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徐々に知名度が高まっている「iDeCo」(個人型確定拠出年金)。節税効果などメリットの大きい制度だが、「会社員」の加入率は1.7%にとどまっている。一方、「国家・地方公務員」の加入率は3.0%と高い。なぜ公務員はiDeCoに熱心なのか――。

■iDeCo、公務員の関心度・加入割合が高いワケ

老後の資金作りの方法として、知名度が高まってきたのが個人型確定拠出年金「iDeCo」です。掛け金が全額所得控除される節税効果があり、運用益は非課税、さらに年金受取時にも優遇措置があるメリットの多い制度です(概要は後述します。また過去の記事も参照ください:「『iDeCo加入適齢期』損得の分岐点は何歳か?」。

昨年から対象者が増え、メディアで報道されることが多くなりました。

2017年12月時点でのiDeCoの加入者数は74万4690人。加入対象者は約6700万人ですので、1.2%程度の人しか加入していないことになります。注目はされているけれど、利用していない人が多いのです。

iDeCoスタート時は、加入できるのは「第1号被保険者(フリーランスや自営業者など)」と、「第2号被保険者(会社員)で企業年金のない人」だけでした(合計で約4100万人)。その後、法改正された2017年1月からは、「公務員」「会社員で企業年金のある人」、「第3号被保険者(専業主婦・主夫など)」も加入できるようになりました。

その2017年1月からの加入者の推移を「iDeCo公式サイト」で確認すると「公務員」の加入割合が、会社員よりもずっと高いことに気づきます。

iDeCo加入対象の「会社員」は約3580万人で、加入している人は61万4877人(2017年12月時点)。加入率は1.7%で、58人に1人が加入している計算になります。それに対して、「公務員」は約440万人で、加入している人は13万3622人。加入率は3.0%で、33人に1人が加入していることになり、割合でいうと会社員の約1.8倍にのぼります。

▼iDeCoセミナー100人の枠に都庁職員500人殺到

私はときおり公務員の皆さんを対象にiDeCoの仕組みを解説するセミナーに招かれますが、これが毎回大盛況なのです。先日の都職員を対象にしたセミナーでは、100名の枠に500人の聴講応募があったほどです。また、別の日に開催された都庁ホールでは会場いっぱいの500人が集まり、質疑応答の時間は質問をする人が殺到しました。

なぜ、公務員は、iDeCoに加入する割合が高いのでしょうか。

大きな理由として「職域加算の廃止」で年金が減ったことがあげられるでしょう。2015年10月に共済年金は厚生年金に一元化され、給付や保険料は厚生年金の金額に統一されました。また、共済年金独自の職域加算は廃止され、新たに「年金払い退職給付」が設けられました。職域加算と比べると、保険料の負担と、賦課方式から積み立て方式への切り替えで、負担は増えていると考えられます。

そうした老後資金の目減り分を何とか穴埋めしたいといった気持ちがiDeCo加入率に表れているのかもしれません。

■公務員がiDeCoに掛けられるのは年14.4万円まで

冒頭で少し述べた通り、iDeCoの最大のメリットは「税制面での優遇」です。具体的には次に3つです。

●掛け金の全額所得控除。所得税と住民税が安くなります。
●運用期間中の利益や分配金が非課税。通常の場合は20.315%の税金がかかります。非課税の分を再投資すれば、複利効果で有利に運用できます。
●60歳以降の受取時の税制優遇措置。退職控除や年金控除が使えるので、受け取り方によっては税金がゼロ、もしくは軽減されます。

iDeCoの掛け金は、職種などによって上限が定められています。2018年3月現在は以下の通りになっています。

●自営業者やフリーランス:年81万6000円(月6万8000円)
●企業年金がない会社員:年27万6000円(月2万3000円)
●企業型確定拠出年金だけに加入している会社員:年24万円(月2万円)
●企業型確定拠出年金と確定給付年金のある会社員:年14.4万円(月1万2000円)
●確定給付年金だけの会社員:年14.4万円(月1万2000円)
●公務員:14.4万円(月1万2000円)
●主婦・主夫:年27万6000円(月2万3000円)

▼「お得な制度」であることを公務員はよく知っている

公務員の年間の上限は年14万4000円。相対的にみて、大きな金額ではありません。にもかかわらず、公務員の人の加入率が高いのは、iDeCoが「利用しないともったいない制度」であることの証左と言えるのではないでしょうか。それだけ、公務員は「お得な制度」だということを知っているということでもあります。

実際、どれくらいメリットがあるのでしょうか。どれくらい税金が安くなるかは、以下の計算式で分かります。

iDeCoの掛け金×(所得税率+住民税率)=節税額

住民税率は10%で一律ですが、所得税率は収入によって異なります。収入が高い人ほど所得税率も大きいので、節税効果も大きくなります。

【所得税率】
課税所得195万円以下→税率5%
課税所得195万円を超え330万円以下→税率10%
課税所得330万円を超え695万円以下→税率20%
課税所得695万円を超え900万円以下→税率23%
課税所得900万円を超え1800万円以下→税率33%
課税所得1800万円を超え4000万円以下→税率40%
課税所得4000万円超→税率45%

ちなみに、この「課税所得」は年収のことではありません。年収からさまざまな控除を引いたものが課税所得なのですが、配偶者や子ども、扶養家族の有無などによって控除が異なります。同じ年収の人でも、家族構成によって、課税所得は異なるのです。

会社員の人であれば、源泉徴収票をチェックしてください。「給与所得控除後の金額」から「所得控除の額の合計金額」を引いたものが「課税所得」となります。

■iDeCoによる節税額(3人家族)を試算してみた

詳細な節税額は、ご自身の所得税率を調べていただく必要があるのですが、「本人、配偶者、子ども1人」の3人家族の世帯の節税額は以下の通りとなります。なお掛け金の額は、前出の属性ごとの上限額に沿ったものに設定しています。

●年収500万円前後の場合
掛け金 12万円/年→節税額 1万8000円/年
掛け金 14.4万円/年→節税額 2万1600円/年
掛け金 24万円/年→節税額 3万6000円/年
掛け金 27万円/年→節税額 4万1400円/年
掛け金 81万6000円/年→節税額 12万2400円/年

●年収700万円前後の場合
掛け金 12万円/年→節税額 2万4000円/年
掛け金 14.4万円/年→節税額 2万8800円/年
掛け金 24万円/年→節税額 4万8000円/年
掛け金 27万円/年→節税額 5万5200円/年
掛け金 81万6000円/年→節税額 16万」3200円/年

掛け金の上限額が14.4万円の公務員の場合、年収500万円なら節税は2万円あまり、年収700万円なら節税は3万円近くになることがわかります。大した額ではないと思うかもしれませんが、その節税効果は毎年続くので、早く加入すればするほどお得です。そうしたお得感の嗅覚も公務員は鋭いのではないでしょうか。

▼高いと思われがちな公務員の給与「サラリーマンと同程度」

公務員の人は給料が高いからiDeCoに加入しているのではないか。そう考える人もいるかもしれません。しかし公務員とひとことで言っても、いろいろな職種があります。ここでは、国家公務員で一般行政事務を行っている人の給与についてみてみましょう。

国家公務員の給与は、人事院の勧告によって、1年ごとに決められます。民間企業の給与に合わせて、過度に高く、もしくは、安くなり過ぎないように調整することが目的です。

2017年度の国家公務員給与の実態によると、平均月収は41万6969円。ボーナスを加えると(おおよそ4.40カ月分)、年収にして約683万円となります(概算)。

一方の民間企業ですが、2016年の「民間給与実態統計調査」によると、平均年収は422万円。男女別にみると、男性521万円、女性280万円でした。この平均年収は、非正規雇用の人も含まれており、単純に比較することはできません。

国家公務員の平均年齢は43.2歳、平均経験年数は22.0年。課長、部長クラスの人も多く含まれたうえでの平均年収ですので、やや高い数値が出ているともいえます。また、公務員の6割強は地方公務員です。ボーナスの支給率は都道府県によって異なりますが、地方公務員は国家公務員より低いことが一般的です。つまり、公務員全体で考えれば、収入は一般のサラリーマン家庭とそれほど大きな違いはない、という見方もできます。

とすれば、公務員のiDeCoの加入率が高い傾向にあるのは、給与に関係なく、やはり税制優遇のメリットにあるからと考えることができます。フリーランスや自営業の人はもちろん、会社員であっても、公務員よりも多く掛け金を拠出できる場合があります。私たちもこの制度を利用して、老後の資金を作っておきたいところです。

(社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー 井戸 美枝 写真=iStock.com)