ハナコラボ日記/諸岡なほ子の『おいしいのりもの旅』第8回
「東98」に乗っていつもの東京を車窓散歩(後編)

東京の誇る大自然「等々力渓谷」から、丸の内のビルを見上げる「東京駅」まで、およそ15キロのロングドライブで東京を横断する、東急バス「東98」系統。ちょっと高いバスの視点から窓の外を眺めれば、地下鉄やタクシーからは見えない、新しい東京が見えてくるかも?

☆前編はコチラ!

東京タワーに愛宕山、そしてランチにクラフトビール

目黒通りをひた走ってきた東急バス「東98」は、白金の明治学院大学のあたりから桜田通りへと道を変え、東京を東へ東へと走っていきます。そしてチラリと見えてきたのが東京タワー。東京タワーは、高い建物から見たり、首都高を走りながら見たりと、東京のいろんなところから楽しむことができますが、私は、こんな風に建物の間からチラリチラリと顔を見せる姿が一番好きかもしれません。

そうこうしている内に、増上寺を越えて、東京タワーの足元へ。

エッフェル塔や東方明珠電視塔や東京スカイツリー。世界中にいろんなタワーがありますが、東京タワーの魅力はどこか悲しみのようなものをまとっているところではないかと思います。彩色こそ紅白ですが、その建築資材の一部には朝鮮戦争でアメリカ軍が使った戦車の鋼鉄が使われているとか。また、この辺りにはお墓も多いですが、東京タワーのすぐ隣にある芝公園の小高い丘は、都内には珍しい「芝丸山古墳」という前方後円墳だったりもして、何かと死のイメージが漂います。そんなことを知ると、このタワーがなんとなく墓碑というか、何かがここにあったんだよと知らせるためのしるしのようにも見えてきます。そしてそれが、東京タワーに深みをもたらしているような気がするのです。

続いて車窓には、誰でも座禅を学ぶことができる禅寺、青松寺の立派な山門が(「慈恵会医大前」バス停前)。もう少し行くと、今度は愛宕神社の真っ赤な鳥居(「愛宕山下」バス停前)も見えてきます。

愛宕神社は、写真に写っている鳥居の奥の急な階段が「出世の石段」として知られていますが、何より東京23区で一番高い天然の山の上にあるということでも知られています。その名も愛宕山。標高は25.7メートル。低っ。でも、ちゃんと山の証しである三角点も境内に設置されていて、江戸時代には見晴らしの名所としてたくさんの見物客で賑わったのだそう。「東98」のバス旅では、チャチャっと日帰り登山もできるわけです。

バスは虎ノ門のオフィス街を抜けて、西幸門前を右折、日比谷公園の脇へと入ります。この時に左手を見ていると、国会議事堂の姿もチラリ。

続いて日比谷通りに入って皇居のお堀の上に大きな空が広がってくると、ゴールは間近。

馬場先門を右折、美しい三菱一号館美術館の建物を見ながら左折すると、丸の内の洗練された街並みが現れます。そして、「東98」は終点、東京駅南口へと到着です。

丸ビルやKITTEと言ったお買い物スポットが集まる東京駅丸の内駅舎前。さてさて、この連載は「おいしいのりもの旅」なので、今回もおいしいものを求めて歩き始めます。目指すはこの辺りでしか飲めない日本のクラフトビール。

国際フォーラム前の高架をくぐり、八重洲方面へ抜けてすぐ、左手のパシフィックセンチュリープレイス丸の内にあるGran Ageに入ると、1階の気持ちのいい場所にそのお店はありました。「NIHONBASHI BREWERY T.S.(日本橋ブルワリー東京ステーション)」。日本橋富沢町にあるクラフトビール専門店、NIHONBASHI BREWERYが昨年2017年11月にオープンしたばかりの新店舗。

近隣のオフィスからランチをするためにやってきたという人がほとんどのようでしたが、私は迷うことなく注文しましたよ。日本橋エリアでしか飲めないクラフトビール、NIHONBASHI IPA。ポートランドのオーガニックブルワリー「HUB」が、日本人向けに考案したオリジナルレシピでできたビール。泡立ちは少なめ、明るい金色の IPAは想像よりもライトな飲み口で、あっという間に半分飲みきってしまいました。このSAKE STYLEは、升の中にも少々ビールが注がれていて、それをグラスに戻せばほのかなヒノキの香りとともに楽しめます。

一緒にオーダーした「しらすと春菊のオイルパスタ」が来る前にビールを飲みきってしまいそうだったので、喉の渇きを感じつつも我慢。こうしてやってきた、たっぷりのせられているしらすが贅沢なこのパスタは、炭水化物メニューでありながらビールとも相性が良く、どちらも進む、進む。

ちなみに、私はビール目当てで伺ったので、ランチタイムでありながら、パスタを単品オーダーしましたが、ランチのセットには、契約農家の野菜を使ったサラダとスムージーがつき、おかわり自由。周りの席を見回すと、スムージーも大人気のようでした。

お腹も満たされ、ヤエチカのハセガワリカーで国内外のクラフトビールも買えたし、またのんびりバス旅をしながら帰ろうかな、それとも、どこかへ行こうか…と、東京駅は旅への想像力と欲求を刺激してくれます。

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