いざフォーミュラE参戦 日産が狙うは「ミレニアル世代」

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世界に先駆けて、8年前にピュアな電気自動車の市販をスタートしたのは日産だった。日産リーフは、世界でもっとも多く販売されている電気自動車(EV)で、2010年に誕生して以来、30万台以上販売されてきた。

その日産が今度は、日本の自動車メーカーとして初めてフォーミュラEに参戦することになった。3月8日に開幕したスイスのジュネーブ・モーターショーで発表された。フォーミュラEは、世界自動車連盟(FIA)公認の完全EVによるレース・シリーズで、2014年のスタート以来、各国で徐々に人気があがってきている。

日産は、ジャガー、BMW、ポルシェ、メルセデス、アンドレッティ、ペンスキー各社が開発したレーシング用パワートレインを使うチームに挑戦することになるが、傘下のルノー社のチームを、来シーズンには表彰台に乗せようという強気の計画だ。

ジュネーブの会場でお披露目され、フォーミュラEの2018-19年シーズンに投入される(日産の)レースカーは、 鮮やかな”ドップラー効果”ペイントで目を釘付けにする。同社のグローバル・モータースポーツ・ディレクター、マイケル・カルカモ氏は、「フォーミュラEへの参戦することで、フォーミュラ1よりもずっと若いファン層にアピールできる」と述べた。「フォーミュラEのファンは、年齢がフォーミュラ1より若い」からだ。


ジュネーブ・モーターショーで発表されたレースカー(写真=日産提供)

日産にとっての課題は、若い世代向けの自動車システムを探究することだと彼は言う。実は、これは重要なことだ。というのも、日本ではモータースポーツへの関心がここ十数年、下がり続けているからだ。ミレニアル(2000年代に成人を迎えた)世代の関心は、クルマを買うことよりもスマートフォンやソーシャル・メディアに向いている。

「大都市の若者の触手が動くような、これまでとは違うモビリティの選択肢を提供しなくてはならない」と彼は力説する。

これまでのところ、日本でのフォーミュラE人気、というか同シリーズへの関心の低さは、日本のカーメーカーが参戦する意欲を見せないということも一因ながら、最たる原因は道路規制が厳し過ぎて、日本ではレースを開催できないということにある。フォーミュラEに仲間入りしてレースを開催するには、市街地でのレースを許可しなくてはならない。過去4シーズンのレースはローマ、パリ、ロンドン、ベルリン、ニューヨーク市、モナコ、北京、香港、メキシコ・シティなどが舞台となってきた。


(写真=日産提供)

日本で開催するとしたら、例えばお台場を含む東京臨海地区、横浜などが考えられるものの、モータースポーツが斬り込むには規制が厳し過ぎるのが現状だ。もし日産がフォーミュラEに参戦すれば、実現への意欲や可能性も高まるかもしれない。

スタートしてから4シーズンが経過しているフォーミュラEでは、 参加する全チームに同一スペックのカーボンファイバー製シャシーが供給される。それをどんなモーター、電子系統、インバーターやギアボックスを使ってライバルに勝るマシンに仕上げるかが各メーカーの裁量で、勝負のポイントだ。

日産が参戦を決めたのは、バッテリーのパワーと航続距離が各段に増したことが影響している。5期目となる2018年に使われる各マシンは、これまでの倍のエネルギーを蓄えられる。つまり、これまでレースの中盤でマシンを乗り換えるという、興ざめしがちなピットストップが必要なくなるわけだ。

これは観戦客にとってもポジティブな効果があるはず。レースの途中でバッテリーが切れてしまうマシンから、ドライバーが2台目に乗り換えるという光景は、現行のEVの航続距離に不満を抱く人たちに「だからEVはなぁ」と思わせてきたが、それを打ち消すことができるだろう。

「バッテリー・パワーの増大、そして航続距離が伸びたことで、フォーミュラEへの期待がぐっと高まるはず。レースで観客がEVのエモーショナルな魅力を目撃できるようになります。これは、日産も他のメーカーももっとプッシュすべきこと。EVが信頼できる選択であることを認知してもらえるようにね」と、カルカモは力説する。

その通りだ。レース車と市販車は互いに影響し合っている。もし、シリーズ参戦によって日産がリーフやこれからのEV車両の航続距離を倍増できるなら、彼が言うように若い層にアピールしながら、EVへの懐疑的なモヤモヤをも払拭できるはずだ。

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