カート・コバーンの娘フランシスが挑んだ、父の真の姿を伝えるという使命

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故カート・コバーンの娘、フランシス・ビーン・コバーンが挑んだ、父の真の姿を伝えるという使命とは?『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』の完成後に亡き父に向ける真摯な思いを明かした、2015年に行われたローリングストーン誌のインタビューを振り返る。

※この記事は2015年4月23日発売のローリングストーン誌に掲載されたものです。

1月のサンダンス映画祭の開催3日前、ニルヴァーナのギターヴォーカルだった故カート・コバーンの妻であるコートニー・ラヴと、その1人娘であるフランシス・ビーン・コバーンは、カリフォルニア州バーバンクのとあるプライベートルームで行われた、『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』の完成版試写会に出席していた。同作の脚本と監督、そしてプロデュースを手がけたブレット・モーゲンも同席したその場には、ただならぬ緊張感が漂っていた。既に鑑賞済みだった22歳のフランシスは、同作のエグゼクティブ・プロデューサーとしてクレジットされている。しかし8年前に同プロジェクトを発足させるも、制作にはノータッチだった彼女の母親は、その日初めて完成した作品を観ることになった。同作の鑑賞を何ヶ月も先送りにしていた彼女は、その日の試写会に同席してくれるようフランシスに頼んだという。ラヴはスクリーニングルームのソファに腰掛け、フランシスは彼女の膝の上に座っていた。現在50歳のラヴがモーゲンにそのドキュメンタリーの制作を持ちかけたのは、カートがシアトルの自宅で自ら命を絶った1994年4月から13年後の2007年だった。彼の2002年作『くたばれ!ハリウッド』の大ファンだったラヴは、モーゲンが本作を制作するにあたって、カートが残したアートワークや日記、そして未発表音源等の使用を全面的に許可した。

しかしラヴが語る「金銭面での問題と法律に関するあれこれ」を理由に、制作は思うように進まなかった。カートがこの世を去った時に生後20ヶ月だったフランシスが、2010年に18歳の誕生日を迎えた時、正式な発表こそなかったものの、ラヴは父親の残した財産の管理権を彼女と共有することを決めた。ほどなくしてモーゲンにも同様の権利が与えられたことで、ドキュメンタリー制作は本格的に再始動する。ラヴはインタビューに答える形で同作に登場しているが、作品の制作そのものには関与していない。

ラヴとフランシスの関係は複雑だ。癒えることのない悲しみ、カートの家族との軋轢、ラヴのドラッグ癖、音楽と演技におけるラヴの不安定なキャリア、そういった環境下で2人は度々衝突し、その都度メディアと裁判所に顔を出すことになった。しかし最近になり、フランシスはこう話している。「互いに大人になることで、多くの問題を解決できた」スクリーニングルームで作品を観た時のことを、ラヴはこう振り返っている。「他人の目には奇妙に映ったかもね。ソファの上で、私たちはまるでカップルのようにぴったりと寄り添ってた。2人とも涙を流しながら」

2015年5月4日にHBOで放送された、2時間12分に及ぶ『COBAIN モンタージュ・オブ・ヘック』は、27年にわたるカートの波乱万丈な生涯を描いたドキュメンタリーだ。混乱に満ちた少年時代、一夜にして手に入れた名声、ヘロインへの依存がもたらした鬱症状に対する思いなどが、彼が残した作品および肉声とともに描かれている。本作には、未発表のデモや実験的音源(本作の題名は、彼が1988年に残した伝説的カセットコラージュのタイトルにちなんでいる)、カートの残した絵をもとに作られたアニメーション、切実な思いが綴られた日記、未公開映像、そして1993年10月のローリングストーン誌カバーストーリーにおける筆者とのインタビュー(その報酬は未払いのままとなっている)等が収録されている。また幼少期のカートの姿を収めたホームムービーや、ニルヴァーナのレアなライブ映像、そして離婚した彼の両親、ドン・コバーンとウェンディ・オコナーを含む身近な人々の証言等も登場する。