コンビニ業界の知られざる裏側を、内情に詳しいライターの日比谷新太さんがレポートする当シリーズ。前回の「決済システムイノベーション」の話題に続いて、今回取り上げるのはローソンの一部店舗で展開している店内調理サービス「まちかど厨房」について。出来たてのお弁当がいつでも買い求められるということで、利用者からすればとても魅力的なサービスのように思えるのですが、今後これが拡大していくのかといえば、それはかなり難しいのではと日比谷さんは分析しています。

コンビニ「まちかど厨房」を考えてみる

ローソンが一部店舗で展開している店内調理サービス「まちかど厨房」を、みなさんは利用されたことがあるでしょうか。

ローソンのウェブサイトによると、唐揚げ・トンカツといった揚げ物をおかずとしたメニューを中心に、現在37種類が提供されていて、価格帯も350円〜650円と幅広く設定。店内の厨房では「炊飯器」「電子レンジ」「フライヤー」を駆使して、出来たての商品を提供しています。

こういった店内調理サービスは、コンビニ業界において差別化要素に活用しようと、これまで様々なチェーンが挑戦してきました。元祖・店内調理といえばミニストップですし、中国地方を中心に出店しているポプラでは、炊きたてのご飯を店内で詰めてくれるサービス「ポプ弁」を展開しています。

消費者の立場で考えると、お店の中で作りたて・出来たてのお弁当が温かいままで調理されるほうが、保存料等も少ないだろうし新鮮でおいしいといったポジティブなイメージがあります。しかしながら、店内調理には厨房スペースが必要で売り場効率が悪化する懸念があり、くわえて人件費の問題も発生するため、実のところ積極的には展開しにくいモデルなんです。

過去の事例をみても、この手の店内調理サービスはどのチェーンも一度はチャレンジするものの、最終的に売り場効率と経費・利益を考えた結果、セントラルキッチン(弁当工場)で作る商品のブラッシュアップ、適切な時間に適切な温度で運ぶことで消費者ニーズを捉えるという方向性にシフトチェンジするというケースが多いのです。

ローソンの「まちかど厨房」も、今後伸びていくかどうかは明確には見えてきていません。新規商品の開発は続けているようですが、何よりも人の手が必要になるということで、アルバイト不足が殊に深刻な昨今の状況下で、今後このサービスが拡大していくのはかなり難しいように思えます。

持ち帰り弁当チェーンも苦戦が続く

ところで、「まちかど厨房」のような店内調理サービスと競合するものといえば、持ち帰り弁当チェーンを思い浮かべる方も多いかもしれません。工事関係者など働いている場所の近くに食事できる場所が少ない方、トラックなどで一日中走り回っているドライバーの方なら、利用する機会が頻繁にあるのではないでしょうか。

この持ち帰り弁当チェーンの2台巨頭といえば「ほっともっと」と「オリジン東秀」ですが、その売上高を調べてみると、ここ数年は苦境が続いていることが分かります。

直近の2017年度のデータはまだ発表されていませんので、2016年度までで比較しましたが、両社ともに売上高は下がりつつけています。逆に、コンビニ業界は成長を続けていることがわかります。

このデータを見て思うのが、消費者はどうやら出来たて弁当を熱烈に支持しているわけではないようだ、ということです。もちろん、出店数の伸び悩みやメニュー改廃の影響で売上が振るわないということも考えられるのですが、持ち帰り弁当チェーンが近年苦戦していることは明確です。

特に「ほっともっと」の今年度の既存店舗月別売上をみると、このところは前年割れが毎月続いていることが分かります。

コンビニ業界でもそうですが、既存店の売上が下がるのは、客数ダウン・客単価ダウンが原因とされます。ゆえに最近の「ほっともっと」は、そのメニューや価格帯が消費者に受け入れられていないことを示しています。

人手不足の問題もさることながら、出来たて弁当の店内調理サービスもさほど支持されていないということで、今後ローソンの「まちかど厨房」がコンビニ業界を大きく揺るがすようなイノベーションに繋がる可能性は、限りなく低そうです。

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