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今月のヘンタイ端末はこれだ!





ノキア

N-Gage(エンゲージ)

販売価格(当時):299ドル(3万3000円程度)

カートリッジはMMCカードと汎用製品を採用したものの、入れ替えるにはバッテリーを外さないといけなかった……



世界のスマホの半分がノキア製だった時代があった--。

今から約15年前、フィンランドの老舗の携帯電話メーカー、ノキアはシンビアンOSを搭載したスマホを世に送り出すと、使い勝手の高さから人気となり、次々と新製品を送り出していった。ノキアは通話用のケータイでも強く、大げさではなく、世の中のほとんどの人がノキアを使っているような状況だったのだ。

なお、そんなノキア人気の手が及ばなかったのは、独自の通信方式を採用していた日本、韓国、アメリカくらいだった。当時、アジアやヨーロッパに海外旅行に出かければ、街のあちこちから「チャララララーン」というノキアの着信音が聞こえたものだ。

モバイル業界では負けなしとなったノキアはスマホ向けにゲーム配信を開始し、ゲーム市場への参入も試みた。しかし、どうしても勝てない相手がいた。そう、任天堂である。

若者たちはノキアのスマホや携帯電話を持っていても、ゲームで遊ぶ時はポケットから任天堂のゲーム機を取り出していたのだ。当時はまだ携帯電話の通信速度が遅いうえにデータ料金も高く、ノキアのスマホでゲームをダウンロードするよりも、ゲームボーイのゲームカートリッジを買って遊ぶ方が手軽だったのだ。しかもゲームボーイのゲームの方が圧倒的に性能も良かった。

2003年、打倒任天堂を企て、ノキアが開発したのが『N-Gage(エンゲージ)』というゲームスマホだ。ディスプレイを中央に配置し、左側には十字方向キーを備え、右側にはゲームボタンとテンキーを配置。もちろんスマホなので、電話もかけられるし、他のアプリを使うこともできた。ただし、通話するときは本体を横向きにして立て、耳の横に当てるという奇妙な姿で行う必要があった。



ゲームカートリッジはSDカードを薄くしたMMCカードで供給。ゲームカセットのようなパッケージで販売し、セガなど有名なゲームメーカーから複数のタイトルが登場した。汎用品であるMMCカードを利用することで、スマホ本体側に特殊なコネクタを必要とすることも無く、いずれはノキアの他のスマホでも『N-Gage』用ゲームがプレイできるはずだった。また、通信回線を利用した対戦ゲームも企画されていたはずだ。



『N-Gage』の投入で、ノキアは新たなビジネスチャンスを生み出すはずだった。しかし、蓋を開けてみれば発売当日から販売不振で、ノキアの黒歴史と言われる存在になってしまった。

本体と合わせてアナウンスされたゲームは数タイトルしかなく、ゲーム好きな若者の興味すら集められなかったのである。その後タイトルを増やしていったものの、すでに多数のゲームがある任天堂に対抗することはできなかった。



そして最大の欠点はポータブルゲーム機としての使いにくさだ。ゲームカートリッジであるMMCカードを入れ替える際には本体の電源を落とし、バッテリーを取り外す必要があったのだ。カセットの入れ替えだけで、即座に別のゲームができる他社のゲーム専用機と比べ、ノキアのゲームスマホはゲームの交換すら面倒だったのである。



半年後にカートリッジをそのまま抜き差しできる『N-gageQD』を発売するも、時すでに遅し。若者に見向きもされず市場から消え去ったのだった。

山根康宏(やまねやすひろ):香港在住のジャーナリスト。世界の携帯電話事情を追い求め、1年の約半分を海外で過ごす。携帯電話1500台、SIMカード500枚以上を所有するコレクターでもある。

※『デジモノステーション』2018年4月号より抜粋。

text山根康宏