川崎重工業の株価が大きく下げている。2月1日に直近で終値のピークである4600円を記録したが、8日終値は3400円となり26%以上の大幅な下げとなっている。JR西日本も1月25日に8614円と直近終値のピークを記録したが、8日終値は7294円と、川崎重工業ほどではないが15%以上の大幅な下げである。どちらも社会と投資家の信頼に、大きな傷を付けてしまった証左だ。

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 昨年12月11日、博多発東京行きの新幹線「のぞみ34号」で異臭が発生した。保守担当者、乗務員、指令員がいずれも多数の異常音や異常振動に気づきながら、JR西日本は約3時間に渡って運行を続けた。新大阪駅で引き継いだJR東海が名古屋で運転を中止したうえで緊急点検を行い、台車が破断寸前であったことを確認した。国の運輸安全委員会は重大インシデントと認定した。

 その後の調査で「のぞみ34号」の台車には長さ14cmのも亀裂が入り、わずかあと3cmで台車枠が破断するギリギリの状態だったことが判明した。

 製造段階で大きなミスがあった。07年2月に新幹線N700系の量産が川崎重工業・日立製作所・日本車両製造でスタートした。量産が始まったばかりということもあり、製造工程上のノウハウが確立していなかった時期である。台車枠の歪みを解消する必要に迫られた川崎重工業の班長は、(1)プレス機で平らにする(2)台車枠に取り付ける部品を削って台車枠に合わせる(3)台車枠自体を削るという3択の中から(3)を選択した。そして現場の作業員は台車枠の溶接部分に許容されていた0.5mmまでの削り厚を、大幅に超えて3.3mmまで削ってしまった。指示した班長は0.5mmを超えて削ってはならないと知っていたが、指示された作業員はその基準を知らなかったので、歪みがなくなるまで削ったのだという。残念なことに、班長が仕上がりを確認することはなかった。

 JR西日本とJR東海の両社に納入された台車で、台車底面の鋼材の厚みが設計仕様未満のものが、合計146台に達していたことが今回判明した。

 運用段階での判断ミスも続いた。博多を出発直後に異常音や異常振動を察知した車掌やパーサーが、指令員に報告を行った。指令員は確認作業のため、岡山駅で車両保守担当者3名を新幹線「のぞみ34号」に乗車させた。保守担当者3名も当該車両の異常音や異常振動を確認した。パーサーは異常音が「うるさい」と感じるほどの音量だったと発言している。この確認作業の際に、保守担当者と指令員の間に意思疎通の乖離が生じていた。保守担当者は床下を確認したい旨を伝えたが、指令員は状況の報告を求める指令長と対応していて、保守担当者の意志は指令員に伝わらなかった。

 運行を止めるという判断の難しさは言うまでもない。異常音や異常振動を認識しても、目視確認できない以上保守担当者が運行停止を強く求めることに、心理的な葛藤があることは良く分かる。しかし、JR東海は名古屋で運行停止を決断し破断寸前の台車を確認した。JR西日本に出来なかった決断が、JR東海には出来たというところに、このケースが暗示しているものがある。

 川崎重工業にも、JR西日本にも、コミュニケーション・ギャップがあり、払った代償は少なくなかったが、“最悪の事態”に至る寸前で事なきを得たことは、何よりの幸いであろう。望むべくは、両社とも社内体制の再構築はもちろん、今回の不幸な事例が社会の共有財産となるように、積極的な情報開示に努めて欲しい。