづき」型護衛艦のFCS-3A、「いずも」型ヘリコプター護衛艦のOPS-50、そして「あさひ」のOPY-1では窒化ガリウム(GaN)に変えた。効率の改善と送信出力のアップ、ひいては探知可能距離の延伸を期待できる。

OPY-1を構成するミサイル誘導レーダーも、「ひゅうが」型や「あきづき」型で使用していたものの流れを汲んでいるが、OPY-1のそれは、FCS-3やFCS-3Aのそれとは動作が違う。

OPY-1のミサイル誘導レーダーは連続照射なので、艦対空ミサイルを発射したら命中するまで(あるいは外れと判断するまで)同じ目標をずっと照射し続ける。つまり、単一の目標に対してかかり切りである。「あさひ」は全周をカバーするように4基のミサイル誘導レーダーを持つので、同時に対処できる脅威は4個までだ。

それに対し、FCS-3やFCS-3Aは間欠照射が可能なので、ときどき照射してやればよい。だから、FCS-3やFCS-3Aは特定の目標にかかり切りにならず、複数の目標を取っ替え引っ替えしながら照射できる。

こうすることで、ミサイル誘導レーダーの数(4基)より多くの目標に対処できる。しかし、「あさひ」は自艦の身を護るだけだから、そこまでの能力は要らないということになったようだ(コスト低減という意味もあるかもしれない)。

ポイントは、送受信モジュールの半導体やミサイル誘導の動作に変化があっても、同系列のレーダーで一貫していること。おそらく、レーダー制御用のソフトウェアも流用しやすくなっているだろう。

アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーがちゃんと仕事をするかどうかは、それを制御するソフトウェア次第。ソフトウェアの熟成が足りないと、何かの条件が揃ったときに目標を失探するような事態が起こり得る。

新型艦ができる度に新しいレーダーを作るよりも、同系列のレーダーで通すほうが、ソフトウェアの開発や熟成という面からすると有利である。熟成を重ねてバグをつぶしたコードは、何物にも代えられない宝である。

○「あさひ」の特徴(3)通信系

情報交換ということなら、いわゆるデータリンクの機材は以前から海上自衛隊の護衛艦に積まれている。

まず、味方ならびに探知した敵の位置・針路・速度などの情報をやりとりする、いわゆる戦術データリンクとしてLink 16がある。Link 16で得た情報を戦況図として海図上にプロットすることで、彼我の位置関係を一望できるようになる。昔なら海図の上に艦や航空機を示す駒を置いていたところだが、今は指揮管制装置という名のコンピュータがグラフィック表示する。

また、搭載するヘリコプターとの間で情報をやりとりするための、いわゆるHSデータリンクもある(HSは対潜ヘリのこと)。こちらのアンテナは、艦橋上部に設けられたマストの前側に取り付けてある、白いドームの中に収まっている。

SH-60JやSH-60Kといった哨戒ヘリコプターは、レーダー、ソナー、ソノブイといったセンサー機材を備えており、探知して得たデータをHSデータリンク経由で艦に送ることができる。そのためにHSデータリンクが必要になる。

ドームに納められたアンテナは、HSデータリンクだけではない。多いのは衛星通信用のアンテナである。近年の軍艦は用途に合わせて複数の種類の通信衛星を使い分ける。そして、電波のバンドが違えば送受信機もアンテナも別のものが必要になる。

だから結果として、さまざまな衛星通信用アンテナを納めたドームが林立することになるのだが、これは「あさひ」に限らず、今時の軍艦ならみんな似たようなものである。

○「あさひ」の特徴(4)煙突と電測兵装の関係

今時の水上戦闘艦の主機、つまり推進用のエンジンは、ガスタービン・エンジンが主流になっている。回転がスムーズで静粛性が高いメリットがあるが、低速航行時には燃費があまり良くない。

そこで「あさひ」では、低速航行時には電気推進(モーターでスクリューを回す)を使い、全速航行時にはそれにガスタービンが加勢する。電気推進の電源は、推進用とは別に用意するガスタービン発電機をあてる。そのため、推進用ガスタービンの数は従来の4基から2基に減った。

実は、煙突からの排気が、レーダーや通信をはじめとする電測兵装の配置を制約する要因になっている。煙突から出てくる高温の排気を避けるように配置しなければならないからだ。しかも、電波を扱うもの同士だから、電波干渉にも配慮しなければならない。その一方で、電測兵装の数は増える一方。設置場所を決めるのは簡単ではない。

そこで「あさひ」を見てみると、主要な電測兵装は1番煙突より前の艦橋構造物上部に集中している。後方にあるのは、一部の衛星通信用アンテナと、短波通信用と思われるポール・アンテナぐらいだ。

いったん艦が出来上がると「そういうもの」と思ってしまうが、艦橋上部に集中配置した電測兵装、特にレーダーや電子戦装置のアンテナは、干渉しないように配置を決める作業が大変だったのではないだろうか。

また、後方向きの対空捜索レーダーとミサイル誘導レーダーが艦橋上部の背面に付いているため、これらのレーダーの視界を妨げないようにする必要がある。だから煙突は細身で、その両側には障害物は何もない。さらに、レーダー・アンテナの設置位置を前側よりも高くしている。