コミュニケーションを円滑にしたり、リラックスさせてくれたりする効果を持つアルコール。しかし、大量の摂取は身体にさまざまな害をもたらします。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では著者で現役医師の徳田安春先生が、アルコール依存症が通常の検査では見落とされがちという知られざる事実や、アルコールの大量摂取によって起こりうる恐ろしい合併症についても詳述しています。

多いアルコール依存症

料理と共にみんなでいただく適度のお酒はコミュニケーションを円滑にしてくれますので、社会性を高めますね。また、普段の緊張感をほぐしてくれますので、ストレスを軽減しますね。しかし、大量の飲酒を長期間続けていると、アルコール依存症の危険性が高くなります。

日本の成人では約5パーセントがアルコール依存症の疑いがあるといわれています。このうち男性では約7パーセント、女性では約2パーセントです。アメリカ人の成人でのアルコール依存症は約15パーセントですので、日本人では比較的に少ないとされています。

しかし、近年では若年女性や高齢男性でのアルコール依存症患者が増えていることが問題となっています。そして地域によってはアルコール依存症が増えているところがあります。沖縄での救急搬送患者のうち、かなりの割合でアルコール関連の病気の人がいることが社会問題となっています。大量飲酒はさまざまな病気を引き起こすのです。

アルコール性ケトアシドーシス

長期大量のアルコール摂取はアルコール性ケトアシドーシスという病気を起こします。糖質やタンパク質を含むような通常の食事を摂らない痩せた飲酒者によくみられます。毎日、朝から飲酒して、食事を摂らない生活が最も危険です。また、糖質とタンパク質を制限をして脂肪はたくさん摂るようなケトン体ダイエットをしながら、大量飲酒を続けていても起こりやすくなります。

症状をみてみましょう。典型的には、アルコール性ケトアシドーシスを発症すると、吐き気、嘔吐、腹痛をきたします。食あたりなどの急性胃腸炎の症状に似ていますね。長期大量飲酒をしていることを医師に話さないと、アルコール性ケトアシドーシスの診断が見逃される可能性があります。

アルコール性ケトアシドーシスは通常の血液検査ではわかりません。血液と尿中のケトン体という代謝産物が増えますが、通常のケトン体検査では引っかからないことがあるからです。その理由は、通常のケトン体検査はアセト酢酸を検出するものであり、アルコール性ケトアシドーシスでは、ケトン体のうちベータヒドロキシ酪酸が増えるからです。

ベータヒドロキシ酪酸を直接測定しないと、アルコール性ケトアシドーシスは、病院でも見逃される可能性があるのです。一方で、血液ガス検査では原因不明の血液のアシドースシスとされ、間違った診断や治療が行われることもあります。長期大量飲酒をしていることを医師に話すことは大切です。

アルコールによる低リン血症

アルコール依存症の患者さんではよく血液中のリンの濃度が下がります。原因は主に2つあります。1つはリンの経口摂取が下がることです。リンを多く含む食物には、肉類、魚類、ナッツ類、豆類そして乳製品などがあります。アルコール依存症の患者さんでは、これらの食品を取ることが少なくなるためにリンの経口摂取量が下がります。血液中のリンの濃度が下がるもう一つの原因は、リンの尿中への排泄が増えることです。その機序としては、アルコールによる腎臓の尿細管障害などが挙げられます。

リンは体でのエネルギー代謝で重要な役割を果たしています。エネルギーを貯蔵する重要な分子にATPがあり、その分子の中でリン酸が結合することによって蓄えられています。リンが不足するとATPも不足しますので、エネルギーの供給が妨げられます。そのため全身の筋力低下などをきたします。

アルコール依存症のある患者で低リン血症があると横紋筋融解症が起きることがあります。これは、筋肉の崩壊が起きる現象です。ひどい筋肉痛や血尿などをきたします。アルコール依存症ではないケースでは、低リン血症があっても横紋筋融解症を起こすことはほとんどありません。そのため、横紋筋融解症をきたす機序には、アルコールによる直接の筋肉の障害もあるだろうと考えられています。

文献

Palmer BF, Clegg DJ. Electrolyte Disturbances in Chronic Alcohol-Use Disorder. N Engl J Med. 2018 Jan 11;378(2):203-204.

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