貴乃花親方(写真:日刊スポーツ/アフロ)

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 大相撲は春場所の初日も近いが、いまだに貴乃花親方をめぐる騒動が波紋を呼んでいる。

 手塩にかけて育ててきた愛弟子が先輩力士からの暴力で相撲人生を絶たれるかもしれない――そんな怒りや、何より相撲協会に対する積年の思いがあったのだろう。しかし、問題の本質は力士間の暴力や相撲協会との関係性であったはずだが、図らずも貴乃花親方のファッションが注目されてしまった。なぜ、そうなったのか。

『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。』(CCCメディアハウス)の著者でイメージコンサルタントという立場から、貴乃花親方のファッションを読み解いてみたい。

●「なぜ?」と思わせる貴乃花親方のファッション

 ファッションにおける大失敗のひとつが、見る人に「なんで?」と思わせてしまうことだ。

 貴乃花親方については、長すぎるマフラーを首にぶら下げ、パーマにオールバック、サングラスという姿が「マフィアにしか見えない」といった声を生んだが、つまりは「なぜマフィアファッション?」と思う人が多かったということだ。それゆえ、図らずも注目されてしまったのではないだろうか。

 それは、グーグルの検索結果を見てもわかる。「貴乃花 マフラー」で検索すると、約21万5000件もヒットする(※3月9日時点)。おそらく「あのマフラーほしいな、どのブランドだろう?」というよりは「あのマフラーはなんなんだろう……」という思いで検索する人が多いのではないだろうか。

「なんで?」と思われるということは、「狙ったのに外してしまった」ということでもある。それなら、まだ「服装について何も考えていない無頓着な人」のほうがダメージは少ないのだから、ファッションというのは恐ろしい。

 ファッションというと、多くの人が「+(足す、盛る)」で考えがちだが、それよりも、特に男性のビジネスシーンにおいては「余計なことをしない」努力のほうが重要だ。何しろ、男性のビジネスシーンのファッションでは、すでに「スーツ」という、男性をもっとも美しく見せる服がある。ただ、そのまま着れば違和感は発生しなかったはずだが、貴乃花親方の「マフラー」や「パーマ」は過剰だった。

 また、貴乃花親方の「(マフラーは)のどの調子が悪いので、のどを守るため」という説明に対しては、「そのわりには、のどのところは空いている」というツッコミが散見される。

 もちろん、時期的にもマフラーを巻くこと自体はおかしくないが、首から垂らすのではなく、一度首に回したり室内では首回りのものを外したりするなどの着こなしをしていれば、また反応は違ったはずだろう。

●ビジネスで服装が注目されるのは損でしかない

 ファッション業界に勤めているならともかく、そうでないなら「服装がクローズアップされてしまう」というのは服だけが悪目立ちしているということで、損でしかない。貴乃花親方も、本当に訴えたいのは相撲協会の体質改善だったはずだが、前述のようにファッションにツッコミが入る事態となってしまったのだ。

 個人的には、ファッションは本人に似合っているほど「なんで?」という違和感がなくなるので、ビジネスでもプライベートでも自分に合った服装が好ましいと思う。しかし、それとは別に「自分が着たいものを着たい」という気持ちも大切だ。

 そこで、「似合う」と「着たい」の間にズレがある場合、プライベートであれば「着たい」を優先する日があってもいいだろう。常に自分の気持ちを押し殺す必要はない。

 ただし、ビジネスシーンとなれば話は別だ。職場や取引先などの空間で「着たい」優先では、「まわりが見えない人」「自分にしか関心がない人」とみなされてしまう。ビジネスシーンでは服装ではなく仕事が主役だ。仕事以上に服装で目立ってしまうのは、やはり損でしかない。口を開く前に勝負が決まってしまっては、あまりにもったいない。

●見た目に“ワル”を醸し出すのはNG?

“マフィアファッション”は貴乃花親方に限らず、麻生太郎副総理兼財務大臣もやっていた。

 2013年2月にロシアで開かれたG20(20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議)に、黒のロングコートにハットを斜めにかぶったファッションで出席し、「マフィアスタイル」「日本のアル・カポネ」と話題になったのだ。

 若者のストリートファッションから、中年、壮年男性のマフィアファッションまで、“ワル”には抗いがたい魅力があるのだろう。“ワル”は力や強さも感じさせるため、男性がメロメロになる気持ちもわかる。かつて、男性ファッション誌「LEON」(主婦と生活社)が提唱してブームとなったのも、「ちょい不良(ワル)オヤジ」だった。

 なお、「自分はマフィアファッションなんてしないから」という人も、油断は禁物だ。ビジネスシーンなのに、やたらと目立つ金ピカの腕時計をしていたり、夏場に乳首が浮くほどピタピタのワイシャツやピチピチのズボンを着ていたりする人も、部類としてはマフィアファッションと同様の“ワル”にあたる。共通するのは、「普通のいい子ちゃんとは違うぜ」というメッセージを発したい点だろう。

 プライベートであれば、ストリートだろうがマフィアだろうが、いくらでも“ワル”を目指せばいい。しかし、ビジネスシーンでは服装で“ワル”を演出するのではなく、「品行方正で優等生の生徒会長が、実は陰の番長だった」というような、「服装や身なり、たたずまいはきちんと正統派、それなのにやることはびっくりするほどえげつない」という方面の“ワル”を目指すことをおすすめしたい。少なくとも、そうしたほうがモテる。

 いかに“ワル”を見た目に出さないか。そう腐心する人こそ、自分のあくどさを知っている本物の“ワル”だろう。
(文=石徹白未亜/ライター)