猪口 真 / 株式会社パトス

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さまざまなサービスがモノからコトへの転換期にきている。クラウドという概念が、様々なビジネスモデルの転換を引き起こした。

言い尽くされたことだが、以前はサーバーを持つということは、自社内にハードウェアの設備を置くことだった。どの会社にもサーバールームがあり、アンタッチャブルな領域として存在していた。

ところが、クラウドのサービスにより状況は一変。ハードディスクの低価格化もあったが、Webサーバーにしても、ファイルサーバーにしても、企業は高額な設備投資をすることなく、自社のサイズに応じたサービスをゼロが二つぐらい違う価格で利用することができるようになった。

加えて、ASPやSaaSによるサービスの提供は、サービス自体をクラウドで利用できるようになり、場合によっては高額なシステム開発も不要になった。

クラウド化がメーカーにも広がる

これはひとつの従量課金のモデルと言えるが、このところ、IT業界だけではなく、サービス業、メーカーなどにも、このASPやSaaS的なサービスが急激に広がりを見せている。

結果保証や単なる定額制のサービスはこれまでも存在していたが、ITの技術進歩によってリアルのビジネスモデルを変革させ、新しい製品の提供モデルが次々と登場しているのが新しいところだ。そして、これまで、モノとしての納品しかしてこなかった、資材関連でもビジネスモデルが明らかに変わっているという。

資材や原材料というのは、基本的にどう使うか、どう付加価値をつけるかは、ユーザー側に委ねられており、ビジネスモデルも「キロいくら」「トンいくら」「屬いら」の世界だった。

それが昨今、資材や原材料を供給する側も、ユーザーの活用状況にあわせて、使った分だけ費用をもらうという従量課金に移行している企業が現れ始めている。

日刊工業新聞によれば、セメント世界大手のメキシコ・セメックスは、使用量を監視するシステムを導入することで、月額サービスのビジネスモデルを始めたという。

日本でも、物流施設の供給で日本のトップ企業のひとつである大和ハウス工業は、これまでの施設建設、あるいは賃貸料金のビジネスモデルに加えて、物流施設の従量課金制度に取り組もうとしている。

AIやビッグデータの活用によって計画精度を上げることで、ロスのないマテハンやロボットなどの供給が可能となり、ユーザー側からすれば、設備投資が不要の物流施設活用が可能となるわけだ。

まさに、設備というモノの提供から、在庫管理と出荷という本来の目的のみというコトのサービスへと切り替わろうとしている。

中小企業こそ、「コト」ビジネスを

大手企業がこうした従量課金、コトの提供に動く中、本当に危機感を持って取り組まなければならないのは、中小企業だ。中小企業ほど、このモノからコトへの転嫁を図らなければならない。

昨年発表された中小企業白書を見ても、マーケティングに関して人材不足、リソース不足が明らかで、大企業に対して真っ向勝負でいっても勝ち目はないだろう。

確かに、この従量課金の仕組みを採用すれば、必要最低限の量しか使わなくなるため、売り上げは減少するだろうし、また、これまでの従量課金のイメージは、中小企業にとってあまり印象の良いものではなかった。

たとえば、Webサイトの更新やメンテナンスなどの管理業務など、気がつけば、想定以上の業務量となり、従量性という安定した収入が、従業員の負荷の拡大になってしまうことが少なくなかった。

ただし、こうした従来型の従量課金のスキーム(定額サービス)は、単なる提供する労働力の安売りに過ぎず、提供側にメリットとなることはあまりない。

これから中小企業が取り組まなければならないことは、モノからコトへのビジネスモデルの転換という意味での従量課金スキームの採用だ。

IT化の話ではないが、ライザップにしても提供しているのは、最終的な結果だ。これまで多くのフィットネスクラブは、マシンやスタジオなどモノを提供してきたわけだが、「引き締まった健康的な体」というコトを提供している。

B2Bにおける中小企業の多くは、少ないクライアントに対してきめの細かいサービスを提供している。顧客の成功を図る指標の設定、IT化による測定、成果予測の正確性といった課題をお互いにアグリーすることができれば、定量制のサービスを提供することで、一時的な売り上げは減少するかもしれないが、そこに付随する保守やメンテナンス、あるいはコンサルティングの領域まで業務が広がる可能性もあり、単なるメーカーからサービス業への拡大につながる可能性を持っている。

ソリューションのクオリティが高く、顧客の成果が間違いなければ、むしろ歓迎すべきビジネスモデルになるに違いない。

中小企業が大企業に勝る大きな点は、意思決定の速さと柔軟さだ。AI、IoTによる技術革新によって、従来のビジネスモデルが変革を遂げようとしている今こそ、中小企業のチャンスというべきなのかもしれない。