第4回目の日本ベンチャー大賞表彰式で総理大臣賞を受賞したメルカリ。写真は安倍首相(右)から表彰状を受け取る山田進太郎会長兼CEO(写真:首相官邸ホームページ)

日本ベンチャー大賞の表彰式が、総理官邸で開催されました。第4回を迎える本年の総理大臣賞はメルカリ。山田進太郎会長兼CEOが安倍晋三首相から表彰状を受け取りました。本稿では、受賞企業の概要を紹介します。

今年の大賞はメルカリ

日本ベンチャー大賞は、若者のロールモデルとなるような、社会的インパクトのある新事業を創出した起業家やベンチャーを表彰し称える制度です。積極的に挑戦することの価値を社会に浸透させ、起業家の社会的地位を向上させることを目的として創設。過去、ユーグレナ、ペプチドリーム、サイバーダインが内閣総理大臣賞を受賞しています。


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第4回となる本年は、国内の有力ベンチャー214社から応募があり、有識者から構成される審査委員会で、企業としてのビジョンや事業の革新性・成長性などの評価項目に基づいて審査が実施されました。

総理大臣賞を受賞したメルカリは2013年に創業し、個人間で簡単かつ安全にモノを売買できるフリーマーケット・アプリ「メルカリ」を提供する企業。「捨てるをなくす、循環型の新しい消費スタイル」を社会に提案しています。


あいさつする安倍首相(写真:首相官邸ホームページ)

服や小物から家具や家電まで、使わなくなったものを、スマートフォンでいつでも簡単に販売。安心・安全な取引のため、取引完了まで購入代金を預かるシステムや、出品者と購入者の個人情報が開示されず配送できる仕組みを導入。さらに、300人以上のカスタマーサポートが、問い合わせ対応や、禁止出品物のチェックなどを行うほか、AI等の技術にも積極的に投資し、人とテクノロジーの力で適正な市場形成を目指しています。


安倍首相が展示ブースにて、メルカリを体感(写真:首相官邸ホームページ)


受賞者のメルカリ山田進太郎会長と記念撮影する安倍首相(写真:首相官邸ホームページ)

2014年には、米国サンフランシスコに拠点を構え、日本ベンチャーの本格的なグローバル展開の先駆者に。日本での滞在経験があり、フェイスブックのバイスプレジデントだったジョン・ラーゲリン氏を執行役員に迎えるなど現地で積極的にプロフェッショナルを採用し、米国流のビジネスを推進。これまで累計3000万ダウンロードを突破しています。英国にも進出し、日米英で合計1億ダウンロードを超えて成長中です。

2月26日に総理官邸で開催された表彰式の冒頭、メルカリの山田進太郎会長から出品プロセスの説明を受けた安倍総理は、スピーチで次のように述べています(首相官邸ホームページ「総理の一日」から抜粋)。

安倍首相「三方よし」と大絶賛

「大賞に選ばれたメルカリの皆さんのフリーマーケット・アプリを体感させていただきました。これまではもう要らないと捨てていた物が、あんなに簡単な操作でお金に変えられる。買う側も、欲しいと思っていた物を安い手段で手に入れることができる。そして、このような循環型の新しい消費スタイルを創り上げることで、メルカリは手数料収入も得る。さらには、国の税収も上がるということでありますから、三方よしということになるのではないかと、こう思っております。単なるコストカットや人まねではなく、これまでにない新しい価値を生み出すことによってビジネスを拡大していく。こうしたやり方が、近江商人の昔から今に至る、我が国伝統のお家芸であり、世界中どこであってもビジネスで成功する王道であると思います」

表彰式の様子は官邸のホームページでご覧いただけます。


記念撮影(写真:経済産業省)

ベンチャーと大企業の連携に対して授与される経済産業大臣賞には、ソラコムとKDDIが選ばれました。

ソラコムは、センサーやロボットなどのデバイスをインターネットにつなげるデータ通信SIMカードとそのプラットフォームを提供する企業。簡単に設定でき、使った分だけ従量課金することで、いろいろなモノを迅速にインターネットにつなぐことができます。まさにIoTのインフラを提供している企業。アマゾンウェブサービスの立ち上げにもかかわった玉川憲社長は、世界標準のサービスを目指しています。

KDDIは、スタートアップと連携事業を創造するKDDI∞Labo(ムゲンラボ)や、ファンドを使ってのベンチャー投資など積極的にオープンイノベーションを推進してきました。ソラコムとは、IoT回線サービスを共同開発し、密接な協業を続けています。2017年8月にM&AによりソラコムがKDDIの連結子会社となったことは大きな話題となりました。このようなM&Aによる新事業展開は、ベンチャーが大企業の経営資源を生かしつつ、独立性をもって機動的にグローバル進出するひとつのモデルと言えます。


経済産業大臣賞受賞のビザスクのブースを見る安倍首相(写真:首相官邸ホームページ)

経済産業大臣賞として、活躍する女性起業家を表彰する女性起業家賞にはビザスクの端羽英子社長が選ばれました。ライフイベントやキャリアステージに合わせてワークスタイルを変化させてきた自らの経験も活かしつつ、課題を持つ企業やビジネスパーソン(=クライアント)と、専門的な知識や経験を持つビジネスパーソン(=アドバイザー)をマッチングするスキルシェアサービスを提供しています。

通常の人材マッチングではなく、1時間の電話・対面会議を設定する「スポットコンサル」という手法で、国内6万人超、海外8000人超の登録アドバイザーとともに事業を展開。働き方改革の時代に新しいワークスタイルを提案する企業と言えます。

農林水産大臣賞にルートレック・ネットワークス

農業ベンチャーを表彰する農林水産大臣賞は、ルートレック・ネットワークス(佐々木伸一社長)。農業の現場において潅水(かんすい)や施肥は多大な労力を要する作業。これを独自のIoT基盤とAI技術、そして熟練農業家のノウハウの活用により自動化。「経験と勘による農業」から「データによる農業」を目指します。

新規開発した「ゼロアグリ」のシステムでは、潅水施肥作業を自動化し、利用農家において、90%の労働時間短縮、50%の節水・減肥、30%の増収を実現。今後は水資源の枯渇や多施肥による環境課題を抱えるアジア諸国への展開も目指します。


審査委員会特別賞を受賞したPKSHA Technologyの展示ブースで質問をする安倍首相(写真:首相官邸ホームページ)

審査委員会において優秀企業と認められた企業に授与される審査委員会特別賞には、マネーフォワード(辻庸介社長CEO)が選定。誰でも簡単に無料で続けられる自動家計簿・資産管理サービスで、家計や資産を一元管理し、人々のおカネの不安をなくす第一歩となることを目指しています。また、金融機関が他社サービスとの連携を目的にAPIを公開する「Open Bank API」構想を掲げ、複数の金融機関や大企業との共同開発を推進しています。

同じく、PKSHA Technology(上野山勝也代表取締役)も審査委員会特別賞を受賞。自然言語処理、画像認識、機械学習/深層学習技術にかかわるソリューションを提供。コールセンターの接客対応の自動化・半自動化、店頭カメラの自動認識機能など「各種のソフトウエア・ハードウエアを知能化する技術」の研究開発と社会実装を進めています。

エコシステムの更なる拡大を期待

今回の受賞企業の審査について審査委員長の松田修一早稲田大学名誉教授は語ります。

「ベンチャー企業振興が政策のど真ん中にきて5年が経過しました。そして、リスクマネーがベンチャー投資に向かうことにより、ベンチャーエコシステムが右肩上がりで成長しています。今回は、非常に多くのベンチャー企業から応募がありました。そして上位に評価された企業について、審査委員が喧々諤々、議論しました。正直、甲乙付けがたい面もありました。審査では、どういうビジョンを持っていてどんな社会にしたいのか、新規性やチャレンジ性はどうか、そして事業が社会に向けてどこまで拡張性があるのかということをテーマに、大いに話し合った結果、6社の企業が受賞されました。今回、受賞された企業を追いかける方々も相当多く日本で出始めていると思い、これからの日本の未来が明るくなってきているのではないかという気がしています」

表彰式のスピーチで、安倍首相は受賞企業全体に次のようにエールを送りました。

「新しいイノベーションを積極的に取り込むことで、革新的なビジネスモデルに挑戦する。その先頭に立つのは、皆さんのような意欲あふれるベンチャー企業をおいて他にはありません。トヨタもソニーも、最初はベンチャー企業でありました。世の中に新しい価値を提供する。その決意の下に、次々と最先端のイノベーションにチャレンジすることで、世界に冠たる大企業へと成長したわけであります。是非、皆さんには、これからも果敢にチャレンジを続けていただきたい。そしてどうか、日本経済を牽引するような企業へと成長していただきたいと期待しています」(首相官邸ホームページ「総理の一日」から抜粋)

今年のベンチャー大賞は過去最多の応募企業から、グローバルに展開する有望な企業群が選ばれました。受賞企業に続く企業群の厚みも増しています。日本のベンチャーエコシステムの拡大は着実に進んでおり、政策支援の現場でもさらに応援を強化したいと考えています。